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僕らの工場。#18 健康に貢献する「津川インソール株式会社」

健康を足もとから支える「津川インソール株式会社」の製品。

今回の工場見学は、津川にあるインソール工場「津川インソール株式会社」さんが舞台です。「津川インソール株式会社」は、東京に本社をかまえる「株式会社村井」のインソール製造工場として1976年に作られた工場です。代表の村井さんに工場のことや靴の話、インソールについて、いろいろお話を聞いてきました。

 

津川インソール株式会社

村井 隆 Takashi Murai

「株式会社村井」3代目、代表取締役。もともと靴が好きで大学卒業後には革靴の本場イギリスに渡英。そこでグッドイヤーウェルテッドなどの専門的な技術を学び、その後も現地の有名靴メーカーの靴工場で技術を習得したのち帰国。「株式会社村井」に入社し、1999年には代表取締役に就任。2000年には自社ブランドとなるインナーソール・フットケア商品の販売を開始。

 

ーー本日はよろしくお願いします。津川インソールさんは、「株式会社村井」の製造工場とお聞きしました。どんなものを作られているか教えてください。

村井さん:「株式会社村井」は、靴を作るための型である靴型から主要靴部品、一般消費者向けの足もとの製品を製造するメーカーです。津川インソールのこの工場では、全国の有名靴ブランドのインソール(※中底とも呼ばれ、靴の中で足が乗る、靴の背骨にあたる部品)やパッド、靴の中に後で入れる凹凸のついたインナーソール(中敷き)の製造をおこなっています。

 

ーーちなみに、インソールって決まった形があるんですか?

村井さん:靴や靴部品は、そもそも標準化されていない製品なんですよ。だいたい日本で売られている製品って規格があって、キーボードや乾電池のようにどのメーカーの製品でも同じように使えますよね。でも靴や靴部品ってそれがないんです。なので、この工場で生産するインソールに関してはすべて完全受注生産です。

 

ーーすべて受注生産ってすごいですね。どのくらいの種類を作られているんですか?

村井さん:そうですね、年間700以上の型のインソールを生産しています。

 

ーーえ、そしたら毎日、違う形のものを生産しているってことになりますね。

村井さん:各メーカーさんはシーズン毎にモデルチェンジをしていますし、それに合わせてインソールの形状が変わるので、規格がないとはそういうことで、1型1型違うものを生産させてもらってます。

 

インソールによって靴の履き心地はまったく違ってくる。

ーーインソールって奥が深そうです。インソールの役割ってどんなものがあるんですか?

村井さん:それは、インソールによって「履き心地がまったく違ってくる」ってことにありますね。

 

ーー具体的にはどういうことですか?

村井さん:人の足には凹凸があるでしょう? 分かりやすくいうと土踏まずだったり。その凹凸に合わせて、足圧が部分的に集中しないように分散させたり、足裏のアーチが崩れないように支えたりすれば、歩くときの負荷を軽減したり、バランスをとったり、履いていても疲れない、履き心地のよさにつながるんです。

 

ーー正直、靴は好きでもインソールのことなんて普段、まったく考えていませんでした…。自分の足の形も。

村井さん:そうですよね、意外とインソールや自分の足のことを知らないって人が多いと思います(笑)。だって、自分の足の裏をじっくり見る人っていないじゃないですか。でも、足は人間の体重を支えている大切な部分なので、健康と非常に関わりがあるんですね。

 

ーー例えば、どういうことですか?

村井さん:外反母趾とか扁平足といった見た目で分かる症状だったり、見えないところでは腰痛、膝痛も足もとが原因だったりするんです。最近多いのは、「足底筋膜炎」という症状があって、歳を重ねるごとに土踏まずの筋肉が衰えて、足裏の縦のアーチが下がって扁平足になり、それで足裏の筋が引っ張られることによって踵が痛くなるんです。そういったトラブルから足裏を補助、補正して、予防やサポートできるのがインソールやインナーソールなんですね。

 

症状によって適切な足裏のサポートをする、オリジナルの商品群。

ーーインソールってけっこう大事ですね。「株式会社村井」さんではオリジナルブランドを展開されていますよね。そのことについても教えてください。

村井さん:私たちの会社は創業時は靴資材を販売していましたが、後に靴の部品を生産するメーカーになり、企業理念に「足もとから人々の健康で快適な生活づくりに貢献すること」を掲げて、研究開発型の総合靴部品メーカーとして活動しているんですね。インソールは、本当に奥が深いというか、人間がもっと快適に暮らせたり、健康に暮らせたり、そういうことを追求できる分野の製品だと私は思っているんです。それで、靴部品メーカーとして培ってきた知識やノウハウを、靴を作るための部品に留まらず、もっと活かすために一般消費者に直接ご利用いただける「インソールプロ」をはじめとしたオリジナルブランドを作ったわけです。

 

ーー「足のことを知り尽くしたプロが作るインソール」ってことですね。最近では、自分の足に合わせて作るインソールなんて商品も耳にしますが、そういうことですか?

