小針十字路の坂を少し下ると、右に曲がってすぐのところに「くずし割烹 涼鈴(すずり)」という真っ白な暖簾を掲げたお店があります。暖簾をくぐって入った店内は、割烹というよりも落ち着いた雰囲気の創作居酒屋といった印象。見た目はちょっといかついけど気さくな店主の荒木さんに、料理やお店についてのこだわりを聞いてきました。
くずし割烹 涼鈴
荒木 善行 Yoshiyuki Araki
1988年新潟市秋葉区生まれ。東京の「服部栄養専門学校」で料理を学び、新潟に戻ってホテル、小料理屋、結婚式場、炭火焼居酒屋で経験を積む。2024年に独立し新潟市西区で「くずし割烹 涼鈴」をオープン。日本酒やワインをゆっくり楽しむことが好き。
——今日はよろしくお願いします。
荒木さん:こちらこそ、よろしくお願いします。実は取材依頼の連絡をもらった前の日に、たまたま仲間と「Things」に取り上げてほしいって会話をしていたんですよ(笑)
——おっと! それはなんて運命的な(笑)
荒木さん:だから、とても楽しみにしていました。
——じゃあ、遠慮なくいろいろお聞きしたいと思います(笑)。まず、荒木さんが料理人になろうと思ったきっかけを教えてください。
荒木さん:中学生のときにテレビで見ていた「料理の鉄人」というバラエティ番組がきっかけですね。僕はその番組で「和の鉄人」と呼ばれていた道場六三郎さんに憧れて料理人を目指したんです。
——「料理の鉄人」の影響で料理の道に進んだ人、私が今まで取材したなかにも何人かいました(笑)
荒木さん:僕もそのひとりです(笑)。東京の「服部栄養専門学校」で料理の勉強をして、新潟のホテルで調理の仕事に就きました。それまでは料理の仕事に対する華やかなイメージしかなかったんですけど、実際に働いてみると厳しい現実を突きつけられましたね。何度辞めようと思ったかわかりません(笑)
——でも辞めずに続けられたんですね。
荒木さん:自分の技術が日に日に上達していくことがわかって、楽しくなっていったんです。学ぶことも多くて勉強になったので、辞めずに続けてよかったと思っていますね。料理の技術はもちろんですけど、料理人としての姿勢を学ばせてもらいました。
——ホテルではどれくらいの期間働いていたんですか?
荒木さん:3年勤めました。その後は小料理屋、結婚式場、炭火焼居酒屋で経験を重ねて、和食だけではなく中華やフレンチも勉強することができたので、自分の店をやっていく上で役立っています。
——どんな経験も無駄にはならないんですね。独立は以前から考えていたんでしょうか。
荒木さん:勤めていた店との考え方の違いなんかもあったから、自分の思うままに店をやってみたいという気持ちが強かったんですけど、コロナ禍もあってタイミングを逃してきたんですよ。
——荒木さんはどんなお店をやりたかったんですか?
荒木さん:お客様ひとりひとりの顔を見ながら料理が作れて、割烹の料理をカジュアルに楽しんでいただけるような店にしたかったんです。この物件は駅からも近いし、広さもちょうどよかったので理想的でしたね。
——こちらのお店でオススメの料理があったら教えてください。
荒木さん:「牛もつ豆腐」は毎日休みなく継ぎ足しながら火入れをしている料理ですので、ぜひ召し上がっていただきたいですね。あと「玉子焼き」はご注文いただいてから作るので、いつでも熱々でふわふわな食感を楽しんでいただけます。
——お話を聞いただけでも食べてみたくなります(笑)。お品書きを見ていると、珍しい日本酒がたくさんありますね。
荒木さん:新潟には美味しい地酒がたくさんありますけど、全国にもまだまだ美味しい日本酒がたくさんあるので、いろいろなお酒を試していただきたいんですよね。料理に使う食材も同じで、特に新潟県産品にはこだわっていないんです。そのときどきの旬な美味しい食材を、県内外にこだわらず使うようにしています。
——では、料理を作る上でこだわっていることはありますか?
荒木さん:今までの料理経験を生かして、お客様に寄り添った料理を作りたいと思っています。
——というと?
荒木さん:うちの店にはコース料理のお品書きがないんですよ。ご予約をいただくときは、料理の好み、年齢層、アレルギーの有無をお聞きして、仕入れた食材や気候に合わせた料理をお出しするようにしています。
——その日仕入れた食材で作るというのはわかるんですけど、気候に合わせた料理というのはどういうことでしょう?
荒木さん:例えば牡蠣があったとして、最初は牡蠣酢にしようと思っていても、気温が低くてお客様が寒そうにしていたら牡蠣のおでんに変えたりするんです。お客様が飲んでいるお酒に合わせた料理を作ることも多いですよ。
——それが「お客様に寄り添った料理」なんですね。
荒木さん:どうしたらお客様に喜んでいただけるかを考えた、ライブ感のある料理を大事にしています。
——自分のお店をオープンしてみて、どんなことを感じますか?
荒木さん:お店の経営やスタッフの管理というように、料理以外にもやることが増えたのは大変ですけど、それも含めてすべてを自分の責任でやれるのは楽しく感じてもいます。何より常連のお客様をはじめとして、いろいろな人との出会いが増えたのが嬉しいですね。
——もう常連のお客さんがいるんですね。
荒木さん:ありがたいことですよね。SNSやチラシを使って一生懸命集客することも必要だとは思うんですけど、僕はその前に料理のクオリティを上げることが大切だと思っているんです。料理の味やお店の雰囲気がクチコミで伝わって、お客様が来てくれることの方が嬉しいんですよね。
——確かにクチコミで広がる方が嬉しいかもしれませんね。お店の雰囲気作りで意識していることはあるんでしょうか?
荒木さん:時間制限は設けていませんので、心ゆくまでゆったりと過ごしていただきたいと思っています。もちろん他のお客様の迷惑にならなければ、わいわいと楽しく過ごしていただいても構いません。
——では最後に、これからやってみたいことがあったら教えてください。
荒木さん:自分の好きな音楽やファッションを、料理と絡めたようなイベントができたらいいなと思っています。とにかく地元を大切にしながら、常にワクワクできるようなことを考えていきたいですね。
くずし割烹 涼鈴
新潟市西区小針が丘1-51 山新ビル
025-378-3496
17:00-23:00
日水曜休