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「プランツギャザリング」の魅力を伝道する「green + flower MOMO」。

県内でも数少ない技能資格取得者が提案する「根っこの付いた花束」。

花束より長持ちし、生け花よりカジュアルで、寄せ植えより気軽でお洒落。花を贈ったり飾ったりする際、様々な面で“ちょうどいい”特徴を持つのが「プランツギャザリング」です。村上市街にある植物店「green + flower MOMO(モモ)」の店主・山口陽子さんは、そんなプランツギャザリングの技能資格を持った県内でも数少ない公認「ギャザリスト」のひとり。山口さんに、その魅力などについて伺いました。

 

 

green + flower MOMO

山口 陽子 Yoko Yamaguchi

1979年村上市生まれ。ホームセンターの園芸担当、苗物の仲卸会社を経て2016年春、地元に「green + flower MOMO」をオープン。「プランツギャザリング」の第一人者・青木英郎氏に師事し技能資格を取得。お店では花苗や観葉植物、多肉植物などを販売するほか、県内で十数人しかいない公認ギャザリストのひとりとして内外で講師としても活動している。店名の由来は実家の亡き愛犬。

 

長持ちする花束、贈れる寄せ植え…プランツギャザリングって?

――さっそくですが、プランツギャザリングってどんなものなんですか?

山口さん:ごく簡単に表現するなら、「根っこが付いた花束」のことです。根っこが付いたままの花や植物を、ギャザリングという言葉通り集め合わせて鉢に植えるんです。根も土もあるので、一般的な切り花の花束よりも美しさを長期間楽しめるのが特徴です。

 

――寄せ植えとはまた違うのですか?

山口さん:ギャザリングも寄せ植えの一種ではありますが、より単位が細かいというか、よりデザイン性が高いものといえるかもしれません。一般的な寄せ植えはあくまで苗のポット単位ですが、ギャザリングではポットを崩して株を分け、花束のようにデザインしてから植えなおす、という感じですね。例えば2ポット分のスペースがある鉢があったとすると、一般的な寄せ植えでは2つのポット苗をどう配置するかだけになりますが、ギャザリングでは5ポット分くらいの苗を使って鉢に入るユニットを再構築することになります。

 

――なるほど。いわば、デザインの解像度を高めた寄せ植え、ということですね。

山口さん:長持ちする花束、とか、外でも楽しめるフラワーアレンジメント、とか、花束と寄せ植えの中間、とか、いろんな言われ方をされています。愛知県の園芸家・青木英郎さんがパイオニアで、私も青木さんの教室に通って学びました。

 

たくさんの花に触れたことが、眠っていた創作意欲を刺激。

――そもそも、山口さんがこの道に進んだのは?やっぱり、子どもの頃の夢が「お花屋さん」だったりしたんですか?

山口さん:いえ、全然。正直、子どものころはほとんど興味がありませんでした(笑)。高校を卒業して入ったのも、会計の専門学校でしたし。それでホームセンターに事務職として就職したのですが、デスクワークよりも売り場の方で働きたくて。それでしばらくしてから園芸部門に回してもらったんですが、それが園芸を仕事にした最初ですね。

 

 

――そうなんですか、意外と遅かったんですね。

山口さん:携っているうちにだんだん花や植物が面白くなってきて、もっと勉強したいと思うようになり、山形にある花苗の仲卸会社に転職したんです。そこでギャザリングに出合いました。またその会社で、関東の花市場の方にも仕入れに行っていたんですけど、そこでそれまで見たことがなかった種類や色、咲き方の花にいっぱい触れることができたのも大きかったですね。なんというか…眠っていた創作意欲が刺激されたというか。自分が選んで仕入れたものをお客さんに気に入ってもらうっていう販売の醍醐味だけでなく、それを使って自分が作ったものをお客さんに喜んでもらいたい、っていう欲もだんだん出てきたんです。それで、青木さんの教室に通うようになりました。1年間毎月1回、車で山形から埼玉まで。

 

――それは地味に大変ですね。

山口さん:通うのは大変でしたけど、教室自体は本当に楽しかったです。やっぱり、自分の好きなことが学べるので。

 

驚きやワクワクを地元へ。見るだけでなくやる楽しさも。

――お店を開いたきっかけは?

山口さん:初めはマルシェにブースを出すところから始めたんですけど、実店舗はそこから発展したような感じで。さっき言ったような、あまり馴染みのない種類の花や植物、またギャザリングを、地元にも紹介したかったんです。「何これ、見たこともないけどステキ」っていう自分が感じたような驚きやワクワクを、地元の方々にも味わってもらいたかった、というと少し大げさかもしれませんが。ギャザリングは見て楽しむのはもちろん、実際にやるのも楽しいので、その楽しさも伝えられたらと、お店だけでなくいろんなところに出張して教室を開かせてもらったりもしています。

 

――村上以外でも?

山口さん:そうですね。県内のギャザリストは横のつながりが強くて、合同で教室を開いたりもしています。ギャザリスト仲間の石川じゅんこさん(新潟市中央区・グリーンプラザ フレンズ)、みずのともこさん(五泉市・お庭とお花 はなんぼ)、坂上久美子さん(新潟市・Atelier Mooi Bloem)、阿部紀子さん(柏崎市・FOUR SEASONS)たちといっしょに、「ギャザリングにいがた(Ganii)」という教室も定期的に開講しています。ひとりでも多くの方にギャザリング、園芸の楽しさを味わってもらえたらと思います。ただ、今回の新型コロナの影響で教室がなかなか開けなくなっちゃっているんですけどね…。

 

人が集まれないなら、せめて花を。雌伏を経て、さらに魅力を。

――…そうですね…。式典や歓送迎会の中止・縮小に伴う花業界への打撃もニュースでよく耳にしました。

山口さん:うちのお店自体はそれほど大きな影響があったわけではないのですが、この時期のために何ヶ月もかけて育ててきた生産農家の方々のことを思うと、とても切ないです。ぜひ鉢花ひとつでもおうちや職場に飾ってもらいたいですが、気軽に「買いに来て」とも言いにくい状況になってきてしまいましたし・・・。

 

――最後に今後の展望をお伺いするつもりだったのですが、これだけ先が見えない状況だと、お答えしづらいかもしれませんけども。

山口さん:そうですね、難しいです。でも、嘆いてばかりもいられません。こんな状況だからこそ、花や植物で心を潤してもらえればと思います。どうすればもっとギャザリングをプレゼントなどに使ってもらえるか、ギャザリングの魅力をより多くの方に知ってもらえるか、考える機会にしていきたいと思います。

 

――今日はありがとうございました。

 

(取材日:2020年4月18日)

 

 

green + flower MOMO

〒958-0871 村上市久保多町10-33

TEL&FAX 0254-75-5855

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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