通年営業で焼きいもの可能性にチャレンジする「ヤキイモスター」。
食べる
2023.12.09
冬の風物詩のひとつに、移動販売車で回ってくる焼きいも屋さんがあります。どこからともなく「石焼きいも〜、おいもっ」という呼び声が聞こえてくると、ちょっとそわそわしちゃったりしませんか? 今回紹介するのは、自宅ガレージで焼きいも屋さんをはじめちゃった「ヤキイモスター」の内山さん。冬期限定営業の焼きいも屋さんが多いなか、「ヤキイモスター」はなんと1年中営業しているんです。その秘密を教えてもらいました。


ヤキイモスター
内山 丈明 Takeaki Uchiyama
1970年岩手県生まれ。青果市場で3年間の修業を経て、実家の青果店で働く。その後は携帯電話販売店の営業、ハウスクリーニングサービス代理店の経営など様々な職業を経験し、2023年1月に「ヤキイモスター」をオープン。趣味はDIYで、現在は移動販売車を製作中。
下町のガレージで、焼きいも専門店がオープンするまで。
——内山さんは岩手のご出身なんですね。
内山さん:そうなんです。岩手の八百屋で生まれました。
——じゃあ、ご実家の八百屋さんで働いていたとか?
内山さん:5人兄弟の長男だったので、自分も周りも八百屋を継ぐもんだと思っていました。それで青果市場へ修業に出されたんですけど、ひと月で「辞めたい」と思いましたね(笑)。親に電話で訴えたんですけど、説得されて我慢して3年間働き続けたんです。
——そんなに辛かったんですね(笑)
内山さん:自分に合わなかったんでしょうね。朝6時に出勤するのは当たり前で、早いときは夜中の3時に出勤したりするんです。まだ若かった私にはキツかったんですよ。いじってくる先輩がいたのも苦痛でした(笑)
——辛かった修業の後は、実家の八百屋で働いたんですね。
内山さん:ただ早起きは変わらなかったですね(笑)。毎朝3時に起きて、車で3時間かけて盛岡の市場へ仕入れに行くんです。そこから今度は八戸の市場へ行って仕入れをして、店に帰るのは15時頃でした。自営なので休みも小遣いもなかったこともあって、だんだん八百屋以外の仕事に興味を持つようになっていったんですよ。

——じゃあ、八百屋さんを辞めて他の仕事を?
内山さん:携帯電話の販売代理店で営業をやったり、ハウスクリーニングサービスの代理店を経営したり、いろいろな仕事をしました。ハウスクリーニングサービスの代理店を開業したのは12月の大掃除シーズンだったので、めちゃめちゃ忙しくて「これはいける」と思ったんです。ところが年を越した途端パッタリ仕事が減って、危機感を感じて広告についての勉強をはじめました。
——どんな勉強をされたんでしょうか?
内山さん:熱海のホテルで行われた、泊まり込みの合宿セミナーに参加したんです。参加した店舗や企業がお互いに集客の悩みを相談しあって、最終的にセミナーの内容を参考にしたチラシを作るんです。そのチラシを配ってみたらすぐに事務所の電話が鳴りはじめたので、広告の大切さを思い知りましたね。
——そうした勉強が今の事業につながっているんでしょうね。新潟へ来たのはいつなんですか?
内山さん:再婚を機に新潟へ来たんですけど、その翌年に「東日本大震災」が起こったんです。岩手で暮らしている家族とは、当時普及しはじめたTwitter(現X)やFacebookといったSNSを使って安否確認することができました。そのことをきっかけにSNSの便利さを感じて、Facebookをマーケティングに利用する勉強をはじめて、セミナーを開催するようになったんです。
——いろんな仕事を経験されてきたんですね。そのなかで「ヤキイモスター」をはじめたのは、どういういきさつなんですか?
内山さん:家を新築したのをきっかけに、憧れだった薪ストーブを使いはじめたんです。そこで焼きいもをしてみたら、家族やご近所さんに大好評だったんですよ。「これは売れるんじゃないか」とひらめいて、試しにガレージで販売をはじめたのがきっかけだったんです。

