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ガンジー牛乳のスイーツを通年で販売する、旧和島村の「加勢牧場」。

以前Thingsでご紹介した、県内で唯一ガンジー牛を育てている「加勢牧場」。3年前の取材時には専務をお務めだった加勢さんが、今年の春、代表職に就任されたというので改めてインタビューしてきました。今回は加勢さんに経営者としての失敗談やこの夏おすすめのアイスクリームについてなど、いろいろとお話を聞いてきました。

 

加勢牧場

加勢 健吾 Kengo Kase

1984年長岡市(旧和島村)生まれ。国士舘大学 体育学部を卒業後、会社員を経て家業である「加勢牧場」に入る。2023年に代表に就任。高校、大学時代はレスリングの選手としても活躍。

 

2代目に与えられた課題、「ガンジー牛でどうやって収益を上げるのか」。

——加勢さんは大学を卒業されて、最初は他の企業にお勤めされたんですね。

加勢さん:若い頃は父の仕事をよく思っていませんでした。家族旅行の経験もなかったですし、小学校の課外授業では自分の家である「加勢牧場」を見学して、友達にからかわれたりしました。酪農にはまったく興味がなかったので、大学卒業後はレスリングの先輩が勤めていた新潟の会社に就職したんです。

 

※加勢さんのお父さんが「加勢牧場」を創業。ご苦労の末、希少なガンジー牛を飼育されるまでに至ったストーリーは、前回掲載記事でご覧いただけます。

 

——それが、どうして家業に入ろうと思われたんでしょう?

加勢さん:勤めていた会社の方針で、最初の配属が実家から通える営業所だったんです。それで毎日、両親の仕事ぶりを間近で見ていまして。「いいものを生産してお客さまに喜んでもらおう」と全力で働く両親を尊敬するようになりました。小さい頃はあんなに「嫌だ」と思っていたのに、社会に出て見え方が変わったんですね。ひとりの男として誇りある仕事をしたいと思い、24歳で就農しました。

 

 

——お父さんは加勢さんを頼もしく思われたでしょうね。

加勢さん:父は家業を継がせるつもりはなかったみたいですけど、快諾してくれました。ただ「跡を継いでもいいけど、自分と同じやり方はするな」と言われましたね。労力の割に実入りが多くない、衰退産業だから、という理由でした。

 

——なるほど。決して楽な道ではないぞ、と……。

加勢さん:それで当時「6次産業化」が注目されつつあったので、ガンジー牛乳を使った加工品販売事業を大きくしようと考えました。ガンジー牛とホルスタイン種と両方飼育していたんですけど、経営を支えていたのはホルスタイン種の牛乳でした。いわゆる「普通の牛乳」です。ガンジー牛乳は評価されはいましたが、売上としては厳しくて。私が就農したときの課題は「どうしたらガンジー牛で収益を出せるのか」でした。

 

売れると判断して出店したジェラート専門店は、あえなく失敗。

——それで加勢さん、まずはどんな取り組みをされたんでしょう?

加勢さん:道の駅「良寛の里わしま」で販売していたガンジー牛のソフトクリームが評判だったので、「やっぱり加工品だな」と考えました。最初はチーズ作りにチャレンジして、いろいろな工房で勉強させてもらったんです。職人さんはチーズの面白さを熱く語ってくれましたけど、どの経営者も「チーズは商売としては難しい」「万人受けするソフトクリームやアイスクリームがいいんじゃないか」と言うんです。そのアドバイスをヒントに、道の駅で販売していたソフトクリームにさらに重点を置いて、自分たちで材料から作るなどして改良を進めました。

 

——ちょっと遠回りしたチーズ修業にヒントがあったんですね。

加勢さん:ソフトクリームやジェラートは利益を生みやすいと判断して、今から10数年前に、長岡の喜多町にジェラート専門店をオープンしました。「店を開けば売れるだろう」と浅はかでしたね。見事に空ぶってしまって……。お客さまに「また来たい」と思われなかったんですね。あの失敗は私の黒歴史です(苦笑)

 

——そうでしたか……。経営者のご苦労を感じます。

加勢さん:あのときは、人生で初めて本気で勉強しましたね。経営本に書いてある「やってはいけない」ことをしているし、「必ずやらないといけない」ことはしていない。無茶苦茶な経営をして大きな損失を出してしまったと痛感して。お店は閉じて生産工場だけを残し、その工場を拠点に卸業に力を入れて再挑戦しました。

 

 

——方針転換してからはどうだったんでしょう?

