今春、新潟駅内に2号店オープン。老舗「とんかつ太郎」の意外な歴史。
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2024.04.14
新潟名物タレかつ丼でお馴染み、古町の「とんかつ太郎」。言わずと知れた老舗が、この春、新潟駅内「CoCoLo新潟」に出店すると聞き、取材に伺いました。のれん分けしたお店はいくつかあるものの、「とんかつ太郎」が2号店を設けるのは今回が初めてだそうです。今回は代表の小松さんに、「タレかつ発祥の店」と掲げるようになった意外なエピソードや創業当時のお店の様子など、いろいろとお話を聞いてきました。

とんかつ太郎
小松 寿雄 Hisao Komatsu
1964年新潟市生まれ。「とんかつ太郎」3代目。高校卒業後に東京の老舗「レストラン東洋軒」、新潟市のファミリーレストランで経験を積む。その後改めて調理師学校で学び、居酒屋やホテルなどの厨房で働く。1989年に家業に入り、2003年に代表取締役に就任。大型オートバイを乗りこなし、音楽、読書を好む。

町の洋食店からスタートした、とんかつ専門店。
——小松さん、料理人デビューはフレンチだったそうですね。
小松さん:「とんかつ太郎」は、町の洋食屋みたいなところからはじまっているんですよ。以前はステーキとかビーフシチュー、テールシチューなんかもありましたから。父親も、それから4代目の甥っ子も「日比谷松本楼」という老舗洋食店にお世話になりましたし、私は高校を卒業して、宮内庁ご用達のフレンチレストラン「東洋軒」に入りました。「日比谷松本楼」も「東洋軒」もフレンチの先駆けのようなお店ですね。
——洋食からキャリアをスタートされているとは意外でした。
小松さん:今は天ぷら鍋でカツを揚げていますけど、昔は大きいフライパンを使っていました。そんなところにもフレンチの名残がありました。

——洋食メニューがあったのは、初代の頃ですか?
小松さん:いえいえ、父親の代までです。1991年だったかな。「このままじゃやっていけないから」ってとんかつ専門店にリニューアルしたんです。カツ丼が売れるから、それをメインにしましょうって。
——じゃあきっと、昔から通われている地元の方は洋食のイメージもお持ちなんですね。
小松さん:ハンバーグ、グラタン、オムレツ、オムライスが好きなお客さまはいらっしゃいましたよ。まさに「昔ながらの洋食屋」って感じでした。でもカツ丼しか売れなくなっちゃったっていう(笑)。ビーフシチュー、ハンバーグに使うデミグラスソースは1ヶ月かけて作っていたんですよ。うちはインスタントを一切使わない、エビ以外は冷凍ものも使わないんでね。それだけ手間ひまかけてこさえるのにダントツでカツ丼が人気なんですもん。今は「とんかつ太郎」なのにとんかつを注文される方はほとんどいないしね(笑)。タレかつ丼ばっかりで。

美味しいソースを味わうために誕生した「タレかつ」。
——いつ頃から「タレかつ」が浸透したんですか?
小松さん:私が高校生になる頃までは、県内にもあまり知られていなかったんじゃないですか。この近辺だけっていうか、せいぜい常連だった大倉修吾さんがラジオで話してくださるくらいでした。昔は「タレかつ」なんて呼ばれていなくて、「とんかつ政ちゃん」の現社長が「タレかつ丼」と名前を付けて、広げてくれたんですよ。「政ちゃん」の初代はうちで修業してお店を出されて、それが広まったっていうかたちですかね。
——「政ちゃん」も「とんかつ太郎」さんからのれん分けだったんですね。知らずに失礼しました。
小松さん:うちは「新潟タレかつ発祥の店」となっているでしょう。あれはね、店舗の改装に関わった業者さんが「どうしてもこの文言を入れさせてくれ」というので付けることにしたんですよ(笑)。私は「別にどうだっていいよ。かつ丼はかつ丼だよ」って言ったんだけど、うちからのれん分けしたお店がいくつかあるから、「とんかつ太郎」は「発祥の地」だって。「まぁ、それもいいか」ということでそうさせてもらっています。
——関屋には「とんかつ太郎分店」さんもありますけど、支店ではないですもんね。
小松さん:初代が「店を広げるんじゃない」って考えだったので、ずっと古町の店舗だけで営業してきました。味が変わるから店は出すなと言われていたんです。
——土日はやっぱり大行列ですか?
小松さん:そのときによりますかね。並ばれるのは観光でいらっしゃる県外の方が多くて、地元の方は少ないですよ。行列ができはじめたのは、「クッキングパパ」とANAの機内誌「翼の王国」に紹介された頃からです。あるとき「飛行機から降りて急いでタクシーで来ました」と北海道の方が来て、夫婦でびっくりしちゃった。それから行政の観光協会でも地元のグルメ特集をはじめるようになったし、テレビでも何度か紹介してもらいました。

