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発酵の面白さを体験できる、「月岡糀屋」の味噌づくり教室。

朝ご飯の定番といえば、ごはんとお味噌汁の組み合わせを思い浮かべる人も多いと思います。日本の「食」に欠かせないお味噌。阿賀野市の「月岡糀屋」では、味噌をもっと身近に感じてもらおうと味噌づくりの教室を開いています。今回は阿賀野市の「風とぴあ」で開催された教室におじゃまして、「月岡糀屋」を営む尚洋さんと圭子さんにお話を聞いてきました。

 

月岡糀屋

月岡 尚洋 Naohiro Tsukioka

1979年阿賀野市出身。高校を卒業後、関東で公務員として働き、23歳のときに家業である「月岡糀屋」を継ぐ。モッツァレラチーズを味噌につけて食べるのが好き。

 

月岡糀屋

月岡 圭子 Keiko Tsukioka

1980年新潟市出身。高校卒業後、事務員として働いていたときに尚洋さんと出会い結婚する。子どもが通っている学校の校長先生に教えてもらった、味噌だけのちゃんちゃん焼きが好き。

 

明治から代々続く、地元の糀屋。

――今日はよろしくお願いします。味噌づくり教室、大盛況ですね。

尚洋さん:ありがとうございます。平日なのに皆さんに足を運んでいただけたのはとても嬉しいですね。

 

――この味噌づくり教室はいつからはじまったのでしょうか。

圭子さん:10年くらい前からはじめました。私たちからやろうって言ったわけではなく、「味噌づくりをしたいっていう人がいるから、教室を開いてくれない?」って声をかけられたのがきっかけでしたね。

 

尚洋さん:昔より味噌が使われなくなっていたし、最初は信半疑だったんですよ。でも、いざやってみたとき、すごく楽しかったんです。若い世代の人たちに、味噌づくりの楽しさをもっと伝えたいと思って今でも教室を開いています。基礎を知ると、自分で自由にカスタマイズできるのもあって、味噌づくりにハマる人も多いんですよ。

 

 

――「月岡糀屋」は5代続く「糀屋」なんですね。

尚洋さん:明確な年数はわからないですが、明治時代に糀や味噌をつくりはじめました。僕は最初、家を継ぐつもりはなくて東京で働いていたんです。

 

――そうだったんですね。どうして家業を継ぐことにしたのでしょうか。

尚洋さん:23歳のときに両親が亡くなってしまって。地元も好きだったし、「月岡糀屋」を絶やしちゃいけないなと思って家業を継ぐことにしたんです。味噌づくりを手伝ってはいたけど、まだ知識もなかったので五泉や新発田の味噌屋さんで味噌づくりを学んでから本格的に「月岡糀屋」で味噌づくりをはじめました。

 

 

――現在「月岡糀屋」では味噌以外にどんなものをつくっているのでしょうか。

圭子さん:甘酒や糀、塩糀をつくっています。甘酒は、苦手な夫も飲めるくらい、飲みやすいと思います。

 

尚洋さん:そうそう(笑)。今日の味噌教室でもヨーグルトに甘酒をかけたものをお出ししたんですけど、好評でよかったです。

 

発酵を止めない、自然な味噌を。

──「月岡糀屋」でこだわっていることを教えてください。

尚洋さん:原料となる米や大豆は自分たちでつくっています。うちは糀屋であり、農家でもあるんです。普段は僕らと従業員の3人でやっているんですけど、ゴールデンウィークに田植えをするときは、親戚にも手伝ってもらっています。

 

圭子さん:月岡家は本当に仲がいいなと思います。おじさんなんて、気を遣って声かけるのをやめようとしたら「俺はもういらねんか」って(笑)。子どもたちも喜んで田植えを手伝ってくれますし、大変だけどすごく楽しいんです。

 

――その光景を想像するだけで、心があたたかくなります。

尚洋さん:味噌づくりでのこだわりでいうと、発酵を止めないっていうことを大切にしています。一般的な味噌って常温で保存できるように加工されているんです。でもうちの味噌はそういった加工をせず販売しています。

