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静かな町で落ち着いて食事を楽しめる、出雲崎の「たわい」。

旬の素材をふんだんに使ったコース料理などが楽しめる食事処「たわい」。恵比寿、六本木といった都心のレストランで経験を積んだ岩田さんは、出雲崎に引っ越し、改めて地元食材の偉大さに気づいたそう。趣のある店内で独立までの道のりやお料理にまつわる考えなど、いろいろとお話を聞いてきました。

 

たわい

岩田 知里 Chisato Iwata

1984年長岡市生まれ。東京の専門学校でフレンチを学び、卒業後は恵比寿、六本木などのレストランで働く。10年ほど前に新潟にUターンし、出雲崎で暮らす。弥彦のカフェを経て、2024年に「たわい」をオープン。

 

都心部よりも田舎が合っている。支援の手厚い出雲崎へ移住。

——岩田さんは、フレンチを学んでこられたそうですね。

岩田さん:東京で就職してからは、フレンチのお店やフレンチとアメリカ料理を融合したようなレストランなどで働きました。出産を機に自分のペースで働きたいと思って、間借りスペースで「日替わりカフェ」といえばいいでしょうか、毎日違う人が営業する店舗も経験しました。それから10年ほど前に新潟に戻ってきたんです。

 

——新潟ではどうされたていんでしょう?

岩田さん:弥彦にある飲食店を任せてもらいました。そこで竹部というスタッフに出会い、今も一緒に働いています。私が「たわい」としてお食事を、竹部が「茶に逢う」としてお茶を提供しているんです。

 

——では、こちらのお店は「たわい」さん、「茶に逢う」さんが一緒に営業されているんですね。「たわい」さんでは、どんなお食事を出されているんですか?

岩田さん:季節の食材を使ったお料理です。ご飯ものを中心として、それに合うおかずや副菜をお出ししています。ジャンルでいうと和食になるんでしょうけど、私の料理の基礎はフレンチなので、その技法を使っている料理も多くあります。和食といっても、日本料理にずっと携わってこられた方のお料理とはちょっと違うでしょうか。基本は、コースでのご提供です。

 

 

——建物も店内もとても風情があって、素敵です。

岩田さん:いずれは独立したいって、ずっと思っていて。私は弥彦で働いていましたし、主人も岩室の飲食店で働いているので、その近郊で気になる物件を何軒か見学したんです。でも、なかなかピンとこなくて。そうこうしているうちに、子どもが「転校したくない」と言うもので、出雲崎で物件を探しはじめて、すぐにこの建物と巡り合えました。

 

——立派な建物ですよね。

岩田さん:建物と蔵がくっついているんですよ。蔵が茶室になっていて、そこで「茶に逢う」がお茶会を開いたりしています。今は暑いので、蔵は使用していないんですけどね。

 

——東京から新潟に戻ってこられて、住む場所に出雲崎を選ばれたのはどうしてですか?

岩田さん:東京のアンテナショップにある「移住デスク」で、子育てや移住の支援が手厚い出雲崎の子育て住宅を紹介されたんです。出雲崎がどんな町なのか、いまひとつ分からずにいたんですけど、ちょっと田舎っぽい場所が自分たちに向いているなと思ったんですよね。

 

——恵比寿や六本木など都心部で働いていらしたから、落ち着いた場所がいいと思われたんでしょうか。

岩田さん:自分自身、都会に合っていないって感じていましたし、ずっと「いつかは田舎で喫茶店をやりたい」って思っていました。東京の知人からは「そんな場所で生活できるはずない」「無理だ」って言われちゃって(笑)。でも「やりたい」って気持ちが強かったんですよね。

 

子どもの頃は分からなかった、新潟食材の魅力。

——「茶に逢う」の竹部さんとの出会いも、お店を構える後押しになったのではないですか。

岩田さん:そうですね。他にもうひとり、店内のお花やディスプレイを担当してくれているスタッフもいるんですよ。以前働いていた弥彦のお店では、私が料理を担当し、ふたりがサポートをしてくれました。料理だけではお店をやっていくなんてできないじゃないですか。接客や店内の装飾をしてくれる人が必要だと感じていたので、理解のある仲間たちの存在はとても心強いです。

 

——ちなみに「たわい」という名前には、どんな意味があるんですか?

