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親向け企業説明会に保育園留学。南魚沼市の移住、定住への取り組み。

南魚沼市が発行している、移住定住促進ライフスタイルマガジン『ねっこ』。南魚沼市に移り住んだ人のインタビュー記事などが載っているこの冊子が気になって市役所に訊ねると、他にも移住・定住に向けたいろいろな取り組みを行っているのだそう。今回は南魚沼市役所の風間さんと移住コンシェルジュとして移住希望者の相談窓口を担当している「(一社)南魚沼市まちづくり推進機構」の刈谷さんに、いろいろとお話を聞いてきました。

 

南魚沼市役所

風間 佳世 Kayo Kazama

1991年南魚沼市生まれ。新潟大学卒業後、南魚沼市役所に入職。育休・産休期間も含め、2018年より総務部U&Iときめき課に所属。地元のおすすめスポットは、旧塩沢町の牧之通り。公園や広い道路が、子どもを連れて遊びに行くのにぴったりなのだそう。

 

(一社)南魚沼市まちづくり推進機構

刈谷 隆宏 Takahiro Kariya

1990年三条市生まれ。大東文化大学卒業後、関東で広告営業を経験。25歳のときに三条市に戻り、地元法人に就職。35歳で「(一社)南魚沼市まちづくり推進機構」に転職。4歳と2歳のパパ。季節の移り変わりを感しながら、子どもと一緒に駅やスーパー、公園まで歩くのが好き。

刻々と姿を変える、南魚沼。

――おふたりはどんなふうに南魚沼市の移住、定住に関わっているんでしょう?

風間さん:私が所属している南魚沼市役所「総務部U&Iときめき課」は、移住、定住、地域づくり、ふるさと納税を担当している部署です。私は広報業務もしていて、移住定住促進ライフスタイルマガジン『ねっこ』の制作などにも関わっています。移住、定住に向けた取り組みは、すぐに結果が出るものではないんですよね。長い目で見て、最終的に移住につながるような政策をしています。

 

刈谷さん:私は南魚沼市への移住、定住を支援する「(一社)南魚沼市まちづくり推進機構」で、コンシェルジュ業務をしています。住まい探し、仕事探し、各種補助金の案内など、移住する前後の一連をサポートしています。わかりやすく言うと、移住者、定住者の「相談窓口」ですね。

 

――気になったんですけど、コロナ禍の前後で地方への移住に変化はあったんでしょうか?

風間さん:コロナ禍以前は、どちらかというとクオリティ・オブ・ライフの向上を目的に移住を検討されている方が多かったように思います。コロナ禍を経て、感染症拡大や災害を考慮した上で移住を考える傾向が強くなった印象があります。各地からオンラインでつながりやすくなった分、地方に目をむける方が増えてきたんじゃないかなと思いますよ。

 

 

――おふたりとも、子育て真っ只中でいらっしゃいますよね。南魚沼での子育てで、魅力に思うことってありますか?

刈谷さん:私の地元(三条市)よりも、自然までの距離を近く感じるんですよね。子どもと家のまわりを歩くだけで、たくさん発見があります。今の時期は、つくしやタンポポが顔を出したことや田んぼの変化に気づくんですよ。子どもには「なるべくいろいろなことを体験させたい」と思っています。南魚沼市では、お金をかけずに、いつもの場所でいろいろな自然の「体験」ができるんですよね。

 

風間さん:南魚沼市のセールスポイントは、ふたつあると思っています。ひとつは関東に近いところ。交通の便がいいので、車でも新幹線でも東京まで日帰りできる気軽さがあるんですよね。それともうひとつは、「自然の色が濃い」ところ。

 

――自然の色が濃い?

風間さん:春先、田んぼの水鏡に山が映りはじめたと思ったら、その田んぼはだんだんと力強い緑色になって、稲刈りの時期には黄金色に変化します。冬、晴れた日の夜空は真っ黒。月が出ていると、黒と白のコントラストがとてもきれいで。「どこを見ても絶景だな」と思える風景が身近にあるんです。職場の人ともよく話すんですよ。「南魚沼は四季だけじゃ足りない。間違いなく二十四節気あるよね」って。子どもには、こういう自然に存分に触れさせたいと思っています。

 

地域に触れる、もっと知ることが移住、定住のヒントに。

――移住について、南魚沼市の現状はどうなんでしょう?

