魚沼市には国内外のブランドアイテムを手がける縫製工場がいくつもあるのだとか。ただ高い技術を持っていても、生産拠点が日本から海外へシフトするなど、地域に根付いた産業は今、変化を余儀なくされています。そうした問題を解決し、魚沼市が誇る縫製技術を伝承しようと2022年に誕生した地域ブランドが「MIC.(ミック)」です。「S.H.S 鳥屋野店」で開催されたポップアップイベントにお邪魔し、広報担当の目黒さんにお話を聞いてきました。
MIC.
目黒 慎介 Shinsuke Meguro
魚沼市生まれ。魚沼市のセレクトショップ「Dyna」オーナー。「MIC.」では広報全般を担当している。
――「MIC.」はいつ、どういった経緯で誕生したブランドですか?
目黒さん:ブランドの発足は、2022年の春です。あまり知られていませんが、魚沼市の縫製産業は50年以上の歴史があります。ただここ数十年でファストファッションが台頭し、生産拠点が国内から海外にシフトして。素晴らしい技術を持った職人がたくさんいるにも関わらず、廃業に至るケースもありました。そういった背景から「この技術を残していかなければならない」とスタートしたのが「MIC.」です。
――時代の流れとともにニーズが変わってしまったんですね。
目黒さん:ただ技術力が高いことは間違いありません。ハイブランドをはじめ、国内外の有名ブランドからの依頼を請け負っている工場もあります。と、こんなふうに語る私も、実は魚沼市が縫製技術に優れた地域だとは知らずにいました。
――製品を販売しているお店はあるんですか?
目黒さん:私がオーナーを務めるセレクトショップ「Dyna」が連携するかたちで、ブランドの窓口と発信する役割を担っています。「Dyna」では「MIC.」のアイテムを実際に手に取っていただくことができますよ。
――「MIC.」が立ち上がってから2年以上経ちましたね。
目黒さん:このブランドをいちばん伝えられる方法は、実際に手に取ってもらう、試着してもらうといった「リアルな場」だと思っています。その機会をどれだけ増やせるかに注力しているところです。たまたま店舗に立ち寄ってくれたお客さまひとりひとりに「MIC.」の製品に触れてもらうことが大事だと思っています。
――「MIC.」のテイストをもう少し詳しく知りたいです。
目黒さん:シンプルベーシックで、なおかつオーセンティック。本物の技術で作られた日常着です。機能性と耐久性が高く、着心地もとてもいいです。
――展示してあるお洋服を見ると、流行に関係なく長く使えそうなものばかりだと思いました。
目黒さん:リラックスできて、汎用性とファッション性を備えているんですね。トレンドに合わせたアイテムは一切ありませんので、年齢や性別問わず、どなたにも着ていただけます。
――きっとこうした展開って今までのOEM製造とは違うと思うんです。縫製工場の皆さんからはどんな反応がありましたか?
目黒さん:「MIC.」のアイテムを着用した皆さんの反応がとてもいいんですよ。素晴らしくいい。リピートされる方も多いですしね。それを工場の皆さんに伝えると、すごく喜んでくれます。
――着用した方からはどんな声が届いていますか?
目黒さん:「着ていて気持ちがいい」「今までにない着心地」っていうお声がまずひとつ。あとは「パッと見たイメージと着てからのギャップに驚いた」という感想も多いです。シンプルベーシックだから、見た感じは普通なんですよ。素晴らしく考え抜かれたパターンやデザインは、着たときのシルエットがとても美しいんですね。
――目黒さんは、どんな思いで「MIC.」の発信をしているんしょうか?
目黒さん:技術発信をする、そして技術を継承することを目指しています。その気持ちがとても大きいです。まずは「MIC.」というブランドを知って、それから技術力や背景など、より深いところに気づいてもらえるんじゃないかと思うんですね。この技術が残っていくことが地域の産業として、とても大事であって。ただ作りがいいだけでは、きっと飽きられてしまいます。そこに楽しさだったり、ファッション性だったりがつながってくれるとブランドが存続していくのではないでしょうか。
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