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ご縁がかたちに。こだわりのガレットが楽しめる、小針の「Creperie cafe Hanasaku」。

今月オープンした小針の「Creperie cafe Hanasaku(クレープリーカフェ ハナサク)」。新潟で新聞記者や歌人として活躍した「山田花作」さんゆかりの建物ではじめたお店。ここでは、オーナーの山田さんが新潟の食材にこだわって作ったガレットやフランスのお菓子を楽しむことができます。お店をはじめたきっかけや、料理のこと、山田さんの今後など、いろいろお話を聞いてきました。

 

Creperie cafe Hanasaku

山田 ゆみ Yumi Yamada

1972年大阪府出身。企業や飲食店の経理の仕事をする中、同じ会社で働いていた旦那さんと出会い結婚する。子どものためにパン教室に通いはじめ、半年で知識や技術を習得し、講師としてパンづくりを教えはじめる。義母にかわって手入れをしていた新潟の家で「Creperie cafe Hanasaku」をオープン。好きな新潟名物は、枝豆。

 

大阪で生まれ育った山田さんが、新潟でお店をはじめたワケ。

――山田さんは大阪生まれ、大阪育ちです。どうして、新潟でお店を開くことに?

山田さん:ここは旦那さんの祖父の家なんです。お義母さんが手入れするのが難しくなってから、私たちが年に1回手入れをしに来ていました。でも、年に1回だけだったので、来るたび家は荒れていたんです。庭の雑草も生え放題だし、蜘蛛の巣だらけだし、「1年来ないだけでもこんなに朽ちて、人が住めなくなっちゃうんだ」って感じました。

 

――空き家を維持するのは、並大抵のことではないですよね。

山田さん:手入れをしていて、この家をこのまま使わないのはもったいないと思ったんです。子どもたちもすごく気に入っていたし。それでずっとやってみたいと思っていた、お店をはじめることにしました。

 

 

――以前から、山田さんは飲食業に携わっていたんですか?

山田さん:いえ、飲食店で経理として働いていたとき、お店が忙しいときはヘルプに入って、そこでちょっとだけ関わっていたくらいです。その後も経理の仕事を続けていたときに、同じ会社で働いていた旦那さんと出会いました。彼に出会っていなかったら、フランス料理にふれることはなかったかもしれません。

 

――と、いいますと?

山田さん:実は旦那さん、フランス生まれなんです。旦那さんのご両親はどちらも日本の方なんですが、長くフランスに住まれていて、そこで出会って結婚されたそうですよ。お義母さんは「ル・コンドル・ブルー」という名門料理学校の先生とお友達だったのもあって、フランス料理をつくるのがとても上手だったんですよ。山田家に嫁いでから、フランスの田舎料理をたくさん教えてもらいましたね。

 

 

――旦那さんとの出会いが、フランス料理にふれるきっかけになったんですね。ところで、山田さんは大阪でパン教室を開かれていると聞きました。

山田さん:子どもがパンしか食べないのに、スーパーで買ったパンはなぜか食べてくれなくて。自分でパンがつくれるように、教室に通いはじめたのがきっかけですね。同時期に3つの教室に毎日のように通っていたおかげで、半年で資格を取ることができました。講師としてパンづくりを教えていたら、家を建て替えることになったんです。そのとき大工さんが「ひと部屋余ってるから、パン教室用の部屋にしよう」って言ってくれて、自宅で教室を開くことになりました。

 

――でも、新潟で開いたのはパン教室ではなくカフェだったんですね。

山田さん:パンの講師を目指している生徒さんに、教室のあと料理を振る舞っていたら、「また食べたい」とか「お店を出してほしい」って言ってもらえたんです。そのときに、私の料理を食べてもらえるお店を出したいなと思って。とはいえ飲食店の経験はほとんどなかったので、このお店を出す前に神戸のお店で料理の基本的なことを学びました。

 

