60年以上だしの研究を続けている株式会社フタバが展開するブランド「ON THE UMAMI」。今年10月、その世界観を体感できるカフェやショップ、イベントスペースなどが入った「ON THE UMAMI TSUBAME SANJO PORT」が三条市にオープンしたそうです。経営企画室の井上さんとカフェ店長の笹川さんにお話を聞いてきました。
株式会社フタバ
井上 佳美 Yoshimi Inoue
三条市生まれ。20年ほど前に株式会社フタバに就職。「ON THE UMAMI」のブランド立ち上げ時から携わり、現在はECサイトや店舗展開などブランド全体に関わっている。
umamito cafe
笹川 聖子 Seiko Sasagawa
「ON THE UMAMI TSUBAME SANJO PORT」の店長。メニューの中ではランチに付いてくる茶碗蒸しが好き。
――まずはブランド「ON THE UMAMI」について教えてください。ブランドを立ち上げられたのはいつですか?
井上さん:2017年です。それまでは業務用のだしを製造して、全国の飲食店、ホテル、旅館、病院や学校給食などに卸していました。
――それからどんな経緯で一般の方向けの商品を作ることに?
井上さん:私たちが扱っているのは業務用なので、本社がある三条の地域のお客様にさえも「フタバさんって何屋さん?」って言われるような、一般の方たちにはぜんぜん触れてもらえないところで商品が動いている状態だったんです。そこで今の社長が「もっと広くだしの魅了を知ってもらおう」ということで作ることになりました。
――なるほど。これまで培ってきたノウハウもあるわけですしね。
井上さん:それに業務用のだしとなると、問屋さんから飲食店さんに商品を持っていってもらうことが多いんです。だしを使っている飲食店さんはいろんなことを感じると思うんですけど、その声がなかなか会社のスタッフまで届かないっていうことがあって……。
――ふむふむ。
井上さん:それなら一般の方たちにも商品を販売して、購入した方からの声や意見を作っている会社の人たちにも届けていったほうが働きやすくなるんじゃないかっていう話になったんです。それで、ご家庭用にだしパックを作り出しました。
――どんなことにこだわって商品を展開されているんでしょうか。
井上さん:「だし」っていうところにはこだわらずに、「素材のうまみ」っていうところに着目して、そのうまみをどうやって上手に引き出して商品にしていくかに重点を置いています。例えばだしパックでも昔ながらのカツオと昆布のだしもあれば、トマトのだしなど、新しい素材のだしもあります。
――へ~、トマトのだしって珍しいですね。
井上さん:素材にはみんなうまみがあるんです。料理の仕方とか、食事をする楽しみとか、そういうライフスタイルの提案ができていくといいなっていうのがブランドのはじまりであり、私たちのテーマでもあります。
――今回、ショップの他にカフェやイベントスペースもはじめられたのはどうしてですか?
井上さん:ブランドをもっと広く知っていただくためではあるんですけど、それだけではなくて。外食っていうと、わりと濃いめの味付けのものを食べることが多いと思うんです。そういうのもいいんですけど、ちょっと健康的で、お野菜が食べられて、だしもしっかりきいている優しい味わいのお料理をお客様に食べていただきたかったんです。
――だしの美味しさを知ってもらうのにカフェはいいきっかけになりそうですね。
井上さん:あとは「ここから燕三条のいいところを発信したい」っていうのもテーマになっていて、メニューには下田産のお米だったり、ツバメファームさんのアスタ卵だったりを使わせていただいています。そういう地元の業者さんともつながりを持って、それをひとつの御膳にして発信していきたいです。
――カフェのメニューについて、店長の笹川さんにもお話を聞きたいと思います。おすすめはありますか?
笹川さん:ランチでおすすめしているのは「umamito御膳」です。「ON THE UMAMI」のだしパックを使って、毎日味見をしながら作っています。いろいろなものをちょっとずつ食べたいっていう方にも喜んでいただけるのかなと。あと「だし屋のごはんセット」はご注文いただいてからかつお節を削ってお出ししていて、他ではなかなか食べられないメニューだと思います。
――だし屋さんならではのランチですね。イベントスペースはどのように活用される予定なんでしょうか。
井上さん:オリジナルのだしパックづくり体験や料理教室などを予定しています。工場の祭典のときは削り器でかつお節を一本削ってもらう体験会を開きました。そういう他ではあまりできないことをうちらしく発信していきたいなと思っています。
――気になっていたんですけど、建物のお隣にあるハウスは何に使われているんですか?
井上さん:「アクアポニックス」っていう循環型の農業です。建物自体は4月に完成して、最近野菜が採れるようになりました。
――「アクアポニックス」というのは?
井上さん:中に入るとチョウザメが泳いでいる水槽があって、赤ちゃんも含めて800匹くらいいるのかな。そのフンをバクテリアが栄養分に分解して、葉物野菜に栄養がいって、またそのお水がサメの水槽に入るっていうふうに循環する仕組みの農業なんです。採れた野菜はカフェで出しているんですよ。
――井上さんはブランドの立ち上げ時から「ON THE UMAMI」に関わられていたんですか?
井上さん:そうです。フタバには入社して20年ぐらいになります。今は「ON THE UMAMI」のブランド全体を見ておりまして、ECから店舗展開までいろいろ関わっていますね。
――もともと食品に興味があってフタバさんに入社されたんでしょうか。
井上さん:そこまでではなかったんですけど、就職したことがきっかけでだんだん食に興味が湧くようになりました。その頃まだ子供が小さかったっていうこともあって、いいものとか、安全なものとか、本当の素材の味を食べさせてあげたいっていう思いが出てきましたね。
――ご自宅でフタバさんの商品を使って料理をされることも?
井上さん:ありますね。どういう使い方がいいのかなとか、どれくらい使ったら美味しかったかっていうのを日々実験というか、体感しながら使っています。
――20年ほどだしに関わるお仕事をされてきた井上さんが思う、だしの面白さって、どういうところですか?
井上さん:私もなかなか気がつかないんですけど、だしだけ飲んでみると同じカツオでも魚によって違う味がするんですよ。業務用の商品となると板前さんが相手なので、味のブレとかにも厳しいんです。うちの品管も同じ味を保つように一生懸命頑張っていますけど、揚がってきた海とか漁獲量、脂乗り、大きさとかによって、魚ってみんな違う味がするんですよね。
――それだと使う魚によってだしの味が変わっちゃうわけですね。
井上さん:だからひとつの商品にするために10種類くらいのかつお節をブレンドして同じ味にしているって聞いて、すごく深いなって。難しいけど面白いなと思うところではあります。
――最後に、井上さんはここがどういう場所になってほしいですか?
井上さん:この場所に「ポート」っていう名前を付けたのには「つながる」っていう意味もありまして。ここに来た家族が楽しくお食事をしてつながっていったり、業者さんとのコラボで業者さんともつながっていったりとか、いろんな人たちのつながる場所になるといいなと思います。
ON THE UMAMI TSUBAME SANJO PORT
三条市西本成寺2丁目24-23
TEL 0256-33-1300
ショップ 10:00-17:00
カフェ 11:00-14:00(L.O.13:30)/14:00-17:00(L.O.16:30)
水曜定休(祝日の場合は翌営業日が休日)