人間の内面を描いた本が揃うセレクト書店「PALACE」。
カルチャー
2022.10.04
個人経営の書店が減少する一方で、特定のジャンルに特化したスタイルの書店が目立ちはじめています。今回紹介する新潟市秋葉区の「PALACE(パラス)」もそのひとつ。こちらのお店は、人間の内面、それも闇の部分にスポットを当てた本をメインに取り扱っているんだとか。ミステリアスなムードの漂うオーナーの諸橋さんに、お店のことや置いている本のことについてお話を聞いてきました。


PALACE
諸橋 阿理紗 Arisa Morohashi
東京都生まれ。アロマテラピストやコンビニ経営を経て、2021年12月に「PALACE」をオープン。昔から人間観察をすることが好き。
人生をコーディネートするツールとしての本。
——諸橋さんは、今までどんなお仕事をされてきたんですか?
諸橋さん:以前はアロマテラピストをやっていました。香りをまとうことで気分が変わるのが好きでしたし、人を癒しながら自分自身も喜びを感じられる仕事をしたかったんです。でも、国によってはアロマテラピーが医療行為にあたるということを知ってから、お医者さんでもない自分が生命に関わる仕事をすることはできないと思って、手を引くことにしたんです。
——今は書店を経営されていますが、昔から本は好きだったんでしょうか。
諸橋さん:人並みに読書はしますけど、特に読書家というほどでもなかったんです。ただ、私の「アリサ」という名前は「狭き門」というフランス小説の登場人物からつけられたので、生まれながらに本と縁があったんだと思っています(笑)。あとシャーロック・ホームズ物語をはじめとした推理小説が好きだったので、それをきっかけに人間心理を読み解くことに興味を持ったのかもしれませんね。

——特に読書家でもなかったのに、書店をやろうと思ったのはどうしてだったんですか?
諸橋さん:今までの私の人生を振り返ってみると、出会った人や本が道標になってきていたんですよね。人間って生まれたときから生と死が平等に与えられていて、その間の時間をどうコーディネートしていくかが、それぞれの人生だと思っています。そのためのツールとして本を役立ててほしかったので「PALACE」をはじめたんです。

——「PALACE」っていう店名には、どういう意味があるんでしょうか?
諸橋さん:「PALACE」というのは、フランスの最高級ホテルにつけられる称号のことなんです。高級ホテルのような非日常的な空間を演出することで、皆様の癒しの場所になれたらいいなと思って名付けました。この物件にしても、床の白黒チェックがホテルっぽくて気に入って選んだんです。だから入口付近にはあえて何も置かずに、ホテルのエントランス風に演出しているんですよ。白黒のカラーリングもコンセプトになっている「光と闇」にぴったりだと思いました。

人間の持つ闇の部分をテーマに本をチョイス。
——コンセプトの「光と闇」について教えてください。
諸橋さん:人間の心のなかには光と闇という両方の部分があると思うんです。そのふたつを知ることで、はじめて自分の色もわかるんじゃないでしょうか。私は特に「人間の持つ闇の部分」をテーマにした本をメインにチョイスしているんです。
——そういったコンセプトで本を選んでいる書店というのは珍しいですよね。どうして「人間の持つ闇の部分」にこだわっているんですか?
諸橋さん:夕方の空は星が見えにくいけど、真っ暗な夜空では星がはっきりと見えますよね。それと同じで、心の闇が深ければ深いほど光も見つけやすくなると思うんです。闇の部分に蓋をしないでしっかりと見ることで、自分のことがわかってくるし、人生がより好きになっていくと思います。私は人間の心の闇が愛おしくて仕方ないんですよ。

——なるほど。では心の闇って、具体的にどんなことだと思いますか?
諸橋さん:「PALACE」では大きく5つのカテゴリーに分けさせていただいています。「セクシャリティ」「男と女」「地位や名誉」「お金」そして「欲」。つまり人間の欲望を心の闇として捉え、それと上手く向き合うことで人生の光を見つけることができるんじゃないかと思っているんです。
——欲望を持つことを恥ずかしがらず、受け入れていくことが大切なんですね。諸橋さんが特におすすめしたい本があったら教えてください。
諸橋さん:えーっ、おすすめしたい本ばかりで迷いますねぇ……(笑)。「『問う力』が最強の思考ツールである」と「問いこそが答えだ」の2冊はどうでしょうか。人生っていうのは常に自分に問いかけて、その答えを探していくことだと思うんです。この2冊にはそのためのヒントが書かれていると思います。

——本当に悩んでいるときに読みたくなりそうな本ですね。ところで、「PALACE」をオープンしてもうすぐ1周年を迎えますが、書店を経営していて大変なことはありますか?
諸橋さん:なにしろ本の業界で働くのははじめての経験ですから、1年近く経った今でも手探りで営業しているんです。逆にお客様から興味のあることを教えていただいて、ニーズを勉強させていただいています。今後は本をおすすめするだけではなく、お客様の人生や恋愛の悩みを聞いていけたらと思っているんです。私は日曜の16時から19時までお店にいますし、恋愛相談に関してはご予約も受け付けていますので、お気軽にご連絡ください。

PALACE
新潟市秋葉区新津本町3-7-30
090-7104-0552(恋愛人生相談予約受付 080-6517-9239)
9:30-19:00
不定休
Advertisement
関連記事
カルチャー
変幻自在なキャラクターを描くペインター「Aaaaaaaa」。
2021.10.25
カルチャー
ロシアのバレエ団で踊っていたダンサーが教える「巻バレエスタジオEmia」。
2024.08.07
カルチャー
着物の「ワズスタイル」、パグの「パグスタイル」。
2019.08.09
カルチャー
スポーツバイクの楽しみ方や魅力を発信する「TREK Bicycle新潟」。
2022.08.14
ものづくり, カルチャー
タイの伝統工芸・カービングを伝える「パステルグリーン」。
2019.12.11
カルチャー
住宅街に現れた最先端カルチャーのショップ、謎の多き「iti」。
2019.10.01
新しい記事
買う
時代を越えて支持される
「タカナシカメラ」の哲学。
2025.12.07
遊ぶ
200種類のゲームがお出迎え
県央のボードゲームカフェ「ASOBO’s」
2025.12.06
食べる
米粉と平飼い卵で作る優しいおやつ。
「みんなのおやつ i ppu ku」
2025.12.05
Things写真館
[Things写真館]滝沢写真館 photographerタキザワフミオ #02
PR | 2025.12.05
カルチャー
地域をつなぐ、力強い音。
今年で45周年を迎えた「飛燕太鼓」
2025.12.04
カフェ
幼稚園だった建物を再利用した
レトロな雰囲気の「喫茶ショパン」。
2025.12.03


