手軽に本格的なラーメンが楽しめる「三旺食品」の「楽珍亭」シリーズ。
食べる
2025.06.12
レンジで簡単につくることができる生麺を使ったラーメンや、惜しまれて閉店した人気店のラーメン具材を販売している「三旺食品(さんおうしょくひん)合資会社」。今回はその社屋にお邪魔して、取締役の大島さんから商品についての思いを聞いてきました。


三旺食品合資会社
大島 洋平 Yohei Oshima
1986年新潟市中央区生まれ。県外の大学で経済学を学んだ後、デジタル機器の営業職を経験し、2015年に家業の「三旺食品合資会社」へ就業する。小学3年生から大学卒業まで野球に打ち込んでおり、現在は地元小学生野球チームの監督を務めている。
「ソフトめん」を機に、学校給食用の麺をつくる指定工場に。
——かなり歴史のありそうな会社ですね。創業はいつ頃なんですか?
大島さん:昭和元年に「大島こんにゃく屋」として創業しました。当時はこんにゃくや海藻を使った「えご」という郷土料理をつくっていたんです。
——製麺をはじめたのは、いつからなんでしょう?
大島さん:昭和22年から製麺をはじめたそうです。昭和41年には新潟市の学校給食で「ソフトめん」が採用されたのを機に、「新潟県学校給食会」から「学校給食用麺委託加工工場」に指定されたんです。今も新潟市を中心に学校給食用の麺を提供しています。

——「ソフトめん」って、懐かしいですね。
大島さん:正式には「ソフトスパゲッティ式めん」というんです。ミートソースをかけて食べることが多かったのでこの名前がついたんだと思います。今では「ソフトめん」が給食で提供されるのって、年に1〜2回くらいしかありません。
——「スパゲッティ式めん」だったとは(笑)。給食の「ソフトめん」以外にも、いろいろな麺をつくっているんですよね。
大島さん:中華麺をはじめ、うどん。そば、パスタといった業務用の麺を飲食店に卸してきました。ただ、最近では価格競争が激しくなってきたため、飲食店への卸売はかなり減ってしまいましたね。
——原料費も値上がりして大変ですよね。大島さんのこれまでのことも教えてください。
大島さん:私は小学3年生の頃から野球を続けていて、将来はプロ野球選手になりたかったんです。でも高校時代にその夢は諦めて家業の「三旺食品」を継ぐ決心をしました。そこで大学を卒業してからデジタル機器の営業を8年経験したんです。
——それは他の会社で社会経験を積むため、と。
大島さん:そうです。取引先の社長と商談する機会が多かったので、トップの方々との付き合い方を学ぶことができて、その経験は今も役に立っています。

きっかけは「燕背脂ラーメン」と「三条カレーラーメン」の食べ比べセット。
——自家製麺を使ったオリジナル商品「楽珍亭(らくちんてい)」についても教えてください。
大島さん:ご家庭で本格的なご当地ラーメンを味わっていただきたいという思いで商品開発しました。熱湯を注ぎ電子レンジで5分ほど温めるだけで、生麺を使った本格的なラーメンを楽しんでいただけます。カップラーメンのような乾麺ではなく、コンビニやスーパーのような茹でた麺とも違った味わいをお楽しみいただきたいです。
——へぇ〜、これはなかなか珍しい商品ですね。
大島さん:簡単につくれて珍しい商品なので「楽珍亭」と名付けました。そもそも「燕背脂ラーメン」と「三条カレーラーメン」の食べ比べセットを受注したことがきっかけだったんです。それに「煮干し醤油」「濃厚味噌」「生姜醤油」の3つを加えて発展させたオリジナル商品として「新潟5大ラーメンセット」の販売をはじめました。

——おかもちを模したケースに丼みたいなパッケージの商品が入っていて、とってもユニークですね。
大島さん:大変好評だったんですけど、お土産として持ち帰るには大き過ぎるという意見もあったので、化粧箱商品が入ったミニサイズも販売しました。手作業の部分が多くて時間がかかるので大量生産できないことは残念ですけど、そのおかげで希少価値が生まれているように思います。
——ちなみに、どんなところで購入できるんでしょう?
大島さん:JR新潟駅の駅ビルをはじめ、道の駅、土産物店、ECサイトでお買い求めいただけます。あと毎月最終土日に開催している「工場直売会」でも販売しているんです。
——直売会を毎月やっているんですね。
大島さん:うちが何をやっている会社なのか近所でも知らない人が多かったので、もっと会社について知ってもらおうということではじめました。もう8年間も続けていますが、毎月通い続けてくださるお客様もいますし、地域の方々に喜んでいただけて嬉しいですね。

閉店する人気店の味を残すため、商品化した「からしそばの具」。
——他にもオリジナル商品はあるんですか?
大島さん:5年前に閉店してしまった町中華の名店「中国料理 柿屋(かきや)」の人気メニュー「からしそば」の具を、レトルト商品にして販売しています。弊社の中華麺を使っていただいていたご縁で、マスターや奥さんから息子みたいに可愛がっていただいていたんですよ。
——どうして商品化しようと思ったんでしょう?
大島さん:多くの人に愛されていたお店なのに、閉店しちゃうのはもったいなくて残念だったんです。大好きだった「からしそば」だけでも、なんとか残せないかと思って商品化しました。

——でもオリジナルに寄せて再現するのは、大変だったんじゃないですか?
大島さん:そうなんですよ。レトルト食品っていうのは高温高圧で殺菌するから、肉は小さくなるし葉物野菜は溶けちゃうしで、元の味や食感が変わってしまうんです。
——それは難しそうですね。
大島さん:ですから、具材のひき肉をひとまわり大きめにカットしたり、とろみ具合を調整したりして、オリジナルの味を忠実に再現できるよう工夫を重ねました。今でも定期的にマスターや奥さんから味をチェックしていただいているんです。
——とても強いこだわりを感じますね。
大島さん:こだわっているといえば、パッケージの「柿屋」という文字も看板に使われていたものを再現しているんです。よく見ていただくと、ペンキの擦れまで忠実に再現していることがわかると思います(笑)
——もはや、こだわりというより愛ですね。
大島さん:「柿屋」の「からしそば」には熱烈なファンが多かったんですけど、そうした方々に喜んでいただけるのは嬉しいですね。いつか「柿屋」を復活させるのが私の夢なんですよ。ただ、やるんだったら人任せにしたくないので、自分が営業したいと思っています。
——そのときは、ぜひ取材させてください(笑)。他にも今後取り組みたいことがあれば教えてください。
大島さん:これまでも三条市にある町工場の人気キャラクターや、有名なアニメキャラクターのグッズとしてOEM商品をつくってきました。今後はもっとOEM商品に力を入れていきたいですね。

三旺食品合資会社
新潟市中央区鏡が岡2-22
025-244-2319
9:00-17:00
土日曜休
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