ありのままの自分を、洋服に。
見附のデザイナー「山田 萌永」さん
ものづくり
2026.07.15
今年の春に大学を卒業して、自身のブランド「AMUNI NOU(アムニヌ)」を立ち上げた山田萌永さん。見附で作られるニットや織物を取り入れながら、「自然体」を大切にした洋服を作っています。幼い頃からファッションが好きだったと話す山田さんに、その出会いや「AMUNI NOU」のことなど、いろいろお話を聞いてきました。
山田 萌永
Moe Yamada
2001年見附市出身。12歳まで東京都で過ごし、中学・高校時代は見附市で暮らす。専門学校に進み英語を学ぶ中で、ファッションを学ぶことを決意し、国際ファッション専門職大学へ進学。今年大学を卒業し、在学中に立ち上げた自身のブランド「AMUNI NOU」の活動を本格的に開始。最近のマイブームは、サウナと温泉。
洋服が好きだった、幼少期。
ファッションを仕事にするまで。
――山田さんが着ている黒と白のグラデーションのスカート、とても素敵です。
山田さん:ありがとうございます。これは昨年作ったスカートなんです。見附でニットを作っている職人さんにお願いして、黒と白を使ったグラデーションのプログラミングを組んでもらったんですよ。ハイゲージという細い糸を使って表現していただきました。
――そもそも、山田さんがファッションを好きになったきっかけは?
山田さん:東京に住んでいる祖母がファッションデザイナーだったんです。クリスマスは毎年、私に似合いそうな洋服をプレゼントしてくれていて。それを開けるとき毎回「可愛い」ってときめいて、気づけばファッションに魅了されていました。幼稚園の頃から自分で着る服は自分で選んでいましたし、小学校に上がったときは、1週間分の服を曜日ごとに決めていましたね。
――1週間分。本当に、ファッションがお好きだったんですね。
山田さん:当時はファッション系のゲームをひたすらやっていましたし、ファッション関連の雑誌も読み漁っていました。特別何かを勉強したわけじゃないですけど、「この人にはこれが似合う」みたいな、その人にあった洋服を考えて選ぶのも楽しくて、よくやっていたんです。
――でも高校卒業後は、ファッションではなく英語を学ばれていたんだとか。
山田さん:当時、パリにものすごく憧れがあったんです。それもあって、高校を卒業後は東京の外国語専門学校で英語を学ぶことにしました。ただ、入学した2020年はちょうどコロナ禍で、授業のほとんどがオンラインだったんですよ。対面でコミュニケーションを取ることが大事なのに、それができない状況に行き詰まっちゃって。そこで、自分の将来をもう一度考えてみたんです。
――あらためて、これからのことを考えてみようと思ったわけですね。
山田さん:その中で、『「やりたいこと」の見つけ方』という本に出会って。その本は「自分の好きなことと強みを合わせたものが、自分にしかできない仕事だ」って書いてありました。自分に置き換えて考えたとき、好きなことはファッションで、感受性が豊かで好奇心旺盛なところが強みだって分かったんです。それを活かしたお仕事は、ファッションを通じて何かを作って、伝える仕事なんだ、というところにたどり着きました。
――そして、ファッションの道へ進むことにしたと。
山田さん:そのビジョンを父に話したら「すぐに学校に行ったほうがいいよ」って言ってくれて。専門学校を中退して、編入できる大学を探しました。いろんな大学の名前が載っている表の中で、いちばん最後に「国際ファッション専門職大学」を見つけて。「今しかないな」と思って編入を決めました。


Advertisement
自分の考えをかたちにしたい。
山田さんがデザイナーになると決めた理由。
――ファッションのお仕事はいろいろあると思います。その中でも、デザイナーになりたいと思ったのはどうしてだったのでしょう。
山田さん:大学2年生までは、ファッションを仕事にしたくても、具体的なイメージはなかったんです。最初は表現者になろうとモデル事務所に所属していました。でもあるとき、「年を重ねて現れる人間の美しさよりも、人が作ったものに価値がある」と思って。作品としてかたちにすることに興味を持ちはじめたのがきっかけです。
――それから、デザイン本格的に学びはじめたんですね。
山田さん:大学3年生のときに、一年を通してさまざまな国内外のコンテストに作品を出すっていうプログラムに参加したんです。コンテストが何個も重なっているときはすごく過酷なスケジュールでした。友達の誘いを、何度断ったか(笑)。でもそれくらいしないと「間に合わない」って思ったんです。
――間に合わない、とは?
山田さん:1年生のとき、学部長に「デザイナーになるには10年かかる」って言われて。私は現役で大学に入ったわけでもなかったので、周りよりも必死でやらないと、その10年にも間に合わないし、自分に自信をつけたかったので、とにかくコンペに作品を出し続けました。
――そんな中、「Sustainable Fashion Design Award 2025(SFDA)」で、最高賞に続く「東京都知事賞」を受賞されました。
山田さん:このコンテストで賞をいただけたときに、はじめて「デザイナーに向いているのかも」って思えたんです。私は結果を出さないと自分に自信が持てなかったから、とにかく量をこなしたんです。その結果、賞をいただくことができて、デザイナーになろうって決意しました。
――卒業後はどこかのブランドのデザイナーとして活躍するという選択肢もあったかと思います。自身のブランドを立ち上げたのには、どんな思いが?
山田さん:実は都内のブランドでデザイナーとして内定をいただいていたんです。でも、「SFDA」での副賞として、パリコレで自分のブランドのコレクションを発表できることになったんです。高校生の頃から憧れていたパリコレに行けることが決まってから、これからも自分のやりたいことを120%していきたいと思って。内定を辞退して、自分のブランドを立ち上げることにしたんです。