風間さん:刈谷さんに「移住コンシェルジュ」をお任せした一昨年から、おかげさまで確実に実績は上がっていると思います。

 

刈谷さん:ありがとうございます。でも、わざわざ褒めなくていいですよ(笑)

 

風間さん:本当ですよ(笑)。以前は移住後のフォローをきめ細やかにできていませんでしたから。今は、「(一社)南魚沼市まちづくり推進機構」に中心になってもらい、毎月移住者が集うランチ会を開催していますよね。私、育休を取得していたときに「同じ境遇の人と話す機会がなかなかないな」と感じていたんです。こういうランチ会のような場所があると、移住者の方同士、気軽に相談しあったり、情報交換したりできますよね。

 

――風間さんは広報の役割も担われていて、『ねっこ』という冊子を制作されていますよね。

風間さん:もう10年以上前になりますが、人口減少を解決するため、若手職員が意見を出し合うプロジェクトがありました。そこで誕生したのが『ねっこ』の前身となる媒体です。U・Iターンした方が市内でどのように暮らしていて、行政にはどんな制度があるのか。それを定期的に発信していこうという試みです。その冊子が10周年を迎えるタイミングでリニューアルしたのが、南魚沼市移住定住促進ライフスタイルマガジン『ねっこ』です。「ねっこ』は方言で、「側に」という意味があります。「あなたの側にいます」と「南魚沼市に根をはって」のふたつの意味があるんですよ。

 

 

——他にもいろいろな取り組みがあると思います。ひとつ具体例を教えてください。

風間さん:南魚沼らしい取り組みですと、「保育園留学®︎」がありますね。親御さんは古民家をリノベーションしたゲストハウスで過ごしながらテレワークができます。そして、旧塩沢町の金城幼稚園にお子さんを預けることができるんです。そこではカエル探しをしたり野菜の収穫をしたり、きっといつもの暮らしとは違う暮らしを体験していただけると思いますよ。

 

——「(一社)南魚沼市まちづくり推進機構」さんの取り組みも、ぜひご紹介ください。

刈谷さん:定住へ向けた試みとして、親御さんが地元企業を知るための「おしごとマルシェ」というイベントを実施しています。親が地元にどんな会社、働き方があるかを理解すれば、子どもが進路で悩んだときに何かしらのヒントを与えることができると思うんです。それによって、この地域で就職する若者が増やせるかもしれません。

 

——親向けの企業説明会ですか。

刈谷さん:親世代が地元企業を知るって、とてもいいことですよね。子どもが進路に迷ったときには、親のアドバイスが助けになることがありますから。今年の1月、初めて「おしごとマルシェ」を開催し、約90名の親御さんに来場いただきました。「地元企業を知りたいとずっと思っていた」「こういうイベントを待っていた」という声もいただくことができて、改めてこのイベントの意義を感じました。

 

誰かの「住みたい」を、地域全体が応援できたら。

――おふたりが今のお仕事で普段どんなことを感じているのか知りたいです。

刈谷さん:移住の相談を受けていると、「10人いれば10通りの考え方や置かれている状況があるんだよな」と痛感します。だからこそ「たくさんの引き出しを持っていないといけない」といつも思うんです。行政はもちろん、(一社)南魚沼市まちづくり推進機構の他部署の担当、地元の企業さんなどとのつながりをもっと強くしていこうと思っています。

 

風間さん:確かに、その意識は大切ですよね。移住の相談を受ける度に感じるのは、私たちは「移住後の暮らしに関わるすべてのことを把握していないといけないよね」ってこと。仕事探しや起業支援制度、子育て環境に医療体制、観光にまつわることも。なので、ものすごい理想を掲げると、南魚沼市全体で「ここに住みたい」という人を応援できる体制を整えられたらいいのにって思うんです。

 

 

 

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