 

圭子さん:常温で保存ができない分、お客様にはお手間をおかけしているんですけど、自然な状態の味噌を届けたくて。使っているうちに発酵が進んでいって、色が濃くなったり、味に深みがでたり、その時々の変化を楽しんでもらえますよ。

 

 

――ひとつの味噌でも、いろんな味わいを楽しむことができるんですね。

尚洋さん: うちでは「十割」と「十二割」、ふたつの種類の味噌をつくっています。塩味のしっかりとした「十割」は豚汁みたいな野菜の甘さが引き立つ料理にぴったりですし、塩っ気の中にも甘さのある「十二割」はおにぎりに塗って焼いてもらうと香りと甘さが引き立つのでおすすめですよ。

 

――聞いているだけで食べたくなってきました……。お味噌や糀をつくるなかで、難しいと感じることはどんなことでしょうか。

圭子さん:糀はとても繊細で、温度や湿度によって状態が変わりやすいところですね。菌みたいな、目には見えない小さな生き物が相手なので、何年やっていても難しいなと感じています。

 

尚洋さん:糀ができる日の朝は毎回ドキドキだよね。ずっと勉強し続けていかないとって思います。

 

味噌づくりの楽しさを、これからも。

――「月岡糀屋」では、親子を対象にした味噌づくり教室も開催されていると聞きました。

尚洋さん:親子向けの教室は人気ですね。五頭の自然の家をお借りしたときは、豆を煮て潰すところからつくったんです。ただ混ぜるだけじゃなく、その前の工程も体験してもらえたのは面白かったですね。

 

圭子さん:豆を潰して冷ましている間に、薪をくべて、お米を炊いて豚汁をつくってみんなで食べたんです。その時間もとても楽しかったですし、改めて子どもと味噌をつくる楽しさを教えてもらいましたね。

 

――どうしてそう感じたのか、詳しく教えてください。

圭子さん:大人がやってもそうですけど、子どもが味噌をつくるとき、つくり方の個性がよく出るんです。豆をつぶすにも、手のひらなのか、手をグーにするのか、はたまた道具を使って潰すのか……。それぞれの個性がでて、とても面白いですよ。

 

 

――同じものをつくっていても、まったく違う方法なんですね。

圭子さん:つくった後も、その味噌を食べたとき美味しいって言ってもらえたら、その子も嬉しくなるし、お母さん的にもお味噌をつくってもらえて嬉しいし。お味噌が美味しくて、その子の自己肯定感が上がっていくって、とてもいいことだと思うんです。

 

──まさに、一石二鳥ですね。お味噌をつくる中でのやりがいを教えてください。

尚洋さん:お客さんに「ここの味噌じゃなきゃだめ」って言ってもらえるときですね。うちのお客さんは地元の方が多くて、地元に愛されている味噌なんだと実感できて嬉しいですね。

 

 

──「月岡糀屋」のこれからの目標を教えてください。

尚洋さん:味噌づくり教室を通して手づくり味噌の美味しさをもっと伝え続けていきたいですね。その中で、小学校の授業の一環として味噌づくり教室を開いてみたいんです。子どもたちが「そういえば小学校のとき、味噌を自分でつくったな」と思い出してくれるような体験の場をつくっていきたいですね。

 

圭子さん:みなさんに美味しい食べ方を提案できるような、味噌や糀を使った、新しい商品を出してみたいですね。発酵食品を日常の食事に取り入れることは難しいことじゃないんだよって伝えていきたいです。

 

──読んでいる方にひとこと、お願いします!

尚洋さん:手づくりの味噌はつくり方は同じだけど、その後の発酵の期間や温度によって、唯一無二の味噌になります。自分だけの味をつくりに、ぜひ教室に参加してみてください。

 

圭子さん:味噌は身体にもいいので、ぜひ1日1回、お味噌汁を飲んでくれたら嬉しいですね。

 

 

月岡糀屋

阿賀野市福永1181

0250-68-3734

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