
お年寄りや仕事をしながら子育てしているママにとって、お惣菜屋さんは強い味方ですよね。特にスーパーやコンビニが近くにない地域ではなおのこと。五泉市で140年近く続いてきた「木村建設株式会社」が、JR北五泉駅前に「まちのお惣菜屋さん mokmög(モックモグ)」をオープンしたのにも、困っている地元の人達を支えたいという思いがありました。


木村建設株式会社
木村 地与仁 Chiyomi Kimura
1964年五泉市生まれ。1994年より「木村建設株式会社」で働きはじめ、現在は5代目代表取締役を務める。2025年に「まちのお惣菜屋さん mokmög」をオープン。昔から動物好きで、現在はトイプードルと暮らしている。
——木村さんは建設会社の社長なんですよね。
木村さん:はい、五泉市で140年近く続いてきた家業の「木村建設株式会社」を引き継いで、5代目代表取締役を務めています。もともと建設会社を引き継ぐつもりはなくて、専業主婦になることが夢だったんですよ(笑)。でも税理事務所で働いていたとき、「木村建設株式会社」から宅地建物取引士の資格を持っている社員が退職してしまったので、その資格を持っていた私が家業を手伝うことになったんです。
——税理事務所から建設会社に転職してみて、いかがでした?
木村さん:最初は不動産業に携わっていたんですけど、建築に興味を持ちはじめ、働きながら学校に通って建築士の資格も取りました。父が体調を崩してしまったのもあり、存命中に少しでも多くのスキルを身につけようと思って、公共工事の現場を学んだり、設計事務所で図面の引き方を覚えたりしました。

——それは大変でしたね……。
木村さん:でもそれはまだ序の口で、父の体調が悪化した時期に子どもが生まれて、おまけにバブル経済の崩壊による不景気も重なったことで、本当に大変な思いをしながら会社を支えることになってしまったんです。当時は銀行や下請け業者の皆さんをはじめ、周囲の方々からお力添えをいただけたおかげで、何とか会社を存続させるができました。皆様には本当に感謝しています。
——木村さんが会社を引き継いでから、何か大きく変えたことはありますか?
木村さん:女性ひとりでも気軽に入りやすくしたかったので、不動産会社や建設会社のイメージを明るく親しみやすいものにするために、女性スタッフの人数を増やしました。子育てや介護を経験してきた女性スタッフの目線が、住宅建築を考える上で必要だとも思ったんです。
——なるほど。
木村さん:大手ハウスメーカーがどんどん進出してくるなかで、どうしたら地元の工務店が太刀打ちできるのかを考えたとき、大手ではできないことを見つけて伸ばしていくしかないと思いました。それが「お客様に寄り添うこと」だったんです。家を買うとなれば資金面での心配も大きいと思いますが、その段階から相談にのってきました。税理事務所で働いていた経験が役に立っているので、人生で無駄なことは何ひとつないんだなと思っています(笑)

——そんな「木村建設株式会社」が「まちのお惣菜屋さんmokmög」をオープンしたのはどうしてなんですか?
木村さん:弊社が140年近く五泉で営業を続けてこられたのも、地元の皆様に支えていただけたからだと思うんです。 地方が少子高齢化、 人口減少と疲弊していくなかで、地元を活気づけたい、行政ばかりに求めるのではなく企業側も何か努力しなくちゃいけない、こんなときこそ「つながる」ことが大切だと、社員とも話し合いを続けて、 私達は「住」+「食」でつながろうと考えました。 その想いをかたちにするために、地元への恩返しとしてお惣菜屋さんをオープンすることにしたんです。
——どんなお惣菜屋さんを目指したのでしょう。
木村さん:人が幸せな生活を送る上で「心身の健康」「最低限の生活費」「自分の時間」「家族や友人」の四つが必要だと考えていまして、その四つを満たせるものがお惣菜屋さんだと思いました。仕事帰りのママさんが夕飯のお惣菜を一品買うことで、家族と触れ合ったり自分の楽しみに使ったりする時間がつくれるんです。そんな思いをロゴマークにある四葉のクローバーで表しました。

——ロゴマークには、四葉のクローバー以外にもいろんな食材が入っていますね。
木村さん:ひとつのボウルに五泉を代表する食材が詰め込まれています。私はお休みのたびに生産者の元を訪ねて、つくってほしい食材をリクエストしているんです(笑)。お惣菜やお弁当以外に食材の販売をすることもあって、ちょっと珍しいモロッコインゲンや白いカボチャなんかが店に並ぶことがあります。
——そうした地元食材を使ってつくるお惣菜には、どんなお料理があるんですか?
木村さん:昔ながらのスタンダードなお惣菜の他に、キッシュやキンパといったちょっと珍しいお惣菜もご用意しています。食べたいけど自分でつくるには手間がかかるお料理を、簡単に楽しんでいただけます。

——調理する上で、こだわっていることがあったら教えてください。
木村さん:スタッフ全員が調理師免許を持っていて、そのうちのひとりは栄養士ですので、栄養バランスが考えられているお惣菜なんです。地場産の安心安全な食材を使いながら、つくりたてのお惣菜やお弁当をご提供しています。
——そうしたお料理を自宅で食べられるのは嬉しいですね。
木村さん:この辺りは駅前なのにスーパーもコンビニもなくて、遠くまで買い物に行かなければならないんですよ。その上、高齢者や子育て世代、シングルマザーも多く住んでいるので、そうした方々の生活を支えていきたいと思っています。

——シングルマザーもたくさん住んでいるんですか?
木村さん:地元の方々からいろんな相談を受けることが多くて、シングルマザーの方にアパートをお世話することもあるんです。「他人事は自分事」という言葉があるように、困っている人がいたら自分に置き換えて考えるようにしています。そうした問題を解決する方法のなかに、お仕事につながるヒントがあることも多いんです。
——地元の方たちとの絆を感じます。今後はどんなことに力を入れていきたいですか?
木村さん:徒歩10分圏内に保育園や学校があるので、2階につくる予定のイートインスペースを利用してサブスクの「見守り食堂」をはじめたいんです。学校帰りの子ども達はもちろん、お年寄りもご飯を食べながら交流できる場所を設けたいと考えています。

まちのお惣菜屋さんmokmög
五泉市北五泉駅前2-5 ファミール西屋3号棟
070-9348-9954
11:30-19:00
月曜休