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製菓専門学校の元先生がつくる「菓子工房・いち華」のわらび餅。

五泉市にある複合商業施設「ラポルテ五泉」やスーパーマーケット「エスマート」で見かける「黒糖わらび餅」。その商品を自宅の工房でつくっているのが「菓子工房・いち華(かしこうぼう いちか)」の佐藤さんです。実は佐藤さん、専門学校で22年間学生たちを教えてきたお菓子づくりの先生なんです。そんな佐藤さんがどうして「菓子工房・いち華」を開業したのか、お話を聞いてきました。

 

 

菓子工房・いち華

佐藤 舞友未 Mayumi Sato

1976年新潟市西区(旧黒埼町)生まれ。製菓専門学校を卒業後、そのまま専門学校の講師となる。退職後、地元のベーカリーで働きながら、「ラポルテ五泉」のチャレンジショップで「小さなおかし屋さん Mamyi(まみぃ)」を出店。2022年より自宅で「菓子工房・いち華」を開業する。絵を描いたり物をつくったりすることが好き。

天職だと感じていた、製菓専門学校の講師。

——佐藤さんはいつからお菓子づくりをはじめたんですか?

佐藤さん:小学4年生のときに「お菓子クラブ」へ入ったことがきっかけなんです。いつも家庭科室から美味しそうな匂いがしていたので、ずっと興味を持っていました。

 

——そのクラブ活動を通して、お菓子づくりにハマったんですね。

佐藤さん:それまでは趣味と呼べるものがなかったんですけど、はじめて熱中できる趣味を見つけました。あまりのハマりっぷりに、母がお菓子づくりの道具を一式買い揃えてくれたほどだったんですよ(笑)

 

 

——お菓子づくりのどんなところが楽しかったんでしょう?

佐藤さん:お菓子をつくることはもちろん楽しかったんですけど、それ以上に、私のつくったお菓子を食べた家族やお友達が喜んでくれることが嬉しかったんです。

 

——それでお菓子づくりの仕事を目指すことになったんですね?

佐藤さん:でもお菓子づくりの大変さを知っているだけに、製菓の仕事に就くことには迷いがありました。ですから管理栄養士や調理師も選択肢にあったんです。だけどやっぱり人を幸せな気持ちにできるのはお菓子だと感じたので、製菓の仕事を選んで専門学校に進みました。

 

——専門学校で学んだなかで、印象に残っていることはありますか?

佐藤さん:学校で学んだことというよりも、父からの言葉が今でも忘れられません。専門学校の課題のため、自宅でデコレーションケーキをつくる機会があったんですけど、そのケーキを食べて、父が「うまい」と言ってくれたんです。それで、その言葉の後に「今までは気を使って、美味しくなくても美味しいと言っていたが、お前もプロを目指すんだからこれからは本音で感想を言わせてもらう」と言ったんです。それを聞いて「今まで遊びで作っていたお菓子づくりとは違うんだ」と気持ちが引き締まって、プロとしてのお菓子づくりを意識するようになりました。

 

 

——では、学校を卒業してからはパティシエに?

佐藤さん:でもパティシエの他に、保育士や学校の教員への憧れもあったんですよ。おまけに専門学校の担任への憧れも強かったので……、母校に残って製菓を教える道に進んだんです。

 

——専門学校の先生になったんですね。やってみてどうでした?

佐藤さん:大好きなお菓子づくりを教えることで、最初は何もできなかった子達が悩みながらも成長していく姿を見られることが、嬉しかったしやり甲斐も感じましたね。私にとっての天職だと思っていました(笑)

 

息子の大好物「わらび餅」が人気商品に。

——そんな佐藤さんが専門学校を辞めて「菓子工房・いち華」をはじめることになったいきさつを教えてください。

佐藤さん:きっかけは息子の不登校でした。小学校に行けなくなってしまった息子としっかり向き合う決心をして、専門学校を辞めることにしたんです。それからは子どもとの時間を大切にしながら、近所のパン屋さんで働いていました。そんなときに「ラポルテ五泉」さんからお誘いを受けて、チャレンジショップを出店することになったんです。

 

——へぇ〜、どんなお店をやったんでしょう?

佐藤さん:「小さなおやつ屋さん Mamyi」という店名で出店したんですけど、和菓子や洋菓子、パンに至るまで一貫性のないラインナップになってしまいました(笑)。でも、その経験が「菓子工房・いち華」につながったんです。

 

——実店舗でのオープンは考えなかったんでしょうか?

佐藤さん:コロナ禍が落ち着いてきたばかりだったし、息子の不登校もまだ安定していなかったので、自宅でもできる委託販売や予約販売のスタイルをとることにしました。

 

 

——看板商品に「わらび餅」を選んだのはどうしてなんですか?

佐藤さん:チャレンジショップのラインナップに、息子の大好物で子どもの頃からつくってあげてきた「わらび餅」があったんです。それが大人気だったので、最初の1年間は「わらび餅」に商品を絞って販売していました。

 

——佐藤さんがつくる「わらび餅」には、どんなこだわりがあるんでしょう?

佐藤さん:すべてがこだわりといってもいいんですけど……(笑)。まず上白糖を使わずに黒糖や甜菜糖を使っているので、原価はかかるんだけど栄養価が高くて味もいいんですよ。それから地元の名水を使っています。いちばん苦労したのはわらび餅粉選びですね。

 

——どんなふうに苦労したんですか?

佐藤さん:わらび餅粉って、すごくたくさんの種類があるんですよ。目星をつけていた粉はあったんですけど、諸事情で使えなくなってしまったので、いろいろ試してその粉に近いものを探したんです。なかなか理想の味に辿り着けなかったんですけど、ブレンドすることでようやく近い味を再現することができました。

 

 

——苦労して生み出したわらび餅だったんですね。

佐藤さん:そうなんです。ただ、一年中わらび餅だけをつくっていたら寂しくなってきたので、ケーキのオーダーメイドも受けるようにしました。

 

——お店のインスタグラムを見ていると、華やかなケーキがたくさん紹介されていますよね。

佐藤さん:私は華やかなスイーツが好きなので、たくさんトッピングしがちなんですよ(笑)。だから店名にも「華」の字を使っているんです。

 

——そうだったんですね。ところで、今後やってみたいことはありますか?

佐藤さん:息子も高校に行けるようになったし、私も自分の本当にやりたい事をしようと、あんこが大好きな私は、自宅でもSNSを利用してできる、和菓子の練り切りアート講座を立ち上げることにしました。新潟県産の素材を活かした、練り切り講座を全国の皆さんに楽しく学んで頂けたら嬉しいな♪と日々奮闘中です。

 

 

 

菓子工房・いち華

五泉市三本木1-5-34

10:00-19:00

不定休(完全予約制)

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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