村井さん:それとは少しコンセプトが違いますね。個々の足に合わせたものを作ると完璧なものができますが、高価になってしまいます。私たちは、多くの人達の足に合うよう製品を設計し、よいものを手頃な価格で提供しています。年齢の積み重ねや、歩き方、履いているもの、それらが原因で、足のトラブルだったり骨格への影響が出たりするんですけど、すでにおかしくなった足に合わせるインナーソールというより、そのトラブルの原因にアプローチして足のサポートをするインナーソールを作るという方向性ですね。

 

ーーなるほど、商品の種類を見ると「外反母趾対策」「腰痛対策」「O脚対策」、その他にもたくさん症状に特化している製品がいっぱいですね。

村井さん:症状によって適切な足裏のサポートが大切ですので、そういうことを考えて作った製品です。

 

ーーなんだか、足のお医者さんみたいです(笑)

村井さん:そうですね(笑)。実際、私たちは靴部品を作る知識やノウハウはたくさん持っていますが、医療や科学のことは分からないことなので、産学連携で、確実なデータをもとに検証を繰り返して、製品を開発しているんですよ。

 

マタニティインソールは素晴らしい製品だけど、あまり売れていません…。

ーー大学と連携ですか。かなり本気で足のこと考えられているんですね。

村井さん:ひとつの製品を開発するのにたくさんの実証データをとるので、時間はかかりますね。でも、それこそが私たちの役目だと思ってますし、こういった新製品や新技術で生まれる価値をみなさんに届けるために活動しています。

 

ーーかなりいろんな症状に対応できるんですか?

村井さん:種類はたくさんありますが、特許でいえば、毎年2~3件申請していて、現在特許保有数は28件、特許申請中は7件なので、すべて通れば30件以上になるかと思います。でも、それが売れるか売れないかでいったら、すべてがそうではないんですけどね(笑)

 

ーーというと?

村井さん:例えば、私たちが開発した「村井のマタニティインソール産前用」という製品があります。女性は妊娠するとお腹が大きくなって、がに股になり、体重が増えるため、膝をいためたり、歩く時の足からの衝撃が大きくなったりするんです。また、姿勢が後方へ崩れやすくなります。なので、それをインナーソールで解決できないか、ってことで作った製品なんですけど、できたときには一緒に開発した教授が学会でも紹介してくれて、「これはすごい製品だ」って評価を与えてもらって、かなり盛り上がったんですよ。でも、あまりにもニッチな市場だったために、あまり売れていないっていうこともあったりね(笑)

 

ーーえー、もったいないですね。そんなに評価の高い製品なら、妊婦さんには知ってもらいたいですね。

村井さん:そうなんですよ(笑)。身体への負担をクッションで軽減できるし、膝を痛めないようにインナーソールの外側を高くしたり、後ろにのけぞらないように後を高くしたりこだわっているんです。また、妊娠するとホルモンの影響で体全体の骨格が緩むので、足裏の3つのアーチをサポートするこの製品を使えば外反母趾の方は治るかもしれませんよ。でも、私たちは売ることが第一の仕事ではなくて、こういった「価値のある製品を作り、人の暮らしを豊かにする」ってことの方が大切で。そういうふうに、足もとから社会に貢献できる、ってことが重要だと思ってるんですね。

 

ーー素晴らしいですね。ちなみに、そんなすごく考えられて作られるインソールは、だいたいおいくらくらいで買えるんですか?

村井さん:ものによりますが、マタニティインソールの産前用や産後用であれば1,800円(税抜)、インソールプロも同じ価格で売ってますよ。

 

ーーえっ、正直、何万円もするものかと…。

村井さん:そんなものですよ(笑)

 

人の健康の役に立ち、社会に貢献できる価値ある商品を作り続ける。

ーー目的に合わせて、いろんなインソールやインナーソールが考えられますね。

村井さん:そうですね。例えばスポーツの分野でいえば、ランニングやウォーキングにトレッキング専用のインナーソールを手がけています。

 

ーー具体的にはどういうものですか?

村井さん:トレッキング用のインナーソールはかかと部や内・外側縦アーチを深くしたりすることで、足の前後左右へのすべりを抑え、安定した足運びをサポートするように開発しています。すべての分野の製品を、その専門分野で活動する方に意見を聞きながら、科学的なデータをサンプリングして最もパフォーマンスの向上が期待できるように作っています。「トラブルの予防」と「パフォーマンスの向上」を両立したランニング専用のインナーソールは2019年にグッドデザイン賞ももらいました。

 

ーー今後の目標などあれば教えてください。

村井さん:スポーツもそうですけど、もっと専門分野の幅は広げていきたいと思っています。業務用に特化した製品であったり、例えば、食品加工会社さんは長靴を履くでしょ?長靴ってずっと履いていると疲れるじゃないですか?そういった、足もとの困りごとってたくさんあると思うんです。そういう悩み、疲れ、体の健康のこと、快適に暮らせること、それらをインソールやインナーソールなどの足もとの製品で解決する、それが私たちの使命だと思ってますから、これからも人の役に立ち、社会に貢献できる、価値ある製品を作り続けていきたいと思っています。

 

 

 

津川インソール株式会社

〒959-4411 新潟県東蒲原郡阿賀町天満28-5

TEL 0254-92-4991

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