JR白新線西新発田駅近くの住宅街に「パティスリー・ル・トレフル」という洋菓子店があります。お店を訪れるとまず、四つ葉のクローバーが笑顔を浮かべるマークにほっこり。今回はオーナーの中山さんに、どんな思いでお菓子作りをしているのかお話を聞いてきました。
パティスリー・ル・トレフル
中山 泰平 Taihei Nakayama
1974年千葉県生まれ。東京の調理師専門学校で洋食を学び、イタリアンやフレンチの店で働く。勉強のために訪れたフランスで本場の洋菓子に出会い、帰国後は洋菓子店やレストランでパティシエとしての修行を重ねる。その後、奥さんの実家のある新発田市に移り住み、2011年に「パティスリー・ル・トレフル」をオープン。
——中山さんはお菓子作りを始めてから長いんですか?
中山さん:私は高校生のときからファミリーレストランで調理アルバイトをしていたこともあって、洋食の料理人を目指して、調理師専門学校で勉強したんです。卒業してからはフレンチやイタリアンの店で働いていたんですが、本場の味を学びたくなって3ヶ月ほどフランスに行ったんですよ。そこでいろんな料理に出会ったんですが、その中でも特に衝撃を受けたのが、ケーキやお菓子だったんですよ。
——料理ではなく、デザートの方に。フランスのお菓子のどんなところに衝撃を受けたんですか?
中山さん:デザイン性だったり、繊細な味だったり、なにより奥深さを感じたんです。それでお菓子の仕事をやりたいと思うようになって、帰国してからは東京都内の洋菓子店で働き始めたんです。
——それまでは料理を作っていたわけですが、お菓子を作ることになって戸惑いはありましたか?
中山さん:お菓子作りは料理を作るのと違って、材料の計量をはじめひとつひとつの工程がとても細かいんですよ。先輩たちも自分よりずっと若かったし、お菓子作りの基礎がない私はとても苦労して仕事を覚えました。でも、最初に勤めた洋菓子店でいろいろな勉強をさせていただいて、その後もそこの師匠にはずっとお世話になってきたんです。退職するとき、卒業証書代わりにコック服を贈っていただきました。
——ご出身は千葉ですけど、新潟に来られたのはどうしてなんですか?
中山さん:3人目の子どもが生まれたタイミングで、妻の実家がある新発田市にやってきたんです。直前まで働いていたレストランが「地産地消」をテーマにしていたので、私も地方で地元食材を使った洋菓子店をやってみようとずっと思っていたんですよ。新発田に来てからはまず月岡の地産地消レストランで働くことになりました。
——あれ?自分のお店は始めなかったんですか?
中山さん:さすがに初めての土地ですから、いろいろ知ってから始めようと思って、働きながら勉強することにしたんです。おかげで新発田のことをいろいろ知ることができたし、地元生産者の方々とも知り合いになることができました。
——「パティスリー・ル・トレフル」のオープンに踏み切ったのは、何かきっかけがあったんでしょうか?
中山さん:そうですね。ひとつは最初に勤めていた洋菓子店の師匠が亡くなったこと。もうひとつは東日本大震災です。月岡のレストランでも避難してきた方々に食事の提供をしていて、私も被災者の方々と触れる機会があったんです。そんな中で「世の中を明るくするために自分にできることはなんだろう」って考えるようになったんですよ。そこで、みんなが幸せになれるような美味しいケーキやお菓子を作ろう思って、2011年9月に「パティスリー・ル・トレフル」をオープンしました。
——なるほど。そんな思いがあってオープンしたんですね。だからロゴにスマイルが。
中山さん:店名の「トレフル」はフランス語で「四つ葉のクローバー」を意味するんです。だからマークも笑顔の四つ葉のクローバーにして、食べてくれた人みんなが微笑んでくれて、幸せになってほしいっていう願いを込めました。
——オープンしてみていかがでしたか?
中山さん:自分の知らない土地で、ゼロから商売を始めるのは大変でしたね。地元の人気店も多かったし。でも少しずつ若い世代のお客様を中心に、店に来てくれるようになりました。宣伝にお金をかけられなかったので、ほとんど口コミで来てくれたのは嬉しかったですね。毎年新しいお客様も増えて、リピーターになってくれる方もいるのでありがたいです。
——お菓子を作るときのこだわりってあるんですか?
中山さん:もとの素材の味を引き立てるように、あまりごちゃごちゃさせずシンプルに作るようにしています。全体のバランスにも気をつけながら作ってしますね。素材で特にこだわっているのは小麦粉です。今は8種類くらい使い分けていますが、それぞれまったく食感が違うんです。小麦粉の使い分けをすることで、一緒に使うバターやクリームの表現も広がります。
——そんなこだわりで作っている「パティスリー・ル・トレフル」のおすすめを教えてください。
中山さん:店名がつけられている「トレフル」っていうチョコレートケーキですね。私が修業先で食べて美味しかったケーキを、自分なりにアレンジして作った看板商品です。クリームチーズ、生クリーム、チョコレートっていう、合わなさそうな素材を組み合わせて作ってあるんだけど、それが不思議と病みつきになるって評判なんです。
——ケーキを作るときはやっぱりお客さんのことを意識するんですか?
中山さん:お客様それぞれで好みが分かれますから、結局は自分が一番美味しいと思うベストのものを一生懸命作るしかないんですよね。ここまでやって口に合わないのなら仕方ないと思うし、美味しいと思ってくれればとても幸せに感じます。もちろん、今のケーキやお菓子が自分の完成系だとは思っていませんので、日々アップデートしています。
——今後はどんなふうにお店をやっていきたいと思っていますか?
中山さん:新型コロナを考慮してカフェスペースをお休みしているんですが、今後は完全予約制で再開して、デザートの提供もしていきたいですね。食べてくれた皆さんが幸せな気持ちになってくれるよう、これからも美味しいケーキやお菓子を作り続けていきたいと思っています。
東日本大震災での経験から、「食べた人を幸せな気持ちにしたい」という思いでケーキやお菓子を作り続けている中山さん。皆さんも「パティスリー・ル・トレフル」のケーキをぜひ食べてみてください。四つ葉のクローバーに出会ったような、幸せを感じることができるかもしれませんよ。
パティスリー・ル・トレフル
新潟県新発田市富塚町2-5-5
0254-26-9680
9:30-19:00
不定休