中華料理の中でも特に辛いものが多いのが「四川料理」です。代表的なものとしては「麻婆豆腐」「担々麺」「回鍋肉」「棒棒鶏」など、日本でもお馴染みのものがたくさんあります。そんな四川料理を日本に広めたのが中国生まれの陳建民という料理人です。聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。今回は新潟市のメディアシップ内にある「四川飯店 新潟店」で、四川料理のルーツや料理のこだわりについて料理長の小柳さんからお話を聞いてきました。
四川飯店 新潟店
小柳隆雄 Takao Koyanagi
1980年三島郡出雲崎町生まれ。「新潟調理師専門学校」で中華料理を学びながら、アルバイトとして「四川飯店」で働き始め、卒業と同時に就職。それ以来ずっと「四川飯店」で働き続け、現在は料理長として伝統的な四川料理を支えている。趣味はサーフィン。
——「四川飯店」の歴史は長いんでしょうか?
小柳さん:「日本における四川料理の父」って呼ばれている陳建民(ちんけんみん)さんのお弟子さんが、50年くらい前に万代にあった「ミナミプラザ」っていうホテルで始めたお店です。新潟での歴史自体はそれほど長くありませんけど、陳建民さんが1958年から東京でやっていた「四川飯店」の味を受け継いでますので、味の歴史はけっこう長いんじゃないでしょうか。
——おお、陳建民さん。私でも知っている有名な中華料理人がルーツだったですね。そういえば村上市にも「四川飯店」がありますよね?
小柳さん:はい、「龍泉」っていう日帰り温泉に併設するかたちで村上店があります。以前から「村上市でも中華料理店をやってほしい」という話があったので、2007年に新潟市の「ミナミプラザ」が閉館したタイミングで村上店をオープンすることにしたんです。当初は「ミナミプラザ」の跡地にメディアシップができて、そこで再オープンするまでの期間限定営業のつもりだったんですけど、評判がよかったのでそのまま営業することになったんです。
——小柳さんはいつから「四川飯店 新潟店」で働いているんですか?
小柳さん:「新潟調理師専門学校」で中華料理の勉強をしていたときに、学校の紹介で「四川飯店」のアルバイトを始めたんです。卒業後はそのまま就職して今にいたるって感じですね。
——もともと中華料理に興味があったんですか?
小柳さん:高校生のとき「料理の鉄人」っていうテレビ番組が流行ってたんですよ。それに出ていた「中華料理の鉄人」の陳建一さんに憧れて、中華料理の料理人を目指したんです。
——陳建一さんに憧れて中華を目指したということは、そのお父さんがルーツの「四川飯店」は、まさに小柳さんにうってつけのお店ってことになりますよね。でも和食や洋食じゃなくて中華に憧れたのはどうしてなんですか?
小柳さん:私は白米が好きなので、白米に一番合う料理が中華だと思ったんですよね。あと包丁と中華鍋だけで、たくさんの種類の料理を作ることができるのも魅力でした。
——修行時代はどんな感じでした?
小柳さん:最初は洗い物、ゴミ捨て、野菜の下処理といった雑用から始まって、だんだん板場、鍋とステップアップしていくんです。板場や鍋にもそれぞれ任せられる仕事のランクがありました。「ミナミプラザ」時代は13人くらいの調理人がいて、私の上にいろんな先輩がいたんですよ。包丁の使い方がうまい先輩とか、味付けがうまい先輩とか……そういう先輩たちの仕事を直接見ることができたのはすごくいい経験になりましたね。
——小柳さんがお薦めする「四川飯店 新潟店」の料理を教えてください。
小柳さん:辛い料理が大丈夫な方には「陳麻婆豆腐」をお薦めします。陳建一さんのレシピに沿った奥深い料理です。若い豆板醤と3年熟成した豆板醤の2種類を使うことで、辛さの中に奥深い風味を出してます。中国四川省産の山椒はしびれが強く香りもいいので、奥深さを与えてくれます。ちょっとほかとは違う麻婆豆腐ですね。
——たしかに四川料理らしいものですよね。他のオススメも教えてください。
小柳さん:「回鍋肉(ホイコーロー)」もご飯のお供に最適です。甜麺醤(テンメンジャン)っていう中華甘味噌を、ニンニク、酒で味付けしたタレと一緒に豚バラ肉を炒めることで、肉の脂とタレが混ざり合ってうま味が出ています。あと本格的な高級中華料理では「上海蟹のミソとタラバ蟹肉入り高級フカヒレのスープ」も食べてみてほしい一品ですね。フカヒレの食感と蟹のうま味を、黒酢やオイスターソースを隠し味に使った豚骨ベースの白湯スープが引き立ててます。
——うーん、どれも美味しそうですね。料理を作るときに気をつけていることってあるんでしょうか?
小柳さん:陳建民さんが中国から日本に伝えて、それが新潟にも受け継がれた伝統のある味ですから、変わってしまわないように気をつけて作り続けてますね。味っていうのは繊細なもので、食べる人のコンディションやイメージによっても変わってしまうことがあるんです。たとえば調理する人間やレシピが同じでも、お店の雰囲気や器が変わるだけで味も違って感じられるみたいなんですよ。ですから、細心の注意を払って同じ味になるよう心掛けています。
——伝統を受け継ぐことへのプレッシャーはありますか?
小柳さん:もちろんありますが、受け継がれてきた「四川飯店」の味に自信を持ってますから、私はその味を変えないように作り続けていきたいですね。それでお客様が美味しいと思ってくれて、何度も食べにきてくれれば最高だと思います。
日本に四川料理を広めた陳建民がルーツになっている「四川飯店 新潟店」。その店で調理長を務めるのは、テレビ番組「料理の鉄人」で陳建民の息子・陳建一に憧れて中華料理の道に進んだ小柳さん。これからも陳親子から伝えられた伝統の四川料理を守り続けてください。
四川飯店 新潟店
〒950-0088 新潟県新潟市中央区万代3−1−1 新潟日報メディアシップ内
025-240-0050
平日11:00-14:30(L.O. 14:00)/17:00-20:30(L.O. 20:00)
土曜日曜祝日11:00-15:30(L.O. 15:00)/17:00-20:30(L.O. 20:00)
火曜休