新潟の旬を存分に楽しめる、こだわりのガレット。

──ここでは、どんなお料理が楽しめるんでしょう。

山田さん:ガレットをメインにご用意しています。これもお義母さんから教わったレシピを元に、自分なりにアレンジを加えています。生地には新潟のそば粉を3種類ブレンドしていて、理想の香りや色になるように配合をこだわりました。ガレットの他には1日限定10食のフォンダンショコラもありますよ。

 

――こだわりの生地の中に入っている具材も気になります。

山田さん:おかず系の具材とスイーツ系をそれぞれご用意しています。どちらも季節の食材を使うこと、新潟の食材を使うことを大事にしています。ここに住んでいる人は当たり前かもしれないですが、新潟の食材って本当に美味しいんですよ。生地も具材も、ご縁があったからこそ実現しています。

 

 

――いったい、どんなご縁が?

山田さん:パン教室の生徒さんに、イーストをつくっている会社の方がいて、 その方のご紹介でそば粉を手に入れることができました。具材に使っている野菜やフルーツも、ご縁があって農家の方から直接仕入れることができています。8月に出していた「蟠桃(バントウ)」という品種は市場にほとんど出回らないんですが、これも農家さんのおかげでご提供することができました。

 

――山田さんがガレットをつくるなかで、大事にしていることを教えてください。

山田さん:「また食べたい」って思ってもらえるようにつくることですね。その気持ちを込めるのはもちろん、具材の味を最大限に活かすことも心がけています。酸味や甘み、香りなどバランスが良くなるようにひとつひとつレシピをつくりました。

 

 

――料理はもちろん、お皿やカトラリーもおしゃれで、「ここは日本ではないのでは」と錯覚してしまいます。

山田さん:実はここで使っているお皿や食器は、お義母さんが持っていたものなんですよ。テーブルやイスもこの家にあったものや、お義母さんが持っていたものを活用しています。ガレットと一緒に、フランスの食器もぜひ楽しんでもらえると嬉しいです。

 

新たなスタートを切った山田さんが、これからやってみたいこと。

——お話を聞いていると、山田さんがこれまでやってきたことが、一本の線のようにつながってできたお店なんだと感じました。

山田さん:振り返ってみれば、一本の線に見えるかもしれないですね。でも、私はこれまで「自分で何かしたい!」ってずっと思っていたわけじゃないんです。自分で何かをはじめなくても、「会社員として働いていたらいいかな」って考えてたくらいで。いろんな方とのご縁があったからこそ、今このお店をはじめることができたと思います。

 

 

——ご自身の力だけではなく、周りの方の力も大きかったと。

山田さん:自宅でパン教室を開けたのは、家の建て替えをしてくれた大工さんのひと声があったからですし、そのパン教室にイーストを扱う会社の方が習いに来てくれなければ、ここで理想のガレットはつくれなかったと思います。「人生って、こんなつながっているんだ」って、しみじみ感じているんです。

 

——山田さんのこれからの人生が、どうつながっていくのか楽しみです。

山田さん:実は、次にやりたいことはもう決まっているんです。新潟で会社をつくって、空き家を活用して地域を活性化させようと考えています。この辺りは、建物は立派なのに空き家になっているお家が多くて、すごくもったいないなと思ったんです。空き家を立て直すのではなくて、活かせるものは残したまま、このお店のような場所を増やしたいんです。

 

——空き家を活用、ですか。

山田さん:私がここでお店をはじめられたのも、山田家のみなさんの助けがあったからだと思っていて。恩返しじゃないですけど、少しでも新潟が盛り上がるようなお手伝いをしていきたいです。

 

「Creperie cafe Hanasaku」は、毎月1日前後から2週間営業しています。営業日の中には、山田さんからパンづくりが学べる日や、2組限定でディナーが楽しめる日も。気になった方は、Instagramで問い合わせをしてみてください。

 

 

Creperie cafe Hanasaku

新潟市西区小針上山6-5

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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