大切なものを入れる「ちょうどいい」箱を製造する、村上の「藤井折箱屋」。
ものづくり
2021.02.20
今や珍しくなった折箱屋。現在は紙製をメインに地場産業の一翼を担う。
城下町の雰囲気が現在も色濃く残る県北・村上市の中心街では、他所ではなかなかお目にかかれない、現代ではすっかり珍しくなった仕事を手掛けるお店が、今も脈々と営業を続けていたりします。繊細な和菓子や工芸品、ちょっとした贈り物などを包む「箱」を製造する「藤井折箱屋」さんはそのひとつ。家としては9代目、折箱屋としては4代目にあたるという同店の藤井和徳さんに、いろいろお話を伺ってきました。


藤井折箱屋
藤井 和徳 Kazunori Fujii
1978年生まれ。新潟大学経済学部を卒業後、システムエンジニアとして県内の企業で働いたのちに帰郷し、折箱・紙箱の製造を営む家業に入った。村上大祭や村上商工会議所青年部など、地域活動にも積極的に関わっている。アニメやアイドルに造詣が深く、推しは地元村上市出身のNGT48・本間日陽さん。2児の父。
地元の特産品を入れる紙箱を、オーダーメイドで1コから製造。
――さっそくですが、こちらでは何を作っているのですか?
藤井さん:紙製の箱を作っています。主なお得意様は、地元のお菓子屋さんや村上木彫堆朱のお店です。基本的には厚紙を切って・折って・貼り付けて作るわけですが、オーダーメイドで、1つからでも製造できますよ。
――なるほど。それを折箱っていうんですね。
藤井さん:正確に言うと、実は違うんですよ。「折箱」って本来は、経木を折り曲げて作る木製の箱のことなんです。『サザエさん』で波平さんやマスオさんが飲んだ後によく自宅へ持って帰っている寿司折とかのアレです(笑)

――あー、赤ら顔でぶら下げているアレですね(笑)
藤井さん:うちも材料はまだ残っていますが、今はほとんど需要がないんです。父の代から世間の需要がだんだんシフトしていって、私が帰ってきた15年前にはほとんど木製の折箱は作っていませんでした。なので「折箱屋」と称してはいますが、もともとの意味の「折箱」にはお休みをいただいています(笑)。現在は紙製の箱を作っています。
――そうなんですね(笑)。製造工程を見学させてもらってもいいですか?
藤井さん:いいですよ。どうぞ。





3代前に大工から商売替え。当代はシステムエンジニアから転身して家業に。
――年季の入った機械や器具ばかりですね。
藤井さん:そうですね。すべて父の代から使っているもので、最近はメンテナンスや修理をしてくれる業者さんを探すのにも一苦労です。この間は、ある器具の刃を研いでもらうのに仙台の業者さんにお願いしました(苦笑)。ちなみに、うちでは現在も長さの単位はメートルでなく寸尺です。
――そうなんですか。ちなみに、和徳さんで何代目なんですか?
藤井さん:家としては9代目、折箱屋としては4代目です。つまり、私のひいおじいちゃんが折箱屋の商売を始めたんです。家の言い伝えでは、ひいおじいちゃんは元々大工をやっていたんですけど、あるとき仕事中にケガをして、大工ができなくなっちゃったらしくて。それで同じ木工で体への負担が断然少ない折箱の製造に商売替えしたんですね。何年のことかは記録が残っていないんで分からないのですが。
――和徳さんは大学を卒業後、システムエンジニアのサラリーマンをされていたそうですけど、どうしてその真逆ともいえる家業に?
藤井さん:直接のきっかけは父が体調を崩したことですが、もともと帰ってくるつもりではいました。地元が好きですから。確かに業種は全く違いますけど、サラリーマン時代の経験やつながりが家業でも活きたりしていますよ。当時の取引先からノベルティで使う箱の発注があったり、同じ脱サラ組の元同僚からも注文があったり……。

ニーズに「ちょうどいい」箱を。思わぬ方面からの注文をヒントにコロナ以後の活路を。
――現在の仕事のやりがいは?
藤井さん:時代の流れで過剰包装は敬遠されるようになってきていますが、ものを包む文化自体は廃れないと思います。極端な話、ものを贈るときにそのものを裸で渡す人っていないじゃないですか(笑)。式を滞りなく進めるためには、また得意先の商品を売るためには、まず自分たちの箱が必要なんだという責任感を持って仕事をしています。紙箱は、簡素過ぎず、かといって大仰でもない、ちょうどいい存在としてまだまだ日常的・社会的に必要とされていると思っています。今後もそういう需要に応えていきたいです。
――ところで、新型コロナの影響はいかがですか?
藤井さん:やっぱり大きいですよ。冠婚葬祭が縮小したり、イベント・催事がなくなったりで。冒頭に述べたようにうちの箱は主に地元でお菓子や堆朱の製品を入れるのに使われているのですが、観光の方が少なくなったので地元ではなかなか売れないし、また逆に物産展や百貨店の催事にもなかなか出られなくなったので、そのぶん箱も出ません。最近は少し持ち直してきましたが、再拡大でまたどうなることやら……。
――今後の具体的な展望があれば。
藤井さん:折箱屋って昔は各地域に何軒かは必ずあって、以前は同業組合もあったんですが、今はもうほとんどなくなっちゃいました。ただ今はインターネットに「折箱屋」っていう名前を出していると、検索とかで引っかかるのか、思わぬところから注文が舞い込んだりもします。うちも県外の考古学教室とか、陶器やガラスなどの芸術分野の方面からの注文を受けたこともあります。紙箱って早く作れてサイズの融通も利く割に比較的リーズナブルですから、そういう方面の需要も掘り起こしていければいいなぁと考えています。個人的にも、推しアイドルのCDケースをオリジナルで作ったりして楽しんでいますし(笑)。こちらの記事を読んだ方も、もし大切なものを贈りたい、あるいはしまっておきたいけどちょうどいいサイズや見栄えの箱がなかなか見当たらない、という方はぜひお気軽にお問い合わせいただければ。
――なるほど。思い出の品とか、既製品でないものを贈ったり保管したりする時にうってつけ、ということですね。いいこと聞きました(笑)。本日はありがとうございました!


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