加勢さん:東京の百貨店さんとお取引いただこうと戦略的に動きました。そういった実績が地元でも注目されると思ったんです。運よく拾っていただいのは「高島屋」さん。「『高島屋』さんと共同開発した商品です」という看板があると、周りの見方が変わるんですよね。それまで見向きもされなかった道の駅での試食、試飲会では、商品を手に取ってくださる方が増えました。

 

——今では県内外で「加勢牧場」のスイーツが楽しめるお店がいくつもありますよね。

加勢さん:「加勢牧場わしま本店」がオープンしてから徐々にお取引が増えましたね。メディアの皆さんにもたくさん取材に来ていただきましたし、「新潟伊勢丹」さん内での出店なども決まりました。以前の苦い経験が今に生きていますかね(笑)

 

父の代からの誠実さと、通年で魅力あるスイーツを提供する新戦略。

——「加勢牧場」さんというと、ガンジー牛のソフトクリームのイメージでしたが、洋菓子も充実しているんですね。

加勢さん:実はスイーツ全般、生洋菓子をたくさん揃えているんですよ。喜多町のジェラート店では夏以外の集客が厳しく、ひどい目に遭いました。あのときの教訓を生かして、「夏はソフトクリーム、ついでにケーキ」「冬は洋菓子、ついでにジェラート」みたいに季節の切り替えができるかどうかで勝負が決まると思っています。「通年でお客さまに来ていただく」「通年で確実に売り上げを立てる」ことを目指しています。

 

——これまでのご経験があるからこそ、こんなに充実したラインナップなんですね。ところでガンジー牛乳を使ったスイーツは、どんな味わいなんでしょう?

加勢さん:我々は「農家」です。農家ですから素材を大切にします。なのでガンジー牛乳を生かす作り方をしているんですよ。ガンジー牛乳は、栄養価がとても高い。栄養が多く含まれていて濃厚なんだけどスッキリした飲み口が特長です。その素材を生かして、なるべく素朴に作る。とにかく牛乳の味をシンプルに味わってもらえるスイーツ作りをしています。特に定番商品のプリン、シュークリーム、ロールケーキはガンジー牛乳の味を楽しんでもらえると思います。

 

 

——加工品の製造量は、卸業をはじめられた頃と比較にならないほど多いと思います。ということはガンジー牛の頭数は増えているんでしょうか?

加勢さん:自然のものなのでガンジー牛は増えたり減ったりという状況です。頭数を確保するための工夫はしていますが、平均気温が高くなっている昨今、牛たちも疲弊しますし、順調に増えているとは言えません。これまでは積極的に販売促進をしてきましたが、今はそういう策はなるべく取らないようにしています。既存のお客さまと今ある店舗では絶対の品質を維持しつつ、新規のお取引はお断りしているんですよ。

 

——誠実にお仕事をされていることがよく分かりました。では最後に、数あるアイスクリームメニューからこの夏のおすすめを教えてください。

加勢さん:売れ筋はやっぱりミルクですね。個人的にはキャラメルナッツフレーバーが大好物。ここだけの話、原価がかかっているのはピスタチオです(笑)。8月末まで、アイスクリームをダブルでご注文いただくと、スモールサイズとさらにスプーン1杯、4つの味が楽しめる「ガンジートリプル大作戦」を開催していますので、ぜひ足を運んでいただきたいです。

 

 

 

加勢牧場わしま本店

〒949-4502 新潟県長岡市黒板615 いやしの郷内

0256-78-8866

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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