古町の鍋茶屋通り周辺は、老舗の割烹や寿司店、バーなどが立ち並び、大人が食事やお酒を楽しめるエリアです。今回はオープンして間もない「Malt & Spirits Bar Cask(モルトアンドスピリッツ バーカスク)」を経営する、バーテンダー・安藤さんをご紹介します。ウイスキーへのこだわりや、バーテンダーとして心がけていることをお聞きしました。
Molt & Spirits Bar Cask
安藤 智也 Tomoya Ando
1990年新潟市中央区生まれ。事務職から飲食業に転身し、様々な飲食店で経験を積む。バーテンダーへの憧れから日本バーテンダー協会に入会。独学で知識や技術を習得する。2018年新潟市東堀通に「Malt & Spirits Bar Cask」をオープン。趣味は小学生の頃から続けてきたバスケットボールで、プレイするのも見るのも好き。
——安藤さんはずっと前からバーテンダーを目指していたんですか?
安藤さん:いえ、以前はATMを作っている会社で経理の仕事をしていたんです。でも自分には合わないと思ったので会社を辞めて、居酒屋のアルバイトを始めました。毎日違うお客様と接するのが楽しくて、飲食業は自分に合っていると感じたんです。その後はダイニングバーに勤めて、グループ店を移りながらいろいろな経験を積ませていただきました。
——グループ店っていうと、他にどんなお店があったんでしょうか?
安藤さん:寿司からパスタから……中華以外はひと通り経験させていただきました。仕事内容も調理、ホール、ドリンカーとなんでもやらせていただいたので、いろいろなスキルを身につけることができたと思います。
——へ〜、いろいろな飲食店を経験してきたんですね。じゃあバーテンダーはいつから始めたんですか?
安藤さん:バーテンダーに憧れていて、いつかシェイカーを振ってみたいと思っていたんです。それで思いきって日本バーテンダー協会に入会したんですよ。
——日本バーテンダー協会?
安藤さん:日本のバーテンダーの技術や人格の向上を目指して設立された組織で、全国に支部があるんです。
——ほうほう。でもバーテンダーとしての知識や技術って、誰から教わったんですか?
安藤さん:僕には師匠がいなかったので、しこたま本を読んでお酒の歴史や種類、作り方を勉強しました。でも独学だけだと心配なので、実際にバーへ行って飲んでみるんです。そのときにバーテンダーの方からいろいろ教えていただいたりしました。高いお酒を飲むことも多かったので、勉強にお金がかかってちょっと大変でした(笑)
——日本バーテンダー協会に入ってみていかがでしたか?
安藤さん:とにかく会員の皆さんに顔を覚えてもらいたかったので、協会で開催するイベントには積極的に参加しました。新潟には若い会員が少なかったこともあって、先輩方から可愛がっていただけるようになりましたね。バーやバーテンダーの方をご紹介いただいたら、必ず伺ってご挨拶させていただくようにしていました。
——「Malt & Spirits Bar Cask」をオープンしたいきさつを教えてください。
安藤さん:勉強を重ねるうちに、バーテンダーとして自分のお店を始めたいと思うようになったんです。お店をやるんだったら長い歴史がある古町でやりたいと思って、物件を探していたらこの店舗に巡り合いました。通りの石畳の風情がかっこよかったので、ぜひここでと思ったんです。
——でもこのエリアって、めちゃめちゃ家賃が高そうですよね。
安藤さん:そうですね(笑)。大家さんに交渉したら「若い人に古町を盛り上げてもらえるなら応援させてもらう」って言っていただいて、ありがたいことに家賃を少し下げていただけました。
——それはよかったですね。ところで店名の「Cask」にはどんな意味があるんですか?
安藤さん:「Cask」は英語で「酒樽」っていう意味なんです。ウイスキーもワインもビールも日本酒もすべてのお酒は樽で生まれるので「Cask」と名付けました。
——あ、それでマークも酒樽なんですね。どんなバーにしたいと思ってオープンしたんですか?
安藤さん: 1回飲みに来ていただいて20,000円かかるんだったら、1,000円で20回来てほしいんです。気軽にちょくちょく足を運んでいただけるのが嬉しいんですよね。だからセット料金も安く設定してあります。あと、ご予算に応じて飲んでいただけるので、バーが初めてっていう方でも安心して利用していただけるし、ウイスキー玄人にも満足していただけるお酒もご用意しています。
——「Malt & Spirits Bar Cask」ではどんなお酒に力を入れているんですか?
安藤さん: いろいろなお酒をご用意していますけど、中でもウイスキーには力を入れています。私はビールとかレモンサワーとかばかり飲んで、ウイスキーはあまり飲んでなかったんです。でもバーテンダーの勉強をするうちに、ウイスキーの魅力に魅せられるようになっていきました。
——ウイスキーの魅力っていうと?
安藤さん:ウイスキーって同じ色なのに、味は全部違うのが面白いと思うんです。作った人がまだ生きているかどうかわからないくらい、長い年月を経て世の中に出てくるお酒だから、ロマンを感じますね。まさに「時を飲むお酒」という表現がぴったりだと思います。
——いろいろな種類のお酒があって、どれを飲んだらいいのか迷ってしまいますよね。
安藤さん:お酒を選ぶことを楽しんでいただけたら嬉しいですね。もちろん迷ったときはご相談いただければ、その日の気分にあったお酒を選ぶお手伝いをさせていただきますよ。お客様から味の好みやお酒の強弱を聞きながら、場合によっては服やネイルの色に合わせてカクテルをお作りします。
——安藤さんはどんなことを心がけてバーテンダーをやっているんでしょうか。
安藤さん:僕はバーテンダーもお店の商品の一部だと思っています。来てくれるお客様は、お店に何かを期待して来てくれるので、100の期待に対しては101で返せるように努力しているんです。だからお客様といろいろなお話ができるように、ニュースは欠かさずチェックするようにしています。自分が知らないことでも、興味があるといえばお客様が教えてくれるので、いろいろな知識がついていくんですよ。
——お酒のことだけではなくて、お客さんを楽しませることも仕事なんですね。
安藤さん:はい。お客様に楽しんでもらうには、自分も楽しまなければっていう気持ちはありますね。お客様から「この店は楽しい」って言っていただけるのが何より嬉しいです。
——では最後に、これからどんなふうにお店を続けていきたいと思っていますか?
安藤さん:バーっていうのは、変わり過ぎないことが大切だと思っているんです。お客様の「いつもの場所」を守って、居心地のいい空間でありたいですね。そして「今夜も来てくれてありがとうございます」っていう気持ちで続けていきたいです。
本を読んだりお店に足を運んだりしながら、独学でバーテンダーとしての知識や技術を身につけた「Malt & Spirits Bar Cask」の安藤さん。これからも古町のオアシスとして、お客さんたちに美味しいお酒を作って、心を満たしてあげてください。
Malt & Spirits Bar Cask
新潟県新潟市中央区東堀通9-1407-7 イーストモートplus 2F
080-5512-3821
19:00-2:00
日曜休