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新潟の農家、酒蔵、生産者の魅力を伝えたい、日本料理「和食酒場 風花」。

美味しい新潟産の肉、魚、農産物に魅せられ、そうした食材を使った和食と美味しい日本酒を提供しているのが、新潟駅南口にある「和食酒場 風花(わしょくさかば かざはな)」です。和気あいあいとしたアットホームな雰囲気のなか、店主の長吉さんに、食材へのこだわりや生産者への愛を聞いてきました。

 

 

和食酒場 風花

長吉 和幸 Kazuyuki Nagayoshi

1979年五泉市(旧村松町)生まれ。新潟調理師専門学校で料理を学び、東京築地にある老舗料亭「新喜楽」や新潟古町の割烹「燈里屋」等での修業を経て、2014年に「和食酒場 風花」をオープン。趣味のサッカーはプレーするのも見るのも好き。

 

東京での修業時代に、新潟産食材の素晴らしさに気づく。

——長吉さんは早い頃から料理の仕事をされていたんですか?

長吉さん:そうですね。高校時代に地元の焼肉店でアルバイトしていて、飲食店の仕事を楽しいと感じていたんですよ。それで料理を作る仕事をしてみたいと思うようになって「新潟調理師専門学校」に入ったんですけど、ただそのときはまだ和食をやろうとは決めていなかったんです。

 

——和食をやろうと決めたのはどうしてなんですか?

長吉さん:最初は華やかに見える洋食の料理人に憧れていたんです。でもどの道に進むかは実際に現場で働いてみてから決めようと思って、和食、中華、イタリアンそれぞれのお店で働いてみました。そうしたら、いちばん魅力を感じたのが和食の料理だったんです。

 

——和食のどんなところに魅力を感じたんでしょう?

長吉さん:味噌汁ひとつとっても、出汁の取り方や使う素材で味がまったく変わってしまう、その繊細さに魅力を感じましたね。そこで東京築地にある「新喜楽」という老舗料亭で住み込み修業をすることにしたんです。

 

 

——老舗料亭だと修業も厳しそうですね。

長吉さん:築地市場の真ん前にあったので、朝は市場の活気ある物音で5時頃に目が覚めるんですよ。それから先輩より早くお店に出て、出汁を取るための鰹節をカンナで削ることから1日の仕事がはじまるんです。

 

——朝5時起きですか……やっぱり修業は厳しかったんですね。

長吉さん:でも僕が修業していたときは、どういうわけか先輩も後輩もみんな新潟出身者だったので、厳しさのなかにも和気あいあいとした一体感や楽しさがありましたね。最初は里芋の皮もいびつな形にしか剥けなかったんですけど、上達すると綺麗に剥けるようになるんです。そういったことを褒められるのが、ますます上達する励みになっていました。

 

——新潟に帰って来られたのはどうしてなんですか?

長吉さん:店の前に築地市場があるので仕入れや食材の勉強に通っていると、新潟産の食材をよく目にするんです。驚いたのは修業先の料亭で使っていたお米が、地元の友人の家で作っているお米だったんです(笑)。それで新潟産食材のクオリティが高いことに気づき、自分でお店をやるんだったら美味しい食材の揃っている新潟でやりたいと思うようになったんですよ。

 

 

——その頃から新潟産の食材に注目されていたんですね。

長吉さん:そうです。新潟の美味しい食材を使った和食を、気軽に楽しめるようなお店をやりたかったんです。でも「新喜楽」は格式ある老舗料亭で、料理も伝統的な日本料理ばかりだったので、ちょっとアレンジが入ったような創作料理も勉強したくて、その後、新潟の古町にある割烹や居酒屋グループで勉強させてもらいました。

 

——居酒屋グループでも働いていたんですか。

長吉さん:自分でお店をはじめるための勉強だったんですよ。料亭や割烹では料理人が接客する機会がなかったので、接客の勉強をしたかったんです。ついでにお店を立ち上げる経験もしておきたかったので、ちょうど新規オープンする居酒屋のオープニングスタッフとして働かせていただきました。

 

——そこでの経験は役に立ちました?

