Things

みんなにとっての秘密基地。洞窟のようなサロン「kiti.」。

「佐渡に面白い人がいるから取材してみて!」とご紹介いただき、フェリーに揺られて佐渡にやってきました。今回お話を聞く「kiti.」の坂下さんは、東京のサロンで経験を積まれたスタイリストさん。そんな坂下さんにお店をつくったきっかけや、施術の中で大切にしていることなどを聞くべく、お店に入ってみると……。

 

 

Kiti.

坂下 裕哉 Yuya Sakashita

1992年佐渡市出身。新潟の美容専門学校を卒業後、都内の美容室で10年以上経験を積む。2024年に「kiti.」を佐渡にオープン。趣味は釣りと読書とジムで運動すること。

自分の理想の空間を求めて、佐渡に帰ってきた。

――今日はよろしくお願いします。店内が洞窟みたいで、ワクワクします。

坂下さん:図書館だったか、ホテルだったか忘れちゃったんですけど、こんな建物の画像を前に見たことがあったんです。それがすごくいいなと思って、大工さんにお願いして設計してもらいました。実は、ディズニーと同じ建築方式で建てられているんです。

 

――なんだかアトラクションの中にいるかのようです。坂下さんは、以前東京で美容師さんとして働いていたと聞きました。

坂下さん:新潟の美容専門学校を卒業してから、東京で10年以上働いていましたね。アシスタントのときは、辛いと思うことも多かったですが、無事スタイリストになれて、いろいろ経験させてもらいました。

 

――そもそも、坂下さんはどうして美容師を目指したのでしょう。

坂下さん:実家が理容室をやっているんです。その影響もあって、高校生のとき遊びで友達の髪を切ったりしていて。なんとなく「楽しいな」 と思っていたのがきっかけですね。

 

 

――東京で働かれている中で、佐渡に戻る選択をしたのは?

坂下さん: 東京の職場には全然不満はなくて、お店の代表とも仲がいいんですけど、もう一歩挑戦したいなって思ったんです。独立したいってよりは、「自分の思い描いた空間で働きたいな」と思ってお店を出すことにしました。

 

――自分の理想の環境で働くための、独立だったわけですね。

坂下さん:東京は土地も高いし、空いているテナントを探すのも大変だったし。自分の理想を実現しやすいのが佐渡だったんですよね。あと僕の趣味が釣りっていうのもあったので、佐渡がちょうどよかったんです(笑)

 

――「kiti.」をつくるとき、どんなお店にしたいとイメージしていたのでしょうか。

坂下さん:名前の由来にもなっているんですけど、自分にとっても、お客さんにとっても、秘密基地のような場所にしたかったんです。秘密基地ってなんかワクワクするじゃないですか。お客さんにも、自由にこの空間を使ってほしくて、美容室っぽくないような内装にしています。

 

 

――確かに、バーカウンターのある美容室は見たことないです。

坂下さん:僕の趣味の空間を入れたくて、バーカウンターをつくりました。ここで飲食はできないんですけど、ゆくゆくはイベントを開いたときに使えるようなスペースにできたらいいなと思っています。

 

――木や石の装飾も、リゾートホテルの一室みたいですね。

坂下さん:扉やテーブルに使われている木や石は、ほとんど佐渡のものを使っているんです。それぞれのパーツがどこのものなのか、説明ができるんですよ。シャワー台がある部屋の天井は知り合いのアーティストさんに作ってもらったんですけど、これも全部佐渡の木を使っています。

 

イメージが共有できるまで、カウンセリングは丁寧に。

――施術をしているとき、坂下さんが大事にしていることを教えてください。

坂下さん:カウンセリングですね。お客さんとイメージが可視化できるまで、お話をして決めていきます。お客さんに信用していただくためなら、カウンセリングにかける時間はいくらでも取りたいんです。

 

――そこまでカウンセリングが大切だと思うのは、どうしてなんでしょう。

坂下さん:自分自身、髪を切ってもらったとき、話をよく聞いてもらえなくて、自分の思い通りにならないことがあったんです。それに、自分がスタイリストになった後も、カウンセリングの大切さを実感する機会が多くありましたね。スタイリストになりたてのときに、先輩から「スタイルの着地点を決めておけば、そこに向かっていくだけだから、カウンセリングは丁寧に」って言われたのが忘れられなくて。そこからカウンセリングを重視するようになりました。

 

 

――カウンセリングでは、具体的にどんなんことを聞いていくのでしょうか。

坂下さん:例えば髪の色について聞いたとき、グレージュにしたいってご希望があったとするじゃないですか。そのグレージュも明るさだけじゃなくて、ブルー寄りなのか、ピンク寄りなのか……など、一緒に画像を見ながら聞いていきます。それを繰り返して、お客さまと共通認識がもてるまでは施術をはじめないんです。

 

――徹底されていますね……。中には「おまかせで」っていう方もいるのでは?

坂下さん:おまかせって、2種類あると思うんです。僕に全部一任してくれる、本当の「おまかせ」の方と、ある程度なりたいスタイルが決まっていて、細かい部分は僕に任せてくれる方。そのふたつのパターンのどっちなのか、お話しながら見極めています。

 

 

――そこまで意図を組んで判断してくれるなら、安心して坂下さんにお任せできますね。

坂下さん:そう言ってもらえると嬉しいですね。カウンセリングでしっかりお話を聞くことで、何年も先を見据えた提案ができるんですよ。今縮毛矯正をかけたいけど、何年後かにパーマをかけてみたいと考えていたら、縮毛矯正がパーマに与える影響お伝えしています。そういうのを伝えているかいないかって、全然違うと思うんです。

 

――あのときしなければよかった、という後悔を防げるんですね。「kiti.」をこれからどんなお店にしていきたいですか?

坂下さん:来てくださった方が誇れるようなお店にしていきたいです。僕のお店は電話もホットペッパーも開設していないんですけど、ありがたいことにInstagramのDMやお客さまからのご紹介で来ていただいているんです。そういった方が満足できる施術をこれからも続けていきたいです。あとは、これから開業を考えている美容師さんのお手本になるようなお店にしていきたいとも思っています。

 

――と、言いますと?

坂下さん:僕は早い段階でフリーランスになったんです。でも、フリーランスって「後輩が育たない」って言われて、マイナスなイメージを持たれることもあるんです。でもそれだけじゃなくて、僕みたいに1対1でしっかり話を聞けるお店がつくれるっていうことを伝えて、若い人たちの選択肢のひとつになるようなお店になっていけば嬉しいですね。

 

――坂下さん自身の今後の目標を教えてください。

坂下さん:「勇気がいるな」って思うことでも挑戦していきたいですね。自分が挑戦し続けていかないと、どんな提案も聞いてもらえないと思うんです。何かに挑戦しようと佐渡に移住される方が多くて、うちのお客さまの4割はそういった方なんです。僕も負けないように、常に新しいことに挑戦していこうと思います。

 

kiti.

佐渡市橘257-5

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
  • 部屋と人
  • 僕らの工場
  • She
  • 僕らのソウルフード
  • Things×セキスイハイム 住宅のプロが教える、ゼロからはじめる家づくり。


TOP