加茂市の文化財にできた「kafune」
人に優しくなれる、あたたかい場所。

カフェ

2026.05.06

text by Ayaka Honma

加茂市の文化財として登録されている「旧七谷郵便局舎」に昨年、「kafune」というお店ができました。このお店をはじめたのは、以前「Cafe LITH」でお話を聞いた御手洗さん。場所を変え「kafune」としてお店をはじめた経緯や、お店のこと、この建物のことなどお話を聞いてきました。

Interview

御手洗 智一

Tomokazu Mitarai(kafune)

1981年加茂市生まれ。新潟デザイン専門学校卒業。アクセサリー職人から飲食業に転向し経験を積む。2021年に加茂市で「cafe LITH」をはじめたのち、2025年に旧七谷郵便局に移転し「kafune」をオープン。

また、ここに戻ってくる気がした。
「Cafe LITH」から移転するまでのこと。

――「Cafe LITH」から場所を移し、昨年「kafune」をオープンされました。どんな経緯で移転することになったのでしょう。

御手洗さん:「Cafe LITH」をはじめて5年が経って、ステップアップというか、新しい場所でお店ができたらなって思っていたんです。この場所は「Cafe LITH」をはじめる前、僕が働いていたお店があった場所でした。2年前くらいに使われなくなったことは知っていたので、「ここでお店ができないかな」と思って、ここの大家さんに話したら、快く受け入れてくださいました。

 

――御手洗さんご自身も、馴染みのあった場所だったんですね。

御手洗さん:そうですね。この場所にあったお店を辞めることになったとき、「どんなかたちかわからないけど、もしかしたらまた戻ってくるかもしれない」っていうイメージがあったんです。今思えば、当初からこの建物に惹かれるものがあったのかもしれません。

 

――そんなこちらの建物は「旧七谷郵便局舎」として文化財にも指定されています。

御手洗さん:昭和10年に建てられたもので、90年以上の歴史があります。お店の前の道路は昔、旧道として使われていて、周囲には大正時代に建てられた酒蔵や明治時代に建てられたお家が今も残っています。この辺りだけ他とは違う雰囲気があって、それに惹かれてきてくださる方がたくさんいます。ここでお店をはじめた僕も、そのうちのひとりですね。

 

――確かに、時間を忘れて落ち着けるような雰囲気です。

御手洗さん:僕自身、こうした歴史のある建物で働けることはとても幸せだと思っていますし、働いている間もすごく癒されるんですよ。この場所に合わせて、お店の雰囲気も穏やかな感じにしていて。本を読んだり会話を楽しんだり、それぞれの楽しみ方をしてもらえるようにお店を作っています。

 

――座っているだけでも、映画の中に入ったような非日常感があります。

御手洗さん:ここで使っている机や椅子のほとんどが、僕が今まで集めてきた古いものたちなんです。この建物に新しいものを置くと、どうしても浮いちゃって。机や椅子の中には、郵便局の時から使われていたものもありますよ。壁や床も以前のままの状態にしているので、昔を懐かしんでくれる年配のお客さまも多くいらっしゃいます。

 

机の上には、大正時代の本が。パンの作り方が書いてあるそうです。

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食材、お菓子、作るひと。
七谷を味わう、やさしい一皿。

――こちらのお店は「kafune」と名付けられました。この名前、もしやあの作品から……?

御手洗さん:そうなんです。阿部暁子さんの『カフネ』から名前をつけました。最初は言葉の響きが文学的でいいなと思ったんです。作品を読んでみると、食を通じて人を癒していくシーンがすごくいいと思ったし、『カフネ』みたいにこのお店もみなさまに愛されるお店になってほしいなと思ってこの名前を候補に選びました。実はお店の名前は、クラウドファウンディングの支援者の方に決めていただいたんですよ。

 

