柔道や野球、競泳など、たくさんの競技で胸を熱くした「東京パラリンピック2020」。その種目のひとつであるアーチェリーの道具を扱うメーカーが新潟にあることを知っていますか? 今回は新潟初のアーチェリーメーカー「DYNASTY ARCHERY(ダイナスティ―アーチェリー)」の加藤さんに、アーチェリーのアレコレを聞いてきました。
DYNASTY ARCHERY
加藤 健資 Takeshi Kato
1991年三条市生まれ。アーチェリー歴20年。2009年にアーチェリーで国体出場を果たす。2020年2月に「DYNASTY ARCHERY」を設立。選手としての経験を踏まえて、日本人にフィットしたアーチェリーメーカーとして地位を確立している。趣味は最近はじめたサーフィンとサウナ。
――まずは、アーチェリーについて教えてください。「弓で的を射る」という認識はありますが、実際はどんなルールで行われているんですか?
加藤さん:アーチェリーは、70m離れた位置から直径122cmの的を射るのが基本となり、1本10点満点で、合計72本チャレンジできます。昔は288本だったんですけど、144本となり、今の72本がスタンダードになったそうなんです。288本も打つなんて、かなりハードですからね(笑)
――70mも離れていたんですね……。でも、的は122cm。意外と大きいんですね。
加藤さん:簡単そうに思うじゃないですか。でも中心はCDくらいのサイズだし、70mも離れているから、照準は「点」みたいなもんなんですよ。手元で3mmずれると、的に到達するときには25cmずれますからね。
――そんなに……。弓を引くのって力が必要そうですね。
加藤さん:僕たちは鍛えているから軽そうに見えるかもしれないけれど、実際は普段使っていない筋肉も使うから、初めての人はまともに弓を引くことすらできないと思いますよ。やってみます? どうぞ!
――ではでは……。ぐぐぐぐぐ……。うん、無理ですね。……こんなに引けないとは思いませんでした……。加藤さん、見本を見せてください(笑)
――加藤さんは、どんなキッカケでアーチェリーをはじめたんですか? あんまり触れる機会の少ないスポーツな気がして……。
加藤さん:まぁ、アーチェリーってどこでやれるか分からないスポーツですよね。僕が初めてチャレンジしたのは、小学校4年生のときでした。友人に「アーチェリーができる場所があるから行こう」って誘われて、三条にあるアーチェリー場に行ったんです。でも、現地に着くまで、弓のスポーツだと思っていなかったんですよね……。
――え? どんなスポーツだと思っていたんですか?
加藤さん:TV番組で股の下からボールを投げるスポーツを観たことがあって、それがアーチェリーだと勘違いしていたんですよ(笑)
――(笑)
――思っていたスポーツと違っていたわけじゃないですか。やってみてどうでした?
加藤さん:「あれ? 思っていたのと違う……」とはなったけど……。カヌーや水泳をやっていたのもあって、年齢の割に身体が出来上がっていたから、サラッとこなすことができたんですよね。それで面白くなって、週2回の練習会に参加するようになりました。
――なるほど。その後、競技者として真剣に取り組みはじめたのは、いつ頃からだったんですか?
加藤さん:高校生になって、アーチェリー部に入ってからですね。2年生のときにハイスコアを叩き出して、全国大会やオリンピックを目指すようになりました。かなり本格的にやっていたこともあって、結果として大学時代は県の代表として国体に出場することもできましたね。
――選手として活躍されたからこそ、アーチェリーメーカーを立ち上げたと思うんですけど、それまでにはどんな経緯があったんですか?
加藤さん:大学を卒業して、しばらくは東京で働いていました。でも、なんだかんだとあって地元の三条に戻ることになり、実家が営むキャンピングカービルダー「カトーモーター」に就職しました。そのタイミングでアーチェリー仲間から、アーチェリー用品を販売するショップ立ち上げの誘いがあって、仕事をしながらふたりでスタートしたのがまず最初です。
――ふむふむ。
加藤さん:それで、ショップを知ってもらいながら、アーチェリーの認知拡大もできるのではないかと、YouTubeをはじめたんです。でも、しばらくしたらメルカリなどのサービスが普及してきたこともあって、ショップ販売の調子が悪くなりはじめて……。「ここが分岐点だ」と感じたタイミングで、YouTubeだけを残して、アーチェリーメーカーを立ち上げることにしました。それが「DYNASTY ARCHERY」なんですよ。
――メーカーを立ち上げるなんてアグレッシブな決断をしましたね(笑)
加藤さん;ですよね(笑)
――では、「DYNASTY ARCHERY」について聞いていきたいと思います。どんなメーカーなんですか?
加藤さん:企画から開発までを自社で行っている、日本製のアーチェリーメーカーです。自分を含めて、若手のアーチェリー競技者の意見を最大限に反映させながら、made in NIIGATAのチカラで作り上げた日本人に合わせた用品がウリですね。
――日本人に合わせた?
加藤さん:アーチェリーメーカーは、日本に1、2社しかなくて、世界シェアのほとんどを韓国とアメリカが占めています。そうなると、それぞれの国の競技者に適した構造になってくるんですよ。だから、日本ならではの繊細で細やかな気遣いと技術で、日本人に合わせた用品を作っているんです。
――ちょっとのずれが得点に大きく影響するからこそ、日本人競技者に合わせた構造や考えが必要不可欠なんですね。
加藤さん:そうなんです。実際に「東京パラリンピック2020」に参加していた選手たちの意見も反映させていて、試合で使ってもらっています。
――つまり、「DYNASTY ARCHERY」がパラリンピックに……? えー、テンションあがりますね。
加藤さん:選手とは普段から交流があるし、自分たちの用品も使われているし、いろんな意味で試合観戦は盛り上がりましたね。
――試合から目が離せませんね。それでは最後に、今後の展望を教えてください。
加藤さん:パラリンピック選手をはじめ、日本のトップ選手に「DYNASTY ARCHERY」を使ってもらっていますが、今後は世界へも飛び出していきたいと考えています。そして、アーチェリーというスポーツを文化として、もっと日本に根付かせていけるよう頑張ります!
DYNASTY ARCHERY
新潟県三条市林町1-18-17 ヴィラ林2F
0256-46-0533