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親しみやすいカジュアルな割烹を目指す「割烹うをくら」。

皆さんは「割烹」と聞いて、どんなイメージを持ちますか? 「あまり行く機会がない」とか「敷居が高くて入りにくい」という印象を持つ人も多いのではないでしょうか。今回紹介する新潟市東区の「割烹うをくら」は、そんなイメージを払拭するカジュアルな割烹を目指しています。暖簾をくぐると映画やジャズのポストカードが並ぶ店内で、店主の近藤さんが出迎えてくれました。

 

 

割烹うをくら

近藤 信之輔 Shinnosuke Kondo

1978年新潟市東区生まれ。調理師専門学校卒業後、しゃぶしゃぶ専門店「金しゃぶ」や、ホテルや旅館、割烹などでの修業を経て、父親が経営する「割烹魚倉」敷地内で「美味彩菜うをくら」をオープン。跡を継いでから店舗の建て替えに伴い「割烹うをくら」をリニューアルオープンする。趣味は映画鑑賞、落語鑑賞、ジャズを聴くことと幅広い。

 

魚の行商からはじまった「割烹うをくら」の歴史。

——映画やジャズのポストカードが飾ってありますね。お好きなんですか?

近藤さん:映画は流行のものじゃなくて、ミニシアター系のものをよく観ますね。落語やロックバンドのHi-STANDARDも好きなんですよ。趣味が多いんでしょうね。

 

——そう言われてみると、近藤さんってロックバンドが好きそうな雰囲気がありますね。普段からそういうカジュアルな格好でお店をやられているんですか?

近藤さん:最近は白衣を着る機会が少なくなりましたね。こっちの方が親しみやすいかなーと思って(笑)

 

 

——近藤さんは何代目の店主になるんでしょうか?

近藤さん:僕で三代目になります。創業は80年以上前で、もとは僕のおじいちゃんがおばあちゃんとはじめた魚屋でした。魚を乗せたリヤカーを引っ張って、大きな農家を中心に魚を売り歩いていたそうです。それでおじいちゃんの「倉蔵」っていう名前をとって、「魚倉」っていう屋号なんです。

 

——最初は魚屋さんだったんですね。

近藤さん:でも農繁期になると忙しくなる農家のお客様から、「魚だけじゃなくて料理を作ってきてほしい」という声が増えて、料理人として和食の修業を積んだ父が仕出し屋と割烹をはじめたんですよ。ちょうどバブル景気と重なって繁盛したんです。

 

——そのお店を近藤さんが受け継いだんですね。

近藤さん:最初は父のやっている「割烹魚倉」本館とは別に、同じ敷地内で「美味彩菜うをくら」という懐石料理のお店をやっていました。でも父が体調を崩してしまったので、本館のランチや宴会、「美味彩菜うをくら」の営業をひとりで全部回すことになってしまったんですよ。自分でやってみてその大変さや、父の偉大さに気がつきましたね。

 

——「美味彩菜うをくら」の方って、今はやっていないんですか?

近藤さん:店舗前の道路拡張に伴って建物を新築することになったので、「割烹うをくら」にまとめたんです。

 

有名しゃぶしゃぶ店で経験した修業の日々。

——近藤さんは最初から家業を継ぐつもりだったんですか?

近藤さん:「どこも働くところがなかったら継ごうかな」というくらいの気持ちでした(笑)。まだ若かったから、もっと他にやりたいことが見つかるんじゃないかと思っていたんですよ。念のために調理師専門学校には行きましたけどね。

 

——専門学校を卒業した後は?