焼きいも専門店を通年営業できる秘密。
——「ヤキイモスター」は通年営業しているんですか? さつまいもの保管が大変そうですね。
内山さん:真空パックで包装しているので、焼きいもが長く保存できるんですよ。元々は自作したレンガ窯で焼いていたんですが、つきっきりで長時間焼かなければならないんです。もっと効率の良い方法はないかと悩んでいたら、佐渡にいる弟の知り合いが、業務用のスチームコンベクションオーブンを貸してくれることになったんですよね。
——そのオーブンを使うと短時間で焼けるんですね。
内山さん:それまでは4時間かけて5kgのさつまいもしか焼けなかったのが、2時間で30kgも焼けるんです。だったらどんどん焼いてもらって保存しておこうということで、真空パック包装をして保存することにしたんですよ。
——焼きいもを長期保存できる秘密がわかりました。
内山さん:保存面以外にもメリットがあるんです。真空パックをすることで焼きいもの熟成が進んで、ねっとり、しっとりした食感になっていくんですよ。

——焼きいもだけじゃなくて、パンや焼菓子まで売っているんですか?
内山さん:地元のお菓子屋さんとコラボして、焼きいもを使ったパンや焼菓子を作ってもらっているんです。
——そういったコラボをはじめたのはどうして?
内山さん:「ヤキイモスター」をオープンしてすぐ、さいたまスーパーアリーナで開催された「さつまいも博」を見学したんです。そこではただ焼きいもを売るだけじゃなくて、いろいろな売り方があることを勉強することができました。
——例えばどんな商品があったんですか?
内山さん:さつまいも麹で作った甘酒とか、焼きいもを使ったグラタンやチーズカレー、焼きそばといった商品が、結構良い値段で売られているのにどんどん売れていたんです。焼きいも入りのグラタンを試しに食べてみたんですけど、甘さとしょっぱさのバランスが良くって意外と美味しいんですよ。ただ焼いて売るだけじゃなくて、いろいろな提供の仕方があることを学びました。
——イベントへの参加が、いい勉強になったわけですね。
内山さん:そうなんですよ。夏にも「さつまいも博」が開催されていたので、最初は「夏にさつまいも?」って疑問を持ちながら参加してみたら、さつまいもを使ったパフェやかき氷といった商品が販売されていて、夏でも工夫次第でさつまいも商品を売ることができることを知りました。

住宅街で焼きいも屋さんを営業するための工夫。
——それにしても、思っていた以上に商品が豊富ですね。どれを買おうか迷ってしまいそうです。
内山さん:見ただけでは味がわかりませんからね。かといって口で説明しても伝わりにくいと思うので、試食してもらうことにしています。私が広告を学んだ先生は干物店を経営していて、「お客様を見たらとにかく食べさせる」がモットーなんです(笑)。私もそれにならって、迷っている方には試食してもらうことにしています。
——味見してから買えるのはありがたいですね。
内山さん:ここは近所にある小学校の通学路でもあるので、下校中の小学生が試食をねだってきたりするんですよ(笑)。でも試食させてあげると、今度はお母さんを引っ張って買いに来てくれます(笑)

——でも近所の人しか通らないような場所で商売をするのって、難しくないですか?
内山さん:そうですね。だから少しでも多くの人に知ってもらうため、週に2回、上本町と下本町の市場へ出かけて出店しているんですよ。今後はいろんなイベントへ出かけていって、「ヤキイモスター」の名を知っていただきたいと思っています。そのために、趣味のDIYを生かしてトラックを移動販売車にカスタムしているところなんです。
——そうなると店舗営業が休みがちになるんじゃないですか?
内山さん:今後はスタッフを雇ってお店を任せようと思っているんです。それには今のようなガレージで営業するわけにもいかないので、斜め向かいにある物件を賃貸したんですよ。近々そちらに移転オープンして、商品をもっと充実させていけたらと思っています。

ヤキイモスター
新潟市中央区忠蔵町3-7
050-5369-9991
10:00-18:00
日曜休
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