岩田さん:岩田を反対から読むと「たわい」なんです(笑)。日常のたわいもない時間に幸せを感じてもらいたいなっていう意味も込めています。

 

 

——お料理の基礎をフレンチで学ばれたのに、和食に近いメニューを出されている理由も知りたいです。

岩田さん:出産してからは、日々食べるものとして肉や魚より野菜を欲するようになりました。旬のものもそうですね。東京で暮らしていた頃は、旬の野菜がすごく高いし、わざわざ探さないと手に入らない存在でした。でもこちらでは手軽に買えて、安い上に鮮度もいい。お裾分けしてもらうこともありますよね。それがもう、宝のように思えたんです。子どもの頃は分からなかった新潟の魅力ですよね。

 

——コースのお料理は、どんな構成なんですか?

岩田さん:気持ちを落ち着かせるようなお料理。でもちょっと気持ちが弾むようなものにしたいと思っています。特に、先付けに力を入れているかな。なるべくシンプルにとも思っていますね。私がズボラなのもあるんですけど、手をかけなくても十分素材が美味しいですから。

 

——お品書きは毎月変えるんですか?

岩田さん:次月のメニューについてよく問い合わせをいただくんですけど、ギリギリまで決められなくて。去年はこの時期に出回っていたけど、今年はまだ旬じゃないっていう食材もあるじゃないですか。市場を訪れて「これを使おう」って組み立てても、1ヶ月ずっと同じメニューで続けられないこともあるので、月の途中で少しだけ内容を変えたりもします。ないものを遠くから仕入れるより、用意できる食材で美味しいお料理を作りたいと思っています。

 

静かな町で、考え抜かれたお料理を楽しむ。

——出雲崎を観光する県外の方や外国の方が、お店にいらっしゃるのではないですか。

岩田さん:まだそれほど知られていないので、以前のお店からの常連さんが多いですかね。月に1度来てくださる方もいらっしゃいます。

 

——それはもう、岩田さんのお料理のファンですよね。

岩田さん:ありがたいですね。スタッフも顔見知りなので、落ち着いてお食事を召し上がっていただけていると思います。こういう静かな町だから、いいんでしょうね。

 

——知る人ぞ知るお店ですね。もしかしてこういうメディアの反響で、大勢お客さんが来たら困りますか?

岩田さん:いえいえ、来ていただけるのはありがたいです。ただ対応ができなくなっちゃう場合もあって。出雲崎だから海鮮が食べられると思われる方がいらっしゃるんですけど、お刺身をお出ししているようなお店ではないので。

 

——お野菜が中心ですかね。

岩田さん:あえてそうしているわけではないんですけどね。自分が「食べたいな」と思うものが、結局お野菜中心になっているといいますか。私より上の世代の女性のお客さまが多いんですよ。お肉や生魚が得意でない方がいらっしゃって、「メニューから外せますか」とご相談いただくので、いっそのこと入れなくてもいいかなって。お肉やお魚は具のひとつとして入れたり、お出汁として使ったり、そういうふうに使う場合が多いです。

 

 

——お肉、お魚がなくてもめちゃくちゃ美味しそうです。

岩田さん:たまにお肉メインのときもあるんですよ。ただお肉、お魚に逃げたくないみたいなところもあるかな。メニューに迷ったとき、美味しいお肉を入れてしまえば満足していただけるんだろうけど、そうじゃないよなって。献立は、けっこう時間をかけて考えますね。

 

——地物も使われるんですか?

岩田さん:そうですね。今は出雲崎で生もずくが獲れるので、使っています。

 

——さて、今後はどんな展開を考えているのか教えてください。

岩田さん:作家さんとのイベントなど、店舗を活用した企画を開催したいと思っています。予約制の茶寮もコンスタントに開催したいですね。普段はお料理が中心のお店ですけど、お茶にもよりスポットを当てたいなって。お茶に合わせてお料理を組み立てる会をお客さまに楽しんでいただきたいですね。

 

 

 

たわい

三島郡出雲崎町尼瀬77-1

tel/0258-80-1247

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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