近藤さん:父の友人から紹介していただいた「金しゃぶ」というしゃぶしゃぶ専門店で働くことになりました。少ない料理人で調理場を回していたので、とにかく忙しかったです。親方はお店で寝泊まりしていましたし、僕も深夜2時過ぎに家へ帰って、お風呂に入ったらすぐ出勤していました。

 

——そうなると、どっちに帰っているのかわからないですね(笑)

近藤さん:本当にその通りですよね(笑)。自分がケガをして休んだらお店が回らなくなるという使命感も芽生えて、趣味だったスケボーやスノボをやめてしまったんですよ。

 

 

——プロとしての自覚が芽生えたんですね。

近藤さん:「金しゃぶ」では料理に向き合う姿勢を学びましたね。親方は料理人として舌を大切にしていて、歯を磨くときに舌を傷めないよう、歯ブラシも歯磨き粉も使わず指だけで磨くんです。さすがにそこまで真似できませんけど、徹底した料理人魂に感動しました。

 

——当時のエピソードで印象に残っていることはありますか?

近藤さん:親方が盛りつけ見本を作ってくれて、同じものを10人前作るように言われたんです。ところが若かった僕はオリジナルのテイストを出したくて、見本と違うものを作ったんですよ。そしたら「見本通りにすら作れない奴が、自分の色を出そうとするんじゃない」って叱られました(笑)。そういうことも含めて、いろいろなことを教えてもらいましたが、建物の老朽化に加えて狂牛病が流行してしまったこともあって「金しゃぶ」は閉店することになったんです。

 

——あらら、そうだったんですね。

近藤さん:その後はホテルや旅館、割烹や懐石料理の店で修業を積んで、最終的に家業を継ぐ決心をしました。

 

ランチメニューのおすすめ「ももたろう定食」とは。

——「割烹うをくら」さんでは、どんなお料理が食べられるんですか?

近藤さん:四季折々のコース料理が基本になっています。ただ、ご予算やボリューム、お料理の好き嫌いといったお客様のご要望をお聞きしながら、オーダーメイドに対応することも多いですね。

 

——なるほど。お料理をする際に、こだわっていることがあったら教えてください。

近藤さん:僕は落語が好きでよく聞くんです。なかでも大好きな立川談志が語った言葉に「伝統を現代に」というものがあります。「伝統的な作品のオリジナリティは大切にしながらも、現代風に表現していかないと滅びてしまう」という意味なんです。僕も料理にその考え方を取り入れるようにしています。

 

——へぇ〜、例えば?

近藤さん:ブリのたたきはポン酢で食べるのが一般的ですが、うちはバルサミコ酢で食べていただいてます。牛乳で作る「美人豆腐」にはチーズや生クリームを使ってみたり。今まで食べ馴染んできたもののなかに、驚きを感じてほしいと思っています。まあ、僕も作りながら楽しんでいるんですよね(笑)

 

 

——食べる人に新しい発見をしてほしいんですね。

近藤さん:そういうことです。今後はTeNYの番組で「夕方のレシピ」を担当している鍵宮先生とコラボしたメニューを、20名様限定でご提供する予定です。

 

——それは楽しみです。平日限定でお手頃なランチメニューも提供されているそうですね。

近藤さん:「割烹」って聞くと敷居が高く感じるじゃないですか。お店にも入りにくかったりして。そういうイメージをなくして、気軽に足を運んでほしいという思いではじめたんです。ランチメニューを食べて気に入ってもらえたら、今度はコース料理を食べにきてほしいですね。

 

——ランチメニューのおすすめはありますか?

近藤さん:「ももたろう定食」ですね。お造りをはじめ、揚げ物、焼き物が入っていて、「コース料理のランチ版」といってもいいメニューになっているんですよ。これを食べていただくと「割烹うをくら」の味がわかっていただけると思います。

 

——「コース料理のランチ版」って、わかりやすいですね。「ももたろう定食」っていうメニュー名には、どんな意味が込められているんですか?

近藤さん:意味はありません(笑)。ただ誰にでもわかりやすくて、親しみやすい名前かなと思って……。次回は「きんたろう定食」にしようと思っているんです。

 

 

 

割烹うをくら

新潟市東区紫竹3-1-9

025-244-2957

11:30-14:00/18:00-21:30

水曜休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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