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コーヒーを原料に作られた食器で、コーヒーを味わう「SAN&CAFE」。

明治時代に開港した5港のひとつである新潟は、全国に先駆けて洋食文化が栄えた街でもあります。そんな新潟のホテルやレストランに洋食器を納め、洋食文化を支えてきたのが「株式会社大橋洋食器」。新潟市中央区本町にある店舗の2階に、「SAN&CAFE(サンドカフェ)」というお店がオープンしたそうです。カフェを営業している「株式会社SAN-AND(サンアンド)」の大滝さんを訪ねて、詳しくお話を聞いてきました。

 

 

株式会社SAN-AND

大滝 亮 Ryo Otaki

1976年新潟市江南区生まれ。東京の大学を卒業後、飲食店でのアルバイトを経て都内のIT企業で20年にわたり広報を担当する。40代のはじめに家庭の事情で新潟に戻り「株式会社大橋洋食器」に就職。2022年に子会社の社内ベンチャープロジェクトリーダーとして「株式会社SAN-AND(サンアンド)」を立ち上げ、「SAN&CAFE」をオープン。料理が趣味。

 

新潟の洋食を支えてきた「株式会社大橋洋食器」とは。

——食器店のなかにカフェがあるんですね。

大滝さん:「SAN&CAFE」を営業している「株式会社SAN-AND」は「株式会社大橋洋食器」の子会社なんですよ。

 

——「株式会社大橋洋食器」というのは、どんな会社なんですか?

大滝さん:明治19年から137年にわたって、ホテルやレストランに洋食器を納めてきた老舗企業です。食器の卸売だけではなく、オリジナルブランド「OHASHI(オーハシ)」を立ち上げ、独自のテーブルウェアも扱っています。

 

 

——「OHASHI」っていうのは、どんなブランドなんでしょうか。

大滝さん:新潟が世界に誇る伝統工芸の技術と「株式会社大橋洋食器」が培ってきたノウハウを生かした、オリジナルのテーブルウェアブランドです。食事を通して地域の文化や魅力を考える「ガストロノミー」が注目されはじめたこともあって、食材だけじゃなく器にもこだわるホテルやレストランが増えたおかげで「OHASHI」の商品も取引先が広がりました。

 

——じゃあ、いろんなところで使われているんですね。

大滝さん:「帝国ホテル」で行われた令和天皇の即位行事では、国賓をもてなす料理の器としてオーダーをいただけたんです。大変名誉なことですね。

 

プロユースなクオリティの、一般家庭向けブランド。

——「株式会社SAN-AND」はどうして生まれたんですか?

大滝さん:「大橋洋食器」ではホテルやレストランに食器を納めてきたんですけど、一般のお客様からも「あのお店で使われている食器がほしい」という声があったので、一般家庭用ブランドとして「SAN&」を立ち上げることになりました。それと同時に「株式会社SAN-AND」が生まれたんです。

 

 

——「SAN&」って、変わった名前ですね。

大滝さん:「3度の食事を大切にしたい」という思いからの「3度」と、夜の食事を意味する「晩餐」からの「餐」を組み合わせて名付けました。

 

——こちらのブランドでは、どんなテーブルウェアを作っているんでしょうか?

大滝さん:レストランでお食事するときの期待やワクワクをご家庭でも感じてほしいという思いのもと、「日常の中の非日常」をコンセプトにしています。極端な話になってしまいますけど、ご家庭でも特別な日に選んでいただけるような器を目指したいですね。いい食器が生活のなかにあることで、心の豊かさが生まれるんじゃないでしょうか。

 

——確かに、素敵な食器を買うと気分も変わりますよね。

大滝さん:ゆったりとお食事やお酒を楽しみたい気分のときや、誕生日や記念日といった特別なシーンに使っていただいてもいいですよね。

 

食品廃棄物を利用した「SDGs食器」への挑戦。

——「SAN&」の食器って、どんなふうに作られているんですか?

大滝さん:地元企業や飲食店から排出される食品廃棄物を利用した「SDGs食器」を開発しました。その第一弾として、コーヒーの出がらしを原料に使ったマグカップやカトラリーを製造して、「リ・カフェ」というシリーズを展開しています。

 

——コ、コーヒーの出がらしですか? どうしてそんなものを……。

大滝さん:器を作る原料が年々不足してきていて、価格が高騰しているんです。それに伴って、工場の廃業や倒産というリスクも高まってきています。そうした課題への取り組みのなかで「循環型のものづくり」にチャレンジすることになったんです。

 

——コーヒーの出がらしから器を作るって、きっと簡単なことではないですよね。

大滝さん:コーヒーの出がらしは廃棄が難しいという課題を知り、器の原料不足も問題となっていたために、まずは釉薬の原料を作れないかという可能性を試して、違和感なくコーヒーの粉の感触を感じられる製品ができました。コーヒーの出がらしを乾燥させてから細かい粉末にし、釉薬と混ぜてマグカップにしたり、樹脂と混ぜてコーヒースプーンを作ったりしています。

 

 

——コーヒーの出がらしだけじゃなくて、色々な原料で代用ができそうですね。

大滝さん:そうなんです。今後はお米の籾殻や、魚の骨、貝殻などを原料にした食器にもチャレンジしていきたいですね。その開発を応援してくださる方を募るため、クラウドファンディングに挑戦しました。リターンには「リ・カフェ」のマグカップやコーヒースプーンを予定しています。

 

——コーヒーで作られたマグカップやコーヒースプーンなんて、コーヒー好きな人にはたまりませんよね。

大滝さん:少しでも多くの人に「SDGs食器」について知っていただき、できれば応援していただきたいと思っています。

 

どうして食器店がカフェをオープンしたのか。

——一般家庭用にテーブルウェアを作ってきた「SAN&」ですが、今回「SAN&CAFE」をオープンされたんですよね。

大滝さん:「リ・カフェ」シリーズをはじめ、「SAN&」で開発したテーブルウェアの使い心地を実際に体験していただけるスペースとして、カフェをオープンすることになりました。

 

——じゃあ「SAN& cafe」で使われているテーブルウェアは「SAN&」の商品なんですね。

大滝さん:そうです。実際に販売もしていますので、お買い求めいただくこともできます。

 

 

——使い心地を試してみて、気に入ったらそのまま購入もできるわけですね。それにしても、畑違いのカフェをはじめるのは大変だったんじゃないですか?

大滝さん:確かに、飲食店とお取引していても飲食業は素人ですからね(笑)。でも、色々な方々の協力をいただいて、なんとか営業することができています。あとレストランで働いていたパティシエを迎えることができたので、本格的なスイーツの提供が可能になったんです。

 

——それは心強いですね。

大滝さん:私自身、料理は好きなんですが本格的にやった経験はないので、スイーツやコーヒーの勉強をして、もっと知識を深めていきたいと思っています。

 

——「SAN&CAFE」に多くの方が訪れて、「SAN&」のテーブルウェアが世の中に広まってくれるといいですね。

大滝さん:カフェで実際に器を手にしていただき、多くの方々に「SAN&」の魅力を知っていただけたらと思います。

 

 

 

SAN&CAFE

新潟市中央区本町通8番町1352 大橋洋食器2F

025-228-4941

11:00-17:00

日曜祝日休(土曜は不定期営業)

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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