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本に囲まれた空間でゆっくりと日本酒を楽しめる、上越市の「スイミー」。

上越市の高田駅から徒歩7分のところにある「スイミー」というお店。ここではソファーに座ってじっくり本を読みながら、ゆったりと日本酒を味わうことができるそうです。店主の西澤さんに、お店をはじめようと思ったきっかけや「スイミー」という店名に込めた思いなど、いろいろなお話を聞いてきました。

 

 

スイミー

西澤 眞咲 Masaki Nishizawa

1994年上越市生まれ。高崎経済大学地域政策学部を卒業後、東京で酒類の卸売会社に就職。1年後に退職し、リゾートバイトや、飲食関係の仕事を経験。2018年に上越市にUターン。2021年の3月に上越市で「スイミー」をオープン。サウナが好きで長野まで行くこともある。

 

20歳のときに言われたひとことが、お店をはじめるきっかけに。

――まずは、西澤さんがお店をはじめようと思ったきっかけを教えてください。

西澤さん:「お店とかこういう場所を持ちたいな」って最初に思ったのは大学生のときです。そのときは地域活性化について勉強していたんですけど、はっきりとした答えのないものなので「じゃあ自分で何ができるんだろう」って悩んでいたんですね。

 

――ふむふむ。

西澤さん:20歳くらいのときですかね。群馬の高崎の大学に通いながら飲食店でバイトをしていて、あるときカウンターで接客をしていたら、お酒を飲んでいたお客さんに「今日初めて群馬に来たけど、あなたと話せたから来てよかったよ」って言ってもらえたんですよ。「わ~嬉しい!」って思って、それが個人的にビビッときたんです。

 

――そう思ってもらえる場所を自分で作りたいって思ったんですね。

西澤さん:そうですね。「○○屋さんをしたい」というよりは、「『ここに来られてこの人と話せてよかったな』って思ってもらえる場所を作りたい」って。そのとき、自分が上手に話せたとかそういうことよりも、素直に「お酒ってすごいな」って感じたんですよね。だからお酒に関わることをしたいって思いました。

 

 

――じゃあ大学卒業後はお酒に関わるお仕事を?

西澤さん:東京でお酒の卸の会社に就職しました。けどそこは1年くらいで辞めて、ゲストハウスとかにも興味があったので、リゾートバイトで半年くらいいろんなところを転々としながら働いていました。

 

――リゾートバイトって、観光地に住み込みで働くアルバイトのことですよね?

西澤さん:それで仲居さんの仕事とかもやっていましたね。宿泊するお客さんのご案内やお部屋の掃除をして、夕食を出して、次の日は朝早く起きて朝食を用意するんですけど、夕食がいちばん忙しいのにいちばん楽しくて、「やっぱ飲食の仕事が好きかもしれないな」って思ったんです。それからは飲食の仕事ばっかりしていましたね。

 

ひとりひとりが、小さな「好き」を見つけるきっかけになる場所。

――「スイミー」の構想はいつからあったんでしょうか。

西澤さん:コンセプトを思いついたのは3年前とかかな。そのときは飲食店で働いていたんですけど、「仕事辞めるぞ」って決めたときに尾道に行って、古本屋さんを見たり、いろんなお店をされている方とお話したりしたんです。それで帰ってきたときに、ソファーで本を読みながら日本酒をちびちび飲めるような場所っていうイメージがぽっと浮かびました。

 

――尾道で見聞きしたことがいい刺激になったんですね。

西澤さん:あとは20歳のときに感じたような、「『ここに来てこの人に会えたから上越に来てよかった』って思ってもらいたい」っていう。そのふたつがはっきりしたコンセプトとしてありますね。

 

 

――「スイミー」っていう店名は、やっぱりあの絵本が由来で……?

西澤さん:そうなんです。久しぶりに読みますか?