Advertisement
そのままの自分を大切に。
見附のニットで表現する、「AMUNI NOU」。
――山田さんのブランド、「AMUNI NOU」はどんなブランドなのか、教えてください。
山田さん:私は、洋服はメッセージを伝える媒体だと思っているんです。トレンドよりは、そのデザイナーの思想や哲学を伝えていける洋服を作っていきたくて。「AMUNI NOU」を通して、「そのままの自分を大切にする」ということを伝えていきたいと思っています。
――その思い、もう少し詳しく教えてください。
山田さん:「そのままの自分を大切にする」ことは、私が大事にしている生き方でもあるんです。人って完璧なことはなくて、元々どこかは欠けている存在なのかなと思っていて。そんな不完全さも大切にしながら、「自然体」をキーワードに、柔らかくて、着心地のいい服をデザインすることを意識しています。
――それは、昨年の秋冬コレクション「Returning to Nature」にも表現されているんですね。
山田さん:シーズンごとのコレクションにはテーマがあるんですけど、昨年の秋冬は「自然への帰路」をテーマに洋服を作りました。私が今着ているスカートのグラデーションは、曖昧で整っていない美しさを表現しています。他にも、わざとニットに穴を開けたり、形をアシンメトリーにしてみたり、私の思う「自然」を、洋服を通して伝えています。
――この洋服に使われているのは、見附で作られたニットです。
山田さん:私が新潟で服を作ろうと思ったのは、地元の見附でニットを作っていたからです。正直、見附に生まれていなかったら、新潟で服は作っていないと思います。大学3年生のときに、ニットの工場のインターンシップに行かせてもらって、製造工程を見せてもらったんです。その中で1本の糸から作られていくニットに面白さを感じて。昨年のコレクションはニットだけでしたが、パリで発表するコレクションには、見附の織物も使おうと思っています。
――パリのコレクションも楽しみです。コレクションのテーマを聞いてもいいですか?
山田さん:もちろんです。「Light Traces」直訳すると「光の軌跡」というテーマで洋服を作ろうと思っています。光は過去にあると思っていて。自分は過去に出会ってきた人や経験によって形成されているし、新潟の繊維産業の歴史も、いろんな方が積み重ねてきた過去があって今の技術につながっている。そうした過去の光が集まって、そして未来への道になっている、という意味を込めています。


Advertisement
これからの「AMUNI NOU」のこと、
山田さんのこと、聞いてみました。
――「AMUNI NOU」をこれから、どんなブランドにしていきたいと考えていますか?
山田さん:「ありのままの自分を大切にする」という思想は変わらないと思います。でも、その伝え方とか表現の幅は、出会う人や経験によってきっと変化していくはずで。これから展示会や受注会でいろんな人と出会っていく中で、その人たちとの関わりがちゃんと自分のクリエーションに還元されていくような、そんな育ち方をしていけたらいいなと思っています。
――今月の27日からは、弥彦村の「旧鈴木家住宅」で展示会も開催されますね。
山田さん:7つのブースを設けて、大学時代のデザインや受賞作品も展示します。当時の葛藤や影の部分もきちんと見せたくて、自分の人生を、ひとつの時間軸で振り返れるような映像作品も展示予定です。順風満帆だったわけじゃないので、綺麗なだけの展示にはしたくなくて。2027年春夏コレクションの受注会も予定しているので、気になる方はぜひお越しいただけたら嬉しいです。
――最後に、今後やってみたいことを教えてください。
山田さん:中高生と一緒に、見附のニットを使って何か作るワークショップをやってみたいです。地域が活性化するきっかけになればいいなと。それから、もう一度パリコレに挑戦したいですし、30代半ばになったら海外の大学院にも行くつもりです。学ぶ内容はファッションに限らず、哲学でも生物学でも、その時興味があるものを学びたいですね。
――これからの活躍も楽しみにしています。今日はありがとうございました!

Advertisement


