菊水酒造が届ける、新しい発酵体験。
「KIKUSUI 蔵 GARDEN」
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2025.11.14
今年の春、新発田市に誕生した「KIKUSUI 蔵 GARDEN」は、「発酵」をキーワードに、カフェやショップ、体験スペースのラボ、不定期でイベントが開催される土蔵などで構成された新スポットです。準備段階から携わってきたディレクターの南波麻美子さん(菊水酒造株式会社)に、この施設に込めた思いを聞いてきました。
南波 麻美子
Mamiko Namba(KIKUSUI 蔵 GARDEN)
1979年静岡県生まれ。結婚を機に新潟へ転居。2007年から菊水酒造で働きはじめる。KIKUSUI 蔵 GARDEN 準備室を経て、現在はKIKUSUI 蔵 GARDENディレクター/企画室長。全国新酒鑑評会に出品するために醸した大吟醸酒「菊水 出品酒」がお気に入り。
日本酒の魅力をたくさんの人へ。
構想の軸は「発酵」。
――2025年春にオープンした「KIKUSUI 蔵 GARDEN」に、南波さんは準備段階から関わられていたそうですね。
南波さん:2年ほど前に準備室が立ち上がり、私を含めた6名の社内メンバーでオープンに向けての検討を重ねてきました。
――そもそも、どうしてこういった一般の人が立ち寄れるスポットを新しく作ろうとされたんでしょう?
南波さん:今は県内外のたくさんの酒蔵さんが、高い技術を駆使して日本酒を製造されています。どのお酒も美味しいのは間違いないですし、菊水酒造としても自信を持って販売しております。ただ、業界が低迷しているのは、事実です。
――今は日本酒だけじゃなく、他にもいろいろな種類のお酒がありますもんね。
南波さん:そんな中で日本酒の魅力や、菊水の酒造りのこだわりをお伝えしたくても、日本酒そのものに関心のない方には情報が届かないんですよね。私たちはどうにかして、今まで日本酒に触れてこなかった方にファンになっていただきたいんですけど、今までと同じようなことをしても難しい。それであれば、別のキーワードを掲げて、広く日本酒の世界に入ってきていただこうと考えました。「そのためにはどうしたらいいの?」というところが準備室のはじまりでした。
――その「キーワード」というのは?
南波さん:日本の食文化に昔から根付いていたもので、日本酒造りにも欠かせない「発酵」です。最近、海外では「発酵」や「旨味」という言葉が飛び交っていて、インバウンド需要も期待できるキーワードです。……と、ここまでお話した内容は、実は代表の髙澤が以前からずっと思い描いていたことなんです。

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最大の武器、社員ひとり一人の
ホスピタリティが光る。
――「発酵」というキーワードから、どんなステップでプランが構築されていったのか、とても興味があります。
南波さん:キーワードは定まったものの、それだけじゃなく、菊水酒造の特色も出さなくてはいけません。「我が社の強みってなんだ」と話を進めた結果、それは社員の「ホスピタリティ」にあるという答えにいきつきました。会社敷地内には、20年前に設立した「菊水日本酒文化研究所」があります。酒器や文献を収蔵して日本酒文化の理解ができ、さらに新しい楽しみ方を提案する「コト造り」に取り組んできました。「菊水日本酒文化研究所」を巡る蔵見学の案内役は、部署問わず当社の社員みんなが担当しています。お客さまに楽しんでいただくために、お酒のこと、菊水のことを、丁寧にご案内する習慣が昔から染み付いているんです。
――私、以前から何度も菊水酒造さんにお邪魔して、皆さんのホスピタリティには触れたことがあるつもりです。それは個人的な対応じゃなくて、社風だったんですね。
南波さん:私も入社当初は、「なんて礼儀正しい会社なんだ」とびっくりしました。お取引先だけじゃなくて、出入りされる業者さんに対しても徹底しています。それは今にはじまったことではなく、先代が現役の頃から続く、会社の文化です。根底にはお客さま、それも数百人、数万人じゃなくて、おひとりおひとりにしっかり向き合って対応したいという思いがあります。
――そこからは順調にプロジェクトが進んでいったのでしょうか。
南波さん:こういった施設の立ち上げには、通常、コンサルタントを導入しますよね。指し示す人がいるっていうか。でも今回は、そうした方はいらっしゃいませんでした。決まっていたのは、「発酵」「ホスピタリティ」といったキーワードと、それに沿った施設を新設するということだけ。どう具現化するか、何もないところから生み出していくのは正直キツかったです。最初の頃は「もやの中にいる」ような感覚でした。