 

――読みたいです!小学生ぶりかも。

西澤さん:スイミーっていう小さい魚がいろいろ冒険するお話ですけど、やっぱりみんなが印象に残っているのって、このシーンだと思うんですよ。ちっちゃい魚がたくさん集まって大きい魚をやっつけて、自分たちの居場所を守るっていう。それがなんかいいなって。

 

――懐かしいです。それで、「スイミー」をお店の名前にしようと思ったのはどうしてですか?

西澤さん:大きいショッピングモールが建って、商店街のちっちゃいお店がなくなっちゃうのって、「スイミー」で大きい魚が来ちゃったときのシーンに似ているのかもって最初はふと思ったんです。

 

――確かに重なるところがありますね。

西澤さん:いろいろ後づけではあるんですけどね。上越にディズニーランドみたいな大きい「ここが好き」ってものはなくても、お気に入りのお店があったり、好きな路地があったり、そういうちっちゃい好きなものが自分の中にいっぱい溜まると、総合的に「地元めっちゃ好きじゃん」っていうことになる気がするんです。

 

――ちっちゃい好きの積み重ねがあると、その街がどんどん好きになっていきますよね。

西澤さん:この場所が、そういう「好き」をお客さんひとりひとりが見つけていくきっかけになったらいいなって思っています。

 

 

――お店のメニューについても教えてください。置いている日本酒は、どういう視点でセレクトしているんでしょうか。

西澤さん:単純に自分の好きなものが多いかもしれないです。産地と味わいがバランスよくなるようには心がけていますね。「広島のお酒って美味しいんだ」とか、「こんなに味が濃いお酒があるんだ」とか、ギャップを分かって楽しんでもらえるようにしたいと思っています。

 

――美味しそうなお料理もたくさんありますね。飲食店で働いていた経験をもとに作っているんですか?

西澤さん:ネットで調べたりもしますよ(笑)。スーパーに行って「柿が安いな」って思ったら「柿 日本酒 おつまみ プロ」って調べるとか。

 

 

――「プロ」っていうキーワードを入れるのがポイントですね(笑)

西澤さん:お魚の処理をするときも「プロ」って入れて調べます(笑)。いちばん面倒くさいやり方が出てくるので、まずはそれをやってみるんです。実際に作ってみて、そこからスイミーらしくするにはどうしたらいいかなって考えて、自分なりにアレンジして完成ですね。

 

――日本酒との相性を考えてアレンジを?

西澤さん:それもありますね。あとは私ひとりでやっているので、自分が食べたいなって思えるかとか、毎日食べても嫌じゃないかなとか考えています。だからフライドポテトとかは置いていないんですけど、優しい雰囲気のメニューにしたいなっていう思いが自然と出てそうなっているのかもしれませんね。

 

たくさん応援してもらった分、今度は自分が誰かの背中を押したい。

――西澤さんがお店をやっていて嬉しかったことを教えてください。

西澤さん:毎日ありますよ(笑)。お客さんが来て「美味しいね」ってにこって笑ってくれたら嬉しいなって思います。あとは、自分が介在しなくてよくなるというか、お客さん同士がつながって盛り上がって、「ここに来られてよかった」「またここで会いましょうね」って言っているのを見るとすごく嬉しいですね。

 

――お客さんとの交流の中で気づくことってありますか?

西澤さん:最初は、みんな「上越は何もない」と思っているっていう前提でお店をはじめちゃったんですけど、お店に来る人で「上越は何もないよ」って言う人がぜんぜんいなかったのは想像と違いました。嬉しいことですね。逆に私が楽しいことをたくさん教えてもらっています(笑)

 

――最後に、西澤さんのこれからの目標を教えてください。

西澤さん:素直な気持ちとしては、薄く長くこの場所がずっとあったらいいなって。それから、大学生のときに「お店がやりたい」って思って、いろんなところで場所を貸してもらったりイベントをさせてもらったり、いっぱい応援してもらったんです。だから私も、誰かを応援して誰かのチャンスになるようなことができたらいいなって思っています。

 

 

 

スイミー

上越市本町6丁目3-10

営業時間:19:00-24:00

定休日:日曜不定休・月・火

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