新潟市や燕市、三条市などで出店している「Salut(サリュー)」は、色とりどりのおかずが入ったランチBOXが楽しめるキッチンカー。ここで腕をふるう長谷川さんは、パリでシェフとして経験を積んだフレンチの料理人なんだとか。そんな長谷川さんが、キッチンカーをはじめたきっかけや、ランチBOXのこだわり、これからのことなど、いろいろ聞いてきました。
Salut
長谷川 祐介 Yusuke Hasegawa
1983年燕市出身。新潟調理専門学校を卒業後、東京のレストランで勤務。その後、フランスのレストランやビストロで経験を積む。新潟に戻って「レストランバス」の企画や調理に携わり、2019年にキッチンカーをはじめる。
――今日はよろしくお願いします。まず、長谷川さんのこれまでを教えてください。
長谷川さん:調理の専門学校を卒業して、東京のフレンチレストランで働いていました。僕の家は食べるものに対するこだわりが強くて、料理好きな父がスペアリブをつくってくれたりしました。その影響もあって、料理の道に進もうと思ったんです。
――東京で働いた後は、フランスで経験を積まれたんですね。
長谷川さん:東京で働いているときから本物を見たいなって思って、ワーキングホリデーを使ってフランスで働くことにしました。日本人のシェフがいるレストランで1年間経験を積みました。
――本場の味を知りたいという思いが強かったんですね。
長谷川さん:フランス料理を作るなら本場フランスでの経験が必須だと思ったんです。ワーキングホリデーが終わった後、一度東京に戻ったんですけど、またフランスに行って働けることになって、2年半パリにいました。
――2度目のフランスでの経験は、どうでしたか?
長谷川さん:タパスみたいなのを出しているワインバーで、シェフをさせていただきました。日本や他の都市に比べたら、パリは流行の流れが早くて。同じことをしていると置いていかれちゃうし、お客さんが飽きて来なくなるっていう、思い出すとひやっとするような経験をしました。
――現状維持だけでは、やっていけない環境だったんですね。
長谷川さん:食材や調味料の組み合わせを、他ではないような意外な組み合わせにしてみて、細かいところを変えていきました。これ、本当に大変で(笑)。そこは今にも活きているし、とても勉強になったなって感じています。
――その後、新潟に戻ってきてキッチンカーを出すまでに、どんないきさつがあったのでしょうか。
長谷川さん:新潟に帰ってきてから、「レストランバス」で料理をつくる仕事をしました。観光名所を巡りながら、その土地の食材を使った料理を提供していたんです。そのときに景色を見ながら美味しいものを食べてもらうのっていいなと感じたんです。それから知り合いにキッチンカーを借りて、お試しで料理を出しはじめました。
――お店の名前の「Salut」には、どんな意味があるのでしょうか
長谷川さん:これはフランス語のあいさつなんです。 親しい友達に気軽に使うようなもので。それくらい気軽に来てほしいと思って、この名前にしました。
――ここではランチBOXを買うことができるんですね。
長谷川さん:「レストランバス」の仕事の後、フランス料理のお店の開業を目指していたんですが、お試しでキッチンカーをやっていたときにコロナが流行りはじめたんですよ。あの頃、お店も人も動きを制限されてしまって、なにもできない時期があったじゃないですか。でもランチBOXだったら、 苦しい世の中でも美味しいものを食べて、明るくなってもらえるかなと思ってはじめました。
――そんなランチBOXのこだわりを教えてください。
長谷川さん:食材は、なるべく旬の美味しいものを使うようにしています。美味しい料理をつくるなら、美味しい食材を使わないと。できたてはもちろん、冷めても美味しく食べてもらえるように、バターや油脂を使いすぎないこと、お肉は冷めても柔らかく食べてもらえるように、調理を工夫しています。
――色とりどりのおかずが食欲をそそります。
長谷川さん:まず見たときの彩りが第一ですからね。印象が良くなるように意識して盛り付けています。どれから食べようかなってワクワクしてもらえたら嬉しいですね。見た目だけじゃなくて、身体に負担にならないように、酸味や甘さを気をつけたり、シャキシャキな食感になるように工夫したり、ボリュームを考えて揚げ物をいれたり……。意外と考えているんです(笑)
――お肉やお魚のソテー、ローストポーク、オムレツ……。レストランで食べるようなメニューたちが、ここで楽しめるんですね。
長谷川さん:ランチBOXはメインのおかずがお魚かお肉かで選べますし、他にもカレーやおつまみ、一品のおかず、デザートも用意しています。その日の食卓に一品プラスしたいっていう方にも来て頂けています。
――キッチンカーとは思えない、豊富な品数ですね。
長谷川さん:これでもかなり絞ったほうなんです。毎週来てくださる方もいるので、毎日メニューをちょっとずつ変えています。毎回同じメニューだと、また飽きられちゃうかもって思って(笑)
――それにしても、毎週来てくれる方がいるって……。
長谷川さん:他にはあまりないかもしれないですね。常連さんに支えられているなと、本当に思います。そういった方が来てくれているので、曜日ごとに出店する場所をあらかじめ決めて出店しています。そうすると、常連さんが探す手間を省けますし。
――キッチンカーをやっていくなかで、長谷川さんが大切にしていることを教えてください。
長谷川さん:常連さんを喜ばせることですね。おつまみや一品のおかずを用意しているのも、毎週来てくれる常連さんのためにはじめました。毎回、今日来てくれるかもしれない常連さんが、先週買ってもらったものと被らないようにとか、好きなものを用意しておこうとか、 そういうのを考えながら仕込んでいます。
――ただ毎回変えるだけじゃなくて、常連さんの顔を思い浮かべながら用意しているなんて、素敵です。
長谷川さん:パリでの経験があったからこそ、次の一手を先に出さなきゃって思うんです。常連さんはそんなことしなくていいって言ってくれるんですけどね(笑)。それでも支えてもらっている方には、いつも喜んでほしいじゃないですか。
――長谷川さんだからこそ、お客さんもついてきているのかもしれないですね。今後の目標を教えてください。
長谷川さん:お店を出したいですね。今までやってきたことが、新潟でどこまでできるのか試してみたいんです。料理人をはじめた頃からお店を出したいと思ってはいましたし。でも、「Salut」の常連さんのことを思うと、なかなか踏み切れないのも事実なんです(笑)
――それは歯がゆいですね(笑)。最後に読者の方にひとこと、お願いします!
長谷川さん:もし常連さんが読んでいたら、いつもありがとうございますって伝えたいですね。新しく知ってくださる方がいれば、いちばん美味しい状態でお渡ししたいので、Instagramでメニューを見て予約してもらえるとありがたいです(笑)。見かけたら気軽に来てください、お待ちしています。
Salut