町屋の趣に浸りながら抹茶を味わえる老舗茶舗「九重園」。
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2023.04.11
村上市に春の訪れを告げるイベント「城下町村上 町屋の人形さま巡り」。そのなかでも特に見応えがあるのが、老舗茶舗「九重園(ここのえん)」の雛人形です。歴史ある雛人形が座敷を埋め尽くす様は圧巻としかいいようがありません。そんな「九重園」さんを訪ねて、店主の瀧波さんからお店の歴史やお茶についてのお話を聞いてきました。


株式会社 九重園
瀧波 匡子 Kyoko Takinami
1956年村上市生まれ。証券会社や免許センターで働いた後、1992年より「九重園」に就業。2014年に9代目店主を継承する。茶道やピアノ(主にクラシック)が趣味。
村上藩から緑茶づくりを命じられた茶舗。
——それにしても立派な雛人形ですよね。かなり古いものなんでしょうか。
瀧波さん:ありがとうございます。村上藩のお殿様から拝領した江戸時代の雛人形や、大名行列人形、浦島太郎の武田人形があります。お人形だけじゃなくって、槍や弓といった貴重な武具も飾っているんです。

——この雛人形って、お殿様からいただいたものなんですか。それはすごい。
瀧波さん:もともと初代瀧波重兵衛(たきなみじゅうべい)は文化文政の頃に、鍋や釜、瀬戸物を扱う商いの傍でお茶の栽培をやっていたんです。二代目重兵衛のときに村上藩のお殿様から直々に緑茶づくりを命じられ、それからは250年にわたって続いてきました。
——とても由緒あるお茶屋さんなんですね。当時から栽培だけでなくお茶づくりもやっていたんですか?
瀧波さん:当時の町人は高級品の緑茶なんて飲んでいなかったので、製法を知らなかったんです。そこで宇治から柳田九兵衛(やなぎだきゅうべい)という職人を招いて、3年間かけて製法を教えてもらいました。その後も毎年お弟子さんを派遣しては指導してくれたそうです。そのご恩に感謝して「九兵衛」から「九」の字をいただき、主の「重兵衛」から「重」の字を取って合わせ「九重園」と名付けたと伝わっています。
——もしかして、カフェの「町家Cafe九兵衛庵(くへいあん)」っていう名前も、柳田九兵衛さんに由来しているんですか?
瀧波さん:はい、「第1回 城下町村上 町屋の人形さま巡り」のときに、お客様をおもてなしするためにご用意したお茶席が好評だったので「町家Cafe九兵衛庵」として続けることにしたんです。歴史ある町屋のなかでお庭を眺めながら、ゆったりとしたひとときを過ごしていただけると思います。

雪の下で滋味を蓄えた、柔らかな味わいのお茶。
——村上茶にはどんな特徴があるんでしょうか。
瀧波さん:村上は「北限の茶処」なので、温暖な他の産地とは違って茶畑に雪が積もるんですよ。その間、お茶は雪の下で眠りながら栄養を蓄えるんです。日照時間も短いので、柔らかい味わいのお茶になります。
——なるほど。製法のこだわりはありますか。
瀧波さん:5月中旬から茶摘みをはじめるんですけど、摘んだ茶葉は新鮮さを逃さないよう、その日のうちに仕上げるように心がけています。

——そうしたこだわりで作ったお茶のなかで、おすすめしたい銘柄はありますか?
瀧波さん:「舞鶴(まいづる)」という煎茶ですね。「舞鶴城」と呼ばれる村上藩のお城から名付けたもので、公認の茶舗だからこそ許された証なんです。その名にふさわしく、飲んだ後に上品な味わいや香りの余韻が残るお茶になっています。
——より美味しくお茶を楽しむコツがあったら、ぜひ教えてください。
瀧波さん:お湯の温度でお茶の味わいは変わってきます。熱いお湯で茶葉を一気に開かせると、苦味が出て殺菌作用が強くなるので、風邪をひいたときに適した飲み方になると思います。ぬるめのお湯でゆっくりと茶葉を開かせると、うま味が強いお茶を楽しむことができます。

——淹れ方によっても味わいの違いを楽しめるんですね。
瀧波さん:ペットボトルのお茶はいつでもすぐに飲めて便利ですけど、お茶を淹れるひとときも楽しんでいただけたらなって思いますね。自分で淹れたお茶は、きっと美味しいと思いますよ。
——淹れることがお茶の楽しみでもあるんですね。ところで「九重園」さんのお茶って、お菓子の原料としても使われているんですよね。
瀧波さん:ありがたいことにいろいろなところからお声掛けしてもらって、「さかたや」さんの抹茶最中や「丸屋本店」さんのかき氷、「おかじ」さんのほうじ茶アイスに使っていただいていますね。「おかじ」さんのほうじ茶アイスを試しにいただいてみたら、あんまり美味しかったので当店でも置かせていただくことにしました(笑)

お客様の心に残るお店であり続けたい。
——村上市は観光地でもあるだけに、市外から訪れる観光客も多いんじゃないですか?
瀧波さん:観光で来られるお客様も多いので、当店が心に残る旅の思い出になってくれたら嬉しいですね。そのためにも「あのお店に行ってみてよかった」と喜んでもらえるように、ひとりひとりのお客様を大切におもてなししています。当たり前のことなんですけど、やってみると奥が深くてなかなか難しいことなんですよ。
——「九重園」さんの接客を見ていると、温かみを感じますね。
瀧波さん:ありがとうございます。お客様はもちろん、お店を通してつながるご縁に感謝しながら営業しています。世の中はどんどん変わっていきますけど、いつまでも変わらずに「また行ってみたい」と思っていただける場所であり続けたいです。

九重園
村上市小国町3-16
0254-52-2036
8:30-17:30
元日
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