長吉さん:もちろんです。そのときのお客様が「和食酒場 風花」を利用してくださったり、同業者の居酒屋さんたちとつながったりできました。新潟の居酒屋業界ってみんな仲が良くって、お互いに協力しあって地元を盛り上げようとしているような空気感があるんです。僕もオープンからいろいろと助けていただいています。

 

生産者とお客様をつないで「いい三角形」を作るお店。

——「風花」という店名には、どんな意味があるんですか?

長吉さん:オープンする10年前に考えていた店名候補なんですけど、実は意味をよくわかっていなかったんです(笑)。改めて調べてみると、冬の晴れた日に降った雪が、日光にキラキラ輝く様子だと知ったんです。お店があるけやき通りは夜になると街の灯りがキラキラしているし、冬にはイルミネーションに彩られるので、この場所にぴったりな名前だと思いました。

 

——「風花」って、てっきり花の名前だと思っていました(笑)。やはり食材にこだわったお店なんですよね。

長吉さん:もちろんです。自分でお店をはじめてみると、生産者の皆様との付き合いが深まって「新潟産の美味しい生産物を使った和食」というコンセプトがより強くなっていきましたね。

 

——どんなふうに付き合いが深まっていったんですか?

長吉さん:生産者の方々から直接生産物へのこだわりを聞く機会が増えましたし、作っているところを見学に行ったりもしています。見学の機会をいただいた酒蔵へはスタッフたちと訪れて、製造を見学したり説明を聞いたりしてお酒への理解を深めています。そうすることでみんなが商品への愛情を感じますし、お客様に詳しく説明できるようになるんです。

 

 

——生産者の方々とも仲良くなれそうですね。

長吉さん:どの生産者もこだわりや信念を持っているので、なかなかひとつに絞ることができないんですよ。仲良くなった酒蔵さんとコラボして、オリジナルの日本酒を作る話もあるんです。

 

——どんなお酒なのか、ちょっと気になります。

長吉さん:妙高市にある「千代の光酒造」さんと「風光明媚」という日本酒を作っているんです。うちの料理に合うよう開発されているので、和食と一緒に楽しむにはぴったりのお酒になっています。「風花」の「風」と「千代の光」の「光」をとって、「素晴らしい自然のなかで育まれたお酒」という意味を込めて名付けました。

 

——オリジナルのお酒まで作っちゃうって、こだわりが半端ないですね(笑)

長吉さん:「新潟漆器」さんでカスタムメイドしていただいた器も使っているんですよ。食材だけじゃなく、食器にも新潟産の製品を使っていきたいと思っているんです。お猪口は燕の「鎚起銅器」、お皿には「安田瓦」を使っています。

 

 

——自分のお店だけじゃなくって、みんなで新潟を盛り上げていこうという思いを感じますね。

長吉さん:そうかもしれませんね。お店でも代表の僕だけがお客様に覚えてもらえるのではなく、スタッフみんなが顔や名前を覚えてもらえる方が嬉しいんですよ。ワントップのお店ではなく「みんなでお店をやっている」というチーム感を大切にしたいんです。

 

——そんなアットホームな雰囲気は、取材をしていても感じました。

長吉さん:そう言っていただけると嬉しいですね。来年はうちのお店も10周年を迎えるので、コロナ禍でお休みしていた「風花会」というイベントを復活させたいと思っているんです。酒蔵の方をお店に招いて、オススメのお酒とうちの料理を楽しんでいただくイベントなんですよ。

 

——日本酒好きや和食好きには、たまらないイベントですね。

長吉さん:「風花」を通してお客様と酒蔵をつなぐことで「いい三角形」を作っていけたらと思っています。酒蔵さんに限らず、いろいろな農家や生産者とお客様をつないでいけるお店でありたいですね。

 

 

 

和食酒場 風花

新潟市中央区米山2-7-20 ITPケヤキビル2

025-245-8650

11:30-14:00/17:30-23:00(日曜は17:00-23:00)

不定休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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