家族や友人には話しにくくても、互いによく知らない相手にだったら話しやすいことってありますよね。先月、新潟市中央区にオープンした「紅茶と日記」は、お客さんの心の声を聞くカフェを目指しています。美味しいフレーバーティーをいただきながら、店主のさいとうさんからお店づくりへの思いを聞いてきました。
紅茶と日記
さいとう まりこ Mariko Saito
1973年新潟市西蒲区(旧巻町)生まれ。新潟県内のレコード店、老舗菓子店で販売スタッフとしての経験を積み、雑貨店で店長を務める。2022年10月に新潟市中央区で「紅茶と日記」をオープン。音楽やアニメが好き。
——こちらは紅茶とお菓子が楽しめるカフェなんですよね。さいとうさんは昔から紅茶やお菓子作りが好きだったんですか?
さいとうさん:どちらも好きでしたけど、まさか自分でカフェをはじめて、紅茶やお菓子をお出しすることになるとは思ってもいませんでした(笑)
——そうだったんですね。じゃあ最初からカフェをやるつもりではなかったんですか?
さいとうさん:もともとありませんでした。音楽が好きで「ユニコーン」にどハマりしていたこともあって、音楽関係の仕事がしたかったんです。でも家の事情で上京することはできなかったので、新潟で音楽関係の仕事をしようと思ったんです。音楽イベントの会社で働くことも考えましたが、私は人と接する仕事がしたかったので、新潟市内のレコード店で働くことにしたんです。
——音楽が好きだったんですね。レコード店では、どのくらいの期間働いていたんでしょうか?
さいとうさん:4〜5年働いたんですけど、レコード店が入っていたファッションビルが倒産してしまったんです。それを機に、今度は老舗のお菓子屋さんで働くことになりました。
——あれ? だいぶ方向転換しましたね。
さいとうさん:なんだか急に「老舗」で働いてみたくなったんです。お菓子屋さんの仕事自体は楽しかったんですけど、忙しい日もあれば、あまり仕事がない日もありました。私は常に何かをしていたい方なので、もっと自分に合う職場はないか探していたときに「ラブラ万代」がオープンすることを知って、今度はそのテナントの雑貨店で店長として働かせてもらうことになったんです。
——最初から店長として就職するってすごいですね。
さいとうさん:でも、いろいろとメンタルをやられることもありました。あるとき、とことんメンタルを病んだことがあって、親友ふたりと飲みに出たものの、ひと口もお酒を飲まずにただ泣きながら話していたりして。帰る頃にはすっきりしていたんですが、あの頃は親友たちに会っていなかったら自分がどうなっていたのかわからないですね。それ以来、自分も人の悩みを聞いてあげられる人間になりたいと思うようになりました。
——店長って大変なんですね。でも、どうして雑貨店の店長からカフェのオーナーに?
さいとうさん:働いていた雑貨店が新潟から撤退することになったんです。そこで、今度は雇われるのではなく、自分が何かをやってみたいと思ったんですよね。そのときに思い出したのが「人の悩みを聞ける人間になりたい」という気持ちでした。いろいろな人が立ち寄って、嫌なことを落としていける場所を作りたい。そこで、気軽に立ち寄れるカフェをやろうと思いました。
——さいとうさんの住んでいる西蒲区ではなく、中央区の東万代町でオープンしたのはどうしてなんですか?
さいとうさん:いちばん大きい理由は「ラブラ万代」や「ビルボードプレイス」で働いているような、以前の自分と同じ境遇の人たちと話したかったんです。だから閉店後に立ち寄れるように、営業時間も21時までにしているんですよ。もっと遅くまでやりたいんだけど、私の住んでいる巻まで帰ることを考えるとギリギリの時間なんです(笑)。もちろん、それ以外のお客様も大歓迎です。
——いろんなお客さんが来てくれるようになるといいですね。ところで、紅茶はどんなものを揃えているんですか?
さいとうさん:茶葉本来の香りを楽しんでもらえる産地別の紅茶と、より香りを楽しむことができるフレーバーティーがあります。名前だけ見てもわからないと思うので、メニューではわかりやすく紅茶を紹介しています。その他にも茶葉のサンプルを用意しているので、香りを確かめてから選んでいただくこともできるんです。
——スイーツはどんなものがあるんでしょうか?
さいとうさん:できるだけカッコつけたくないので、私は「スイーツ」じゃなくて「おやつ」と呼んでいるんです(笑)。おやつは大きく分けてビスコーンとプリンの2種類。ビスコーンの材料には豆腐を使っています。
——豆腐を使ったビスコーンって珍しいですね。
さいとうさん:私は豆腐が大好きだからビスコーンにも使ってみました。使っているのも、私が好きな地元の老舗「平野屋豆腐店」の木綿豆腐なんですよ。豆腐を40パーセントも使っているから、とってもヘルシーです。40パーセントを超えると、「おやつ」じゃなくて「おかず」になってしまうので、これがお菓子としてのギリギリのラインなんです(笑)
——かなり豆腐にこだわったお菓子なんですね。プリンはどんな特徴があるんですか?
さいとうさん:ビスコーンに豆腐を使っているので、プリンには大豆つながりで豆乳を使っています。あと紅茶の店らしくチャイも使っているんです。メニュー名を「チャイプリン」にするとカッコよくなっちゃうから、「チャップリン」にかけて「チャイップリン」にしました(笑)。そうすることで、少しでも親近感を持ってもらえればと……。
——親父ギャグになりそうな、ギリギリのラインじゃないですか(笑)。ところで、お店に置かれている日記が気になるんですが……。
さいとうさん:その時々でいろいろな気持ちがあっても、人間ってすぐに忘れちゃうじゃないですか。でも書き残してあれば、読んで思い出すことができますよね。この店に来てくれたお客様にも、気持ちを書き残してほしかったので日記を置くことにしたんです。ちなみにNo.2には私の失敗談が書き連ねられています(笑)
——なんか、他とはいろいろと違うカフェですよね。
さいとうさん:私は紅茶やお菓子作りは素人同然かもしれませんけど、30年以上の経験を積んできた接客では他のカフェに負けないつもりです。親しい家族や友人には話せなくても、他人には話せることってあると思うんです。嫌なことだけじゃなく、嬉しいことでもなんでも「紅茶と日記」へ話しに来ていただけたら嬉しいですね。
紅茶と日記
新潟市中央区東万代町8-10
12:00-21:00
水曜休