――その決め方にしたのには、どんな思いがあったのでしょう。

御手洗さん:クラウドファンディングで集まったお金は、建物の修繕や設備投資のために使わせていただきました。こういうかたちでお客さんにお店作りを支援していただいたので、せっかくなら名前も一緒に決めてもらおうと思って、ふたつの候補の中から選んでもらいました。僅差で『kafune』に決まったんですよ。

 

――『kafune』では、どんなものを楽しむことができるのか、教えてください。

御手洗さん:ケーキやお菓子をメインにランチもお楽しみいただけます。「Cafe LITH」のときからお世話になっている沼垂の「OldtownDessertCompany」さんのケーキや、七谷のパティシエさんにお願いしてケーキやお菓子を作ってもらっています。このパティシエさんも、僕と同じく以前この場所にあったお店で働かれていた方で。『kafune』でもお菓子を作ってもらいたいと思っていたら、大家さんの親戚の方だったんです。ご縁のおかげで、お菓子を作っていただけることになりました。

 

――プリンは御手洗さんが作っているものだと聞きました。

御手洗さん:なるべくその地域のものを使いたくて、プリンに使っている卵は加茂農林高校のものを使っています。「Cafe LITH」のときから大切にしている、安心安全なものを使うということに加えて、ここでは地元のものを使うっていうのも大事にしています。

 

――ということは、ランチにも七谷で作られたものが?

御手洗さん:七谷の野菜を使ったスープをご用意しています。以前から、七谷の野菜を使うならスープにして出したいと思っていたんです。そんなときに、加茂でパンを作ってくださる方に出会って。そのパンに合わせて洋風なスープをご用意しています。

 

『カフネ』(阿部暁子著、講談社)

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優しい気持ちで帰れるように、
心を癒せるようなお店でありたい。

――お店を移転されてから、御手洗さん自身に何か変化はありましたか?

御手洗さん:僕自身の変化はないのですが、来てくれるお客さまや関わる人は結構変わったかもしれません。お客さまでいえば、年代の層が幅広くなりました。この前は90代の方が豊栄から来てくださったり、この場所のことを以前から知っている年代の方が多くいらっしゃいます。あとは、ここのご近所さんにも本当によくしていただけて、僕を見かけたら挨拶してくれますし、冬場は除雪も手伝ってくれます。お客さまにもご近所さんにも、していただいたことを何かで返していけたらなと思っています。

 

――お話を聞いていると、この場所だからこその出会いがたくさんあるように感じます。

御手洗さん:そうかもしれません。実はランチのスープを作ってくれているパン屋さんは、お菓子をお願いしている七谷のパティシエさんと昔からの知り合いで、50年ぶりにこのお店を通じて再会したんです。そういったつながりが生まれる場所になっていることは、お店をやっていて、とても嬉しいなと思っています。

 

――これから、「kafune」をどんなお店にしていきたいと考えていますか?

御手洗さん:来てくれた方に、優しくてあったかい気持ちで帰ってもらえるような場所になったらいいなと思っているんです。この場所に移ってから、僕自身も人に優しくしようとより強く思うようになって。それはこの場所の雰囲気がそうさせているのかなと思うんです。もちろん、美味しいものを提供するのは大前提としてあるんですが、この建物の雰囲気を味わって心が穏やかになって、お家に帰ったとき、誰かに優しく接してもらえたらいいなと思うんです。

 

――この場所で感じた優しさを、誰かに手渡せるように。

御手洗さん:僕は看護師さんのように、傷を直接手当はできないですが、看護師さんをこのお店で癒すことはできると思うんです。そうしたら、看護師さんが患者さんにいつもよりも優しく接することができるんじゃないかなって。間接的ではありますが、みなさんを癒せるように、これからもお店をやっていこうと思います。

 

kafune

加茂市黒水856

11:00-17:00

火曜定休

※最新の情報や正確な位置情報等は公式のHPやSNS等からご確認ください。なお掲載から期間が空いた店舗等は移転・閉店の場合があります。また記事は諸事情により予告なく掲載を終了する場合もございます。予めご了承ください。

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