——それで評判が評判を呼ぶようになって「タレかつ丼」がどんどんメジャーになったんですね。ちなみに味の決め手というと?
小松さん:いちばんは新潟の美味しい水です。お米を炊くのにもタレ作りにも新潟の水は欠かせません。水がきれいなところってなんでも美味しいじゃないですか。水はものすごく大事ですよ。あとはラード100%の油を使っているところですかね。カツがカラっと揚がります。「いくらでも食べられる」「重くない」っていうのは、ラード100%で揚げているからです。
——調理法はずっと変わっていない?
小松さん:調理法は変えていません。でもタレの配合は微妙に変えています。今はパソコン仕事が多いから、昔みたいに体力勝負じゃないでしょう。だから甘めに仕上げています。新潟は寒くて濃い味を好むと言われていますけど、その時代に合わせて調整しています。
——そこに実はフレンチの要素が加わっているというのが興味深いです。
小松さん:そう、フレンチの要素があるから、本来「タレ」じゃなくて「ソース」ってことになるのかな。皆さん「タレかつ」と言ってくださるけど、本当は私「ちょっと違和感あるかも」と思っています(笑)。でも、皆さんが納得してくれているんだから「タレかつ」でいいんです。
——そうか! フレンチだったら味の決め手は「ソース」ですもんね。
小松さん:初代はそう考えたんじゃないかと思いますよ。「タレかつ」は「卵で閉じない調理法が楽だから誕生した」といわれているみたいですけど、おそらくそうではなくて「美味しいソースができたからこれでいこう」ってところからはじまったんじゃないかと思いますね。それから「とんかつ太郎」は屋台からスタートしたといわれていますけど、実はそれ以前に大竹座の裏側で店舗営業していたんですね。昔からのお客さまがそう教えてくださいました。
——そうなると創業は?
小松さん:創業93年です。

初の2号店は、ひとりでも入店しやすいスペースで。
——これまで2号店は出されていなかったとお聞きしましたけど、この春からは新潟駅の「CoCoLo新潟」に出店されるそうですね。
小松さん:支店を出すのははじめてですよ。正直なところ、何度かお話をいただいていたもののお断りしていました。というのは、任せられる後継ぎがいなくて。甥は「日比谷松本楼」さんでお世話になっていましたしね。それに駅前と駅南に「とんかつ政ちゃん」があるから、うちが駅の広いスペースで営業するなんて申し訳ないとも思っていたんです。私たち夫婦の間では「もう年だし、辞めるのがベストだよな」なんて話になっていましたし、そのつもりでいました。「60歳になったらどうするか結論を出そう」ってね。
——それでも出店をお決めになったのは?
小松さん:改めてオファーをいただいて、その青写真が8席のこじんまりしたスペースでうちにぴったりだと思ったからです。これだったら「政ちゃん」にも迷惑はかけないだろうとも思いました。それで甥に声をかけたところ「やってみようよ」と言ってくれて。なんでもパソコンが必要だし、若い人の力を借りるのがいちばんですね(笑)

——そうでしたか。いやぁ、新しいお店も楽しみです。
小松さん:はじめての支店だし、駅の中なのでドキドキしています。女性ひとりでも入っていただける店舗を目指したんですよ。
——これを読まれた方が「とんかつ太郎」さんがなくなっちゃうかもって心配するかもしれないと不安になりましたが、甥っ子さんもいるし大丈夫ですね!
小松さん:彼が挫折しない限りは大丈夫ですので、安心してください。新しいお店も期待してくださいね。

とんかつ太郎
新潟市中央区古町通6番町973
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