「新潟といえば日本酒!」というほどに日本酒が有名な新潟県。家で飲んだり居酒屋で飲んだり、あるいは「酒の陣」で飲んだり、新潟県民なら日本酒を口に含んだ経験は必ずあると思います。でも、日本酒ってどうやって造られているのか、どんな種類があるのかなど、詳しい知識は備わっていますか? 県外の人からしたら「きっと新潟県民は日本酒に詳しい」と思われているはず。恥をかかないようにしっかりとした日本酒の知識をつけたい。そこで新潟市西蒲区にある「宝山酒造」の5代目杜氏・渡邉さんに、日本酒のあれこれを教えてもらいました。
宝山酒造
渡邉桂太 Keita Watanabe
1988年生まれ、宝山酒造5代目杜氏。中学生時代から酒造を継ごうと志し、大学卒業後、群馬県の酒蔵にて修業。昔から続く宝山の味を守りつつ、若い人にも気軽に飲んでもらえるよう、甘みと酸味のバランスの整ったスッと飲める日本酒を造りはじめて7年目。
みなさん、「日本酒」とはどういった飲み物かご存知ですか? ひとことで説明するなら、「白米を発酵させて造られる醸造酒」です。でもそうは言っても、「発酵?」「醸造?」そこがまずわからない。
「発酵とは、酵母が糖分を食べてアルコールを出すことですが、そもそも白米には糖分がありません。つまり日本酒は、白米を麹菌の酵素によって糖分に変え、そこに酵母を加えて発酵させるといった、複雑な仕組みによって造られている、極めて巧妙な飲み物なんです。」でもまだちょっと分かりづらい。そこで、白米が日本酒になるまでの過程をざっくり説明してもらいました。日本酒を飲みながら、ダラダラと読んでみてください。
日本酒造りはまず「精米」からはじまります。原料となる米の不要な部分(外側)を削るのです。次に、中心に近い部分だけを残して米の表面に残っている汚れなどを洗い流したり、米に水分る吸わせる「洗米・浸漬」へと移ります。その後、麹菌の作用を受けやすくするため米を蒸気で「蒸し」て、加熱します。蒸した米は麹菌を繁殖させる「製麹(せいぎく)」を行うため、麹室(こうじむろ)という専用の部屋へと運ばれます。そしていよいよ、酒造りの主役である酵母を育てる作業「酒母造り」です。酒母とは日本酒のもととなるもので、仕込み水、米麹、蒸米を数回に分けて加え、アルコール発酵を行う「醪造り(仕込み)」を行います。アルコールが生成されたら「搾り」といって、ドロドロの液体を絞って日本酒と、酒粕に分けます。最後に水を加えたり、火を入れたりなどの調整を行い、瓶詰をする「貯蔵」をしたら完成です。
精米
米の外側になる脂質やタンパク質などは、雑味の要因といわれています。つまり、米の不要な部分をたくさん削ることによって、米本来の甘みや香りが感じられる日本酒になるとされています。
洗米・浸漬
精米した米の表面には糠(ぬか)などが残っています。これらを洗い流し、精米によって熱を帯びた米を冷ますため、冷暗所で2~3週間保管されます。その後、必要な水分を吸わせる浸漬という工程になります。
蒸し
甑(こしき)といわれるとても大きな釜のようなもので米を蒸します。水を加えて炊くのではなく、蒸すことで麹菌の繁殖しやすい水分量を保つことができます。
製麹
麹室とういう専用の部屋で、麹菌を繁殖させる作業です。引き込み、種切り(たねきり)、床もみ、切り返し、盛り、仲仕事、仕舞仕事(しまいしごと)、出麹(でこうじ)など細かく分類されます。
酒母造り
日本酒のもととなる酒母を作る作業。酒母は、アルコール発酵に必要不可欠な存在で、別名・酛(もと)とも呼びます。
醪造り
酒母・蒸米・麹米・仕込み水をひとつにまとめ、醪を造ります。蒸米、麹米、仕込み水を3回に分けて投入する三段仕込みが一般的とされ、約1ヶ月かけてアルコール発酵を行います。
搾り
別名・上槽(じょうそう)ともいい、醪を酒粕、清酒の2つに分ける工程です。この工程から日本酒や酒粕を使った甘酒など、さまざまな製品へと分かれていきます。
