新津川のほとりに「中華采館 飛鳥(ちゅうかさいかん あすか)」という中華料理店があります。誰でも気軽に本格的な中華料理が楽しめるこのお店、どんな方がどんな思いで料理を作っているんでしょうか。店主の青木さんにお話を聞いてきました。
中華采館 飛鳥
青木 鴻一 Kouichi Aoki
1945年新潟市秋葉区生まれ。横浜中華街にある「聘珍楼」で修業した後、ヨーロッパの国々を巡って料理を学ぶ。新潟に帰ってからは「保盛軒」での修業を経て、1971年に「中華采館 飛鳥」を開業。「新津川水仙物語」のボランティアにも会長として取り組んできた。
——「中華采館 飛鳥」は開業してどれくらい経つんですか?
青木さん:昭和46年に開業したから、もう50年以上経ちますねぇ。もともと私の家は船宿をやっていたんですよ。当時は新津が石油で栄えていて、舟を使って水路で石油を運んでいたんです。そういった関係の人が多く宿泊して繁盛していたそうです。子どもの頃から料理人の姿を間近に見てきたので、私も料理の仕事を目指すようになりました。
——青木さんはどちらで修業されたんですか?
青木さん:高校の先輩に紹介してもらって、横浜中華街にある「聘珍楼(へいちんろう)」で修業させてもらいました。テレビの料理番組でもお馴染みだった、日本の広東料理第一人者・周富徳さんが総料理長を勤めていたお店です。
——お〜、それはすごい! 周さんとお話をされたことはあったんですか?
青木さん:あちらは雲の上の人ですからそんなにお話しする機会なんてなかったけど、料理上の指示は何度かいただきました。とても気さくで威張らない人でしたねぇ。
——かなりの名店で修業されたわけですけど、調理場は厳しかったんですか?
青木さん:厳しかったかもしれないけど、料理を学べる楽しさの方が大きかったから苦にはならなかったんですよ。
——根っから料理がお好きだったんですね。「聘珍楼」ではどのくらいの期間、修業をされたんですか?
青木さん:6年くらいでしょうかねぇ……。その後シベリア鉄道でヨーロッパに渡って、1年かけて各地を回りました。
——えっ、ヨーロッパ? 観光ですか?
青木さん:旅をしながら料理の勉強をしてきたんです。スペイン、フランス、ドイツの国々を歩いたりヒッチハイクしたりしながら回って、いろいろな料理を食べ歩きました。スペインではお金がなくなったので4ヶ月ほど皿洗いをして働きながら、料理を勉強させてもらったりしたんです(笑)
——すごい情熱ですね。帰国後は新潟に帰られたんですか?
青木さん:はい、中華料理の老舗「保盛軒(ほせいけん)」で勉強してから1971年に独立して、実家の旅館を一部改築して「中華采館 飛鳥」をはじめました。
——「中華采館 飛鳥」をはじめるにあたって、どんなお店にしたいと思っていたんでしょうか。
青木さん:私が学んできた本格的な中華料理を、気軽に食べてもらえる店にしたかったですね。だから最初はカレーやカツ丼をメニューに入れようか迷ったんです。
——本格中華なのにカレーやカツ丼ですか。それはどうして?
青木さん:都会とは違って地方ではじめるお店ですから、食堂の定番メニューがあった方がお客様も来てくれるんじゃないかと思ったんですけけど、やっぱりそこは中華料理へのこだわりを貫きました。結果的にはイメージがブレずに続けてこられたので、こだわって正解だったと思っています。
——メニューを見ると、確かに本格的な料理が並んでいますね。
青木さん:メニューは私と女房でパソコンを使って作っているんです。少しでもわかりやすく料理の内容が伝わるように、一品一品説明文を入れるようにしています。
——このなかで人気のある料理ってどれなんですか?
青木さん:定番中華の八宝菜や回鍋肉は根強い人気がありますね。麺料理では「東披麺(トンポーメン)」が人気です。鶏、豚、煮干しで出汁をとったスープと細麺の上に、丸半日蒸し続けてから柔らかく煮込んだ豚の角煮を乗せたものなんです。
——とろっとろの角煮のおかげでラーメンがすすみますね。
青木さん:ありがとうございます。あと、うちの名物は肉団子なんですよ。「飛鳥といえば肉団子」って言われるくらい(笑)。外はカリッとして、中はふんわりしています。肉と同じくらいキャベツが入っていて食感を楽しめますし、濃厚な甘酢たれのおかげでご飯が進むんです。家族が集まる盆や正月になると、1日で段ボール7箱分の肉団子が売れます。
——もはや新津のソウルフードですね。その話だけでも地元で親しまれてきたことがわかります。
青木さん:私は昨年まで「新津川水仙物語」というボランティア活動の会長を12年間続けてきたんです。隣にある新津川沿いの遊歩道に水仙を植えて景観をよくしようという取り組みなんですけど、少しでも地元の役に立つことには参加していきたいと思っています。今は町内の自治会長をやっているんですよ。
——いろいろなことをされているんですね。
青木さん:地元のガス会社が主催している料理教室の講師までやっています。生徒さんと接することでいろいろ気づくこともあって、教えているつもりが教わっていることも多いんですよ(笑)。これからも生涯現役で料理を作っていきたいと思っていますし、地元に根ざしたお店であり続けたいですね。
中華采館 飛鳥
新潟市秋葉区新津本町2-17-1
0250-22-0018
11:00-15:00/17:00-21:30
月曜休