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表現が交錯していく場所。秋葉区の「泊まれる劇場 スロウプハウス」。

秋葉区の自然豊かな住宅街の中に佇む「泊まれる劇場 スロウプハウス」。ここでは宿泊や飲食、イベントなどを通して様々な表現にふれることができます。オーナーである土田さんは、秋葉区を拠点に活動するダンサー。そんな土田さんが「スロウプハウス」をつくったきっかけは、以前滞在したベルリンでの経験が大きく影響しているんだとか。この場所をつくったきっかけや、土田さんの思いを聞いてきました。 

 

スロウプハウス

土田 貴好 Takayoshi Tsuchida

1989年新潟市秋葉区生まれ。高校、大学とダンスに打ち込み、「Noism2」の研修生として活動する。大学卒業後はフリーダンサーとして、2017年に「NEphRiTE(ネフライト)」を立ち上げる。翌年、文化庁新進芸術家研修生としてベルリンで学ぶ。帰国後は新潟市秋葉区を拠点にアート活動を続け、2023年に秋葉区に「スロウプハウス」をオープンする。最近は表現の幅を広げるために、五感以外の感覚が欲しいんだとか。

芸術をもっと身近に。ベルリンでの経験をかたちに。

――土田さんは以前、「NEphRiTE」のお話を伺いました。まさか、泊まれる場所をつくっていたとは……。どんな経緯で、この場所をつくられたのでしょうか。

土田さん:きっかけは、ベルリンでの経験でした。以前、文化庁新進芸術家研修生として2年間活動をしていたんです。ベルリンでは毎週末どこかで演劇や踊り、ミュージカルなどの公演をしていて、家族で観に行って、終わったら感想を話すっていうことが当たり前の習慣だったんですよ。それくらい、芸術が根づいていたんです。

 

――日本では、というか新潟では、なかなかないですね。

土田さん:そうなんです。僕がやっているコンテンポラリーダンスは、日本ではまだ馴染みがない気がしていて。その光景がすごく、うらやましかったんです。そこから自由に表現できる場所が欲しいと思いはじめました。

 

――そうだったんですね。表現する場だけではなく、泊まれる場所としてここをつくったのはどうしてなんでしょう。

土田さん:新潟で活動していたとき、県内外や海外から、ダンサーを呼んで作品づくりをしていたんです。僕が拠点にしている秋葉区は、数年前から泊まれる場所がなくなってしまって……。みんな僕の家に泊まっていたんです。だったら自分たちの表現ができて、泊まれる場所をつくりたいな、と思ったんです。

 

 

――なるほど。ところでこの建物、とても立派ですね。前は誰かが住んでいたお家だったのでしょうか。

土田さん:そうみたいです。実はこの建物、移住当初に空き家として見つけていて。でも不動産屋さんとの交渉がうまくいかず、1度買うのを諦めたことがあるんです。昔石油を精製していたご家族の立派な建物だったため、これは残すべきだと思いました。それで秋葉区のまちづくり会社と協力して、沢山の方のご尽力のもとリノベーションすることができたんです。ちょうど、秋葉区としても泊まれる場所が欲しいときだったみたいなんですよ。

 

――まちのニーズとも合っていたんですね。改めて「スロウプハウス」は宿泊以外にどんなことができるのか、教えてください。

土田さん:秋葉区の食材やお皿を楽しみながら、食事ができます。後は、不定期でイベントも開催していますね。過去には演劇や朗読劇だけではなく、ジャズライブや琵琶の演奏会もやりましたね。小上がりはフリースペースとしても使っていただけますよ。

 

 

――いろんな楽しみ方ができるんですね。ところで、この玉ねぎの皮はいったい何に使っているんですか?

土田さん:以前染物職人さんのワークショップを開いたときに「玉ねぎの皮でも染められますよ」って教えていただいたんです。それ以来集めるようになりました。ここで使ったものもありますし、ご近所の方が持ってきてくれることもあるんですよ。

 

――ダンスや劇の他にも、ものづくりにも関わっているんですね。

土田さん:僕はアーティストだけじゃなくて、大工さんや農家さんみたいな、何かをこだわってつくっている方は「表現者」だと思っています。「スロウプハウス」でいろんな表現が交錯して、新しい何かが生まれたらいいなと思っているんです。

 

芸術も、飲食も。泊まれるだけじゃない「スロウプハウス」の魅力。

――ここで食べれる「スロウプハウスプレート」とは、どんなものなのでしょう。

土田さん:小鉢と汁物、おにぎりが入ったプレートです。それぞれ好きなものを選んでもらっています。食材はなるべく秋葉区のものを使うようにしていて、季節に合わせて具材を変えているんです。

 

――自分だけのプレートが楽しめるんですね。メニューの下に顔写真が入っていますが、この方たちは……?

土田さん:プレートに使わせていただいてる「表現者」の方たちです。食材の生産者さんや、プレートや器をつくっていただいている方をご紹介しているんですよ。

 

――へぇ~!プレートまで秋葉区でつくられているなんて、びっくりです。ごはんをおにぎりにしたのって、何か理由があるんですか?

土田さん:イベントのときに、演目を観ながら食べてもらいたいんです。映画館でポップコーンをつまみながら映画を観るような感覚で、気軽に楽しんでもらいたくて、手で食べれるおにぎりにしたんです。

 

 

――演目を観るついでに食事も楽しめるなら、気軽に行けそうですね。

土田さん:終わった後は感想を話せる、アフタートークの時間を設けています。普段であれば恥ずかしくて感想を話さない人でも、ごはんを食べながら、飲み物を飲みながらだと、自分の感じたことをシェアしやすいと思うんです。

 

――土田さんがベルリンで観ていた光景が、ここに反映されているんですね。

土田さん:コンテンポラリーダンスだと、客席とステージの境目がなく、間近で踊りを観てもらうこともできるので、その場で感じたことを気軽に話してもらえると嬉しいですね。

 

――ところで、ここでは一棟貸しをしていると聞きました。

土田さん:そうなんです。10人前後でご利用の方に向けたプランを用意しています。合宿や、研修、同窓会で使っていただいていますね。他のお客さまを気にせず、ワイワイ楽しんでもらえますよ。

 

 

――ドミトリーは秘密基地みたいで、なんだかワクワクします。

土田さん:広く使って欲しかったので、2段にはしなかったんです。実はドミトリーの床がちょっと面白いんです。舞台によく使われる床材を使っていて、劇場気分でお過ごしいただけますよ。

 

――「スロウプハウス」は、これからどんな場所になっていくんでしょうか。

土田さん:全国でも唯一無二の場所にしていきたいですね。劇場と宿泊施設、飲食店の3つが合わさっている場所はないと思いますし。ここの魅力や使い方をもっといろんな人に知ってもらいたいですね。

 

――最後に読んでいる方にひとこと、お願いします!

土田さん:月に2,3回イベントを開催していますし、カフェやランチのみの利用もできます。ぜひ気軽にいらしてください、お待ちしてます。

 

 

 

泊まれる劇場 スロウプハウス

新潟市秋葉区秋葉1丁目6−20

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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