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ショップ、カフェ、そしてラボ。
五感で楽しむ「Discovery」の場へ。
――さて、そうした経緯もふまえて、「KIKUSUI 蔵 GARDEN」について教えてください。
南波さん:準備室メンバーで意見を出し合って、それをさらに膨らましていって、最終的にコンセプトを「Discovery」に決めました。ここへ足を運ぶと、日本酒や発酵についてたくさんの新しいことを知ることができる。そして、今までの知識がより充実する。それが「おもしろい」につながるよね、と思ったんです。
――先ほどカフェにお邪魔したら、パンやドレッシング、塩麹などの調味料も自社で作っていると聞いて、すごくびっくりしました。当然どこかから仕入れいてるものかと……。
南波さん:メニューの開発を依頼した会社さんには、「すべてここで準備したものを使いたい」と相談しました。仕入れたものでは、やっぱりこう、私たちが伝えたいことをうまく届けられないんじゃないか、という気がしたので。
――その会社さんはなんて?
南波さん:「ほんとうに大丈夫ですか」って(笑)。ただ今回のプロジェクトは、長い菊水酒造の歴史に残るものです。それに取り組むのだから、生半可なことはできないという気持ちでした。既製品を用いてこの空間を楽しんでもらうっていう小手先のエンターテインメントじゃないだろうと。
――本気度が伝わるお話です。
南波さん:そういったところを感じ取ってもらえると、お客さまはもっとこの場所を好きになってくださると思っています。それは日本酒も一緒なんですよね。製造工程や完成までのストーリーに触れると、お酒がもっと好きになるってこと、ありますよ。
――カフェの他にラボ、ショップ、あそびば、土蔵とエリアがいくつもあります。
南波さん:ショップには、菊水酒造の日本酒と地元のメーカーさんに作っていただいた酒粕を使ったお菓子や、「月岡ブルワリー」さんとコラボしたクラフトビールなどを置いています。お客様にご注文いただいてから、その場で瓶に詰めてご提供する限定のお酒もありますよ。
――ラボではどんなことができるのか気になっています。
南波さん:ラボは、この施設のいちばんの要です。ショップやカフェに加えて、ラボで「発酵にまつわる体験」ができる。そこが差別化のポイントになると思っています。ワークショップなどを開催して親子で楽しんでいただけるスペースです。

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ホスピタリティという誇りを胸に。
何度も訪れたくなる空間を目指して、妥協なし。
――建築や内装はまた別のハードルがあったのではと思います。
南波さん:建築のデザイナーさんは、最初に「おしゃれな場所」をご提案くださいました。それは基本中の基本であって、でも「今どきらしいカフェ、ショップを作りたいわけじゃないんです」と生意気にもお伝えしました(笑)。具体的な話をすると、メイン棟の壁は白にしようって話で進んでいたんです。それだとこの場所らしさが薄れてしまうように感じたんです。代表から期待されていた「何度も通いたくなる場所」「落ち着く場所」にするにはどうしたらいいか、壁の色だけでもかなり熟考しました。最終的にはちょっと土っぽい色にしたんですけど、これで正解だったと思っています。
――オープン当日のメンバー皆さんは、どんな感じだったんですか?
南波さん:みんなで感動の涙を流すかと思いきや、もうただただ必死でした(笑)。お客さまに楽しんでいただくこと、事故のないようにすること、それだけで必死で。そもそも「KIKUSUI 蔵 GARDEN」の完成が目的だったわけじゃなく、運営することが私たちに課された命題ですから。
――ものすごくたくさんの人が足を運んだそうですね。
南波さん:4月29日のオープンからゴールデンウィーク中に約8,000名、年間で1万5,000人の来場見込みでいたところ、7月末までに約2万人の方にお越しいただきました。
――すごい! お見事です!
南波さん:今回のプロジェクトもそうですけど、企画を運営するには、社員を巻き込まなくてはいけません。私から伝えるべきことが不十分だったときもありましたけど、その度にまわりの皆さんにフォローしてもらいました。「お願いしていないことまでフォローしてくれてる」って何回思ったことか。駐車場の誘導役ももちろん社員が担うんですけど、あるお客さまから「気持ちよい挨拶で親切に誘導してくれた。施設に入る前から心地よくなった」とおっしゃっていただきました。ホスピタリティに満ちているところが当社の誇りだと思っていたので、それを認めてもらえたことが、施設が完成した以上に嬉しかったです。

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