ものづくりの町、三条のアクセサリーブランド「TON TONG」。
ものづくり
2025.07.25
三条市を拠点にしている「TON TONG(トントン)」。ひょんなことがきっかけで、独学でアクセサリー作りをはじめた中澤さんが「自分で身につけたいと思えるかどうか」を大切に展開しているブランドです。育児中の母としての視点を生かして手入れが楽な素材を使ったり、溶接職人のお父さんとコラボをしたりと、オリジナリティのあるアイテムを揃えているそうです。ハンドメイドをはじめたときの思い出や地元への気持ちなど、いろいろとお話を聞いてきました。

TON TONG
中澤 希美 Nozomi Nakazawa
1988年三条市生まれ。勤めていたアクセサリーショップでハンドメイド作品を販売したことがきっかけで、アクセサリー作りをはじめる。ガチャガチャが大好きで、自宅にはかなりの数のコレクションがある。

作る楽しさが、原動力。
――中澤さんはいつ頃からアクセサリーを作りはじめたのでしょうか。
中澤さん:20代後半のときに、働いていたハンドメイドのアクセサリーショップで「何か作って売ってみない?」と言われて。それで、自宅で細々と作業をはじめたのが、今につながっています。
――ということは、もう10年以上のキャリアをお持ちなんですね。
中澤さん:最初はすごくシンプルに「楽しいから作る」って感じでした。
――何を参考にハンドメイドスキルを磨いたんですか?
中澤さん:ずっと独学なんです。別に特別なスキルがあるわけじゃないから、勤め先の人から「何か作ってみて」と言われたときは、なんで私に頼むんだろうって不思議でした。

――でも、はじめから売り場ありきという、ある意味贅沢な話のような。
中澤さん:しかも、それなりの値段で(苦笑)。私としては「あの部分が綺麗に加工できていない」「まだどうにかできそうなのに」と思っているから、売り場でヒヤヒヤしていました。
――それ以降もずっとハンドメイドを続けていたんですか?
中澤さん:作ることはずっとやめずにいました。だんだん「好きなように作ろう」って気持ちになって。お店を離れてからは自分で値段を設定できるわけなので、恐縮しながら「これくらいだったら手に取ってもらいやすいかな」「私も気負わずに販売できるな」って値段からスタートしました。最初にお願いした委託先は高校生が通うような古着屋さんだったので、300円~500円くらいの価格帯が多かったと思います。ありがたいことにそれなりに買ってもらえていたので、その分、たくさん作ることができたんですよ。

お手入れ楽ちん。父との合作、ステンレスアクセサリー。
――その頃も、今と同じようなアイテムを?
中澤さん:いえいえ、その当時は市販のパーツを組み合わせてつなげたり、連ねてみたりという作り方をしていて。色味をたくさん使ったカラフルなものが多かったです。でも作りながら、「自分はこういうのつけないんだよな」と思っていたんです。私は、シンプルなアクセサリーが好きなので。「自分でも身につけたいな」「しっくりくるな」ってアクセサリーが作れるようになるまで、けっこう時間がかかった気がします。

――それから、だんだんと今の活動に近づいていったって感じですか?
中澤さん:30代前半に地元の三条市に戻ってきたのが、大きな転機だったかもしれないです。ちょっと車を走らせれば新潟、長岡まで行けるから、参加できるイベントの数がものすごく増えました。
――今のような素材とデザインに変わったのには、何か理由があるんでしょうか?
中澤さん:私、金属アレルギー持ちなんです。アレルギーが起きにくい素材を使ったアクセサリーでも合わなくて。それで、ステンレスを選ぶようになったんです。ステンレス素材のアクセサリーは、水に濡れても変色せず一日中つけていられて楽ちんなんですよね。子育てしていると、アクセサリーをつけたり外したりが面倒なんですよ。ということは、「育児中のみなさんもきっとこんな気持ちなんじゃないか」と思って、ますますステンレスを気に入りました。
――最近、新たな取り組みをされているそうですね。
中澤さん:父が溶接職人なんです。私、直接は言いませんが父を尊敬していて。日の目を見させてあげたいというか、「溶接技術でこんなすごいことができるんだよ」ってアピールできたらいいなとずっと思っていたんです。今は、「TON TONG」のリングやピアスなどの加工を父にお願いしています。
――共作を打診したとき、お父さんはどんなリアクションでしたか?
中澤さん:最初はめんどくさがっていました(笑)。「こんなに細かい作業なんだから、他の仕事より作業賃を高くとるぞ」って言われました。
――ふふふ。それで、できあがりはどうでした?
中澤さん:もう、めちゃくちゃよくて。「これこれこれ」って、ふたりで大喜びして。やっと父との合作ができたので、最高潮に満足しています。

ものづくりの町らしさを取り入れて。
――具体的に、溶接技術で「TON TONG」のアクセサリーはどう進化したんでしょう?
中澤さん:単純にパーツを組み合わせていたものが、オリジナリティを出せるようになりました。例えば金属パーツを接合して、フープピアスがぷらぷらと揺れないようにしたりだとか。他のアクセサリーでも接着部分をすごく頑丈にできるので、ポロリとパーツの一部が取れてしまうことはありません。デザインの幅も広がりました。

――ものづくりの町らしいアクセサリーですよね。
中澤さん:そう思ってもらえたら、超嬉しいです。私、なんだかんだずっと三条にいるし、三条が好きだから、「ものづくりの町らしさ」を作品に反映できたらいいなと思っていたんです。それで、お客さまの心を掴めたらいいなって。今は、その理想を実現できている気がします
――最後に、作品にどんな思いを込めているのか教えてください。
中澤さん:母親になってから「アクセサリーなんて必要ないかも」って思うようになったんです。もっと優先しなくちゃいけないことが山ほどあるから。それなのに、「TON TONG」の商品を買ってくださる方がたくさんいます。私自身が「アクセサリーはなくてはならないものじゃない」と思っているのに、それに魅力を感じてくださるのだから、せめてお客さまが手を出しやすい金額にしたいと思っていて。「案外、安いですね」と言われることがあるんですけど、そう思ってもらいたいんです。

TON TONG
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