貯蔵
酒中に残った不純物の除去やアルコール度数を調整する加水、酵母の活動を止める火入れなどの調整を行い、瓶詰めがされ出荷される瞬間を待ちます。
酒屋さんに行くと同じ銘柄がたくさん並んでいますよね。大吟醸とか特別純米酒とか、いろんな種類に分けられていて、どれを買えばいいのかわからない、という経験をした人も少なくないと思います。正直、「大吟醸」が一番高価な日本酒ってことは知っていても、その他の日本酒の違いはわからない。
例えば「居酒屋で飲んだ日本酒がおいしかったから、自分でも買ってみよう」と思いました。銘柄はわかるけれども、種類がわからない。その種類というのが、「普通酒」「特別本醸造酒」「吟醸酒」「純米吟醸酒」などの分類です。この分類は、大きく分けて「純米酒かどうか」「米をどのくらい削っているか」の2つの基準に則った「特定名称酒」と、それ以外の「普通酒」の2つがあります。で、迷うのは「特定名称酒」の方。
「特定名称酒」の2つの基準について説明します。そもそも日本酒は基本的に米、米麹、水からできていますが、なかには醸造アルコールといわれるサトウキビなどから作られたアルコール原料を添加している日本酒もあります。「純米酒」とは、アルコール添加がなく、米と米麹、水だけが原料のお酒のことです。(ちなみに、醸造アルコールは、それを加えることで華やかな香りとなり、味わいが調整できる便利な面があります)。もう一方の「米をどのくらい削っているか」は、精米する際の度合いを表します。日本酒のラベルには「精米歩合40%」などの表記がされ、精米して残った何%の米を使っているかを知ることができます。ちなみに普段食べている白米は、玄米の状態から10%ほど削っているので「精米歩合 90%」です。これら2つのポイントから分類される「特定名称酒」は「吟醸」「大吟醸」「本醸造」などがあります。主な特定名称酒は下の表の通りです。
名称 | 原材料 | 精米歩合 |
---|---|---|
吟醸 | 米・米麹・醸造アルコール | 60%以下 |
大吟醸 | 米・米麹・醸造アルコール | 50%以下 |
純米 | 米・米麹 | 規定なし |
特別純米 | 米・米麹 | 60%以下または特別な醸造方法 |
純米吟醸 | 米・米麹 | 60%以下 |
純米大吟醸 | 米・米麹 | 50%以下 |
本醸造 | 米・米麹・醸造アルコール | 70%以下 |
特別本醸造 | 米・米麹・醸造アルコール | 60%以下または特別な醸造方法 |
日本酒の分類は、これらの他にも「にごりの程度」「発泡性の有無」「火入れ方法」など、さまざまな要素があります。しかし、まずは基本の「特定名称酒」を覚えておきましょう。居酒屋で飲んで「うまい!」と感じたら、それがなんて銘柄の、なんて分類かさえ覚えておけば、「あのとき飲んだ日本酒」をもう一度味わうことができます。
1885年創業の以来、「人、酒、語らい」をモットーとした酒造りを続けている宝山酒造。100年もの歳月をかけてゆっくりと岩盤を浸透してきた霊峰多宝山の名水を仕込み水として使い、代々彌彦神社のお神酒を奉納してきました。酒造りの現場見学や、座敷での試飲などができる観光蔵としても人気で、秋口には仕込みの現場を見られることも。20代だけで作り上げる酒「二才の醸」をはじめ、新潟米の新銘柄「新之助」を麹米として使用した食用米だけの酒造りにも近年注力しています。5代目の若手杜氏による今後の展開にも注目です。
宝山酒造
新潟県新潟市西蒲区石瀬2953
0256-82-2003
純米酒
TAKARAYAMA 純米ラベル 新之助
720ml ¥1,700(税込)
後味がまるで米を食べているかのような甘味が感じられる日本酒です。それもそのはず、新銘柄米「新之助」を使っているから。食中酒としてだけでなく、香りが華やかなので食前酒としても楽しめます。女性に人気でとても飲みやすく、日本酒初心者の方にもオススメです。