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地元の人々に愛され続けて28年。「トリコロール」のクレープ。

学生の頃によく立ち寄っていたお店ってありますか? そういうお店って、ずっと思い出として残っているものですよね。五泉市の村松にある「トリコロール」も、地元の学生達から長い間親しまれ続けてきたお店のひとつです。30年近くクレープを焼き続けてきた店主の笠原さんに、お店の歴史やこだわりを聞いてきました。

 

 

トリコロール

笠原 鉄夫 Tetsuo Kasahara

1945年中国天津生まれ。生まれて間もなく家族とともに日本へ引き上げ、村松で食料品店をはじめる。家業の食料品店、地元スーパーなどで働き、1994年にクレープショップ「トリコロール」をオープンする。趣味は実益を兼ねた海釣りや山菜採り。

 

知ったばかりのクレープでお店をはじめる。

——笠原さんは、この村松で生まれ育ったんですか?

笠原さん:いや、生まれたのは外地。昭和20年に中国の天津で生まれたんさ。

 

——昭和20年っていうと、終戦の年じゃないですか。

笠原さん:そうそう。終戦を迎えた直後に生まれたんだわ。俺が生まれてすぐ家族で日本に引き上げてきて、村松で食料品店をはじめたんだわね。俺も学校を出てからは家業の食料品店で働いてたんだろも、まわりにスーパーができはじめたこともあって店を閉めることになったすけ、その後は地元のスーパーで働いてきたんださね。

 

——ずっと食料品に携わる仕事をしてきたんですね。

笠原さん:そうだね。家業の食料品店は閉めたんだろも、前から人気があった麹漬だけは「売ってくれ」っていう声が後を絶たなかったすけ、店番を雇って細々と売り続けてきたんだわね。隣の「かさはら こうじ漬の店」では、今でも麹漬を売ってるんさ。

 

——隣も笠原さんのお店だったんですね。でも麹漬のお店をやっている笠原さんが、どうしてクレープショップをはじめることに?

笠原さん:友達のお母さんが「トリコロール」っていう名前の店をやっていて、ソフトクリームとかフライドポテトとか売ってたんだろも店を閉めることになったすけ、店名ごと譲り受けることになったんさ。そのなかにクレープを作る道具もあったんだわね。ところが、まだ新潟にもクレープの店なんてそんなになかったし、俺も「クレープ」なんてはじめて聞いたっけ、何のことだかわかんねかったんさ(笑)

 

 

——(笑)

笠原さん:娘に聞いてみたら東京で流行っているお菓子だっていうし、それならやってみるかってことになって、娘とふたりではじめたんだわ。ちょうど物置に使っていたスペースがあったすけ、そこを店舗にして「トリコロール」をオープンしたんだわね。

 

——はじめてクレープのことを知ったのに、いきなりお店をやることにしたんですか?(笑)

笠原さん:そうなんてば。どんなもんだか勉強するのに、新潟市にあるクレープショップまで食べに行って、家に帰ってからは見よう見まねで試作したこてね。今みたいにインターネットでなんでも調べられる時代じゃなかったすけ大変だったて。

 

——じゃあ作り方は独学だったんですね。

笠原さん:そうだね。クレープを焼くときに最適な温度とか生地の配合とか……何ひとつわかんないから全部手探りで、何ヶ月もかけて練習したんさね。

 

 

——それは大変でしたね。オープンしてみてどうでしたか?

笠原さん:東京で流行っていたのに、新潟にはまだ何軒もない頃だったから、こんな店でも行列ができたね。あの頃はおもっしぇかったなぁ……。あのとき稼いだお金があればなぁ……どこにいったんろっかねぇ(笑)

 

——私に聞かれても(笑)。今はおひとりでお店をやられているんですか?

笠原さん:娘が新潟に住むようになってからは、ひとりでやってきたね。あんまり儲からなかったから、一度店を閉めたことがあったんだろも、そうするとお客さんから「またクレープが食べたい」って言われるわけさ。だから3年くらい休んで、また営業をはじめたんだわね。

 

地元の学生達を見守り続けてきたお店。

笠原さん:うちのクレープ、食べてみてどうだね?

 

——派手な美味しさじゃないけど、生地とか生クリームとかのバランスがとってもいいですね。食べやすいからペロッと食べられます。生クリームは甘さ控えめなんですね。

笠原さん:うちのお客さんは女の人が多いから、ダイエットに気を使っている人もいるんだわね。それもあって、甘さを控えめにするようになってきたんだて。あとクレープは生地が美味しいかどうかで味が決まってくる気がするね。

 

 

——なるほどー。他にもクレープを作るときに、気をつけていることってありますか?

笠原さん:うちのクレープは派手なデコレーションもないし、昔のまんまのクレープだろも、それがいいって言ってくれるお客さんも多いんだわ。だから同じ味を保ち続けるように気をつけているかな。昔から変わらない、同じレシピをしっかり守ってね。この店の味が好きだから、お客さんはわざわざ来てくれているわけだっけね。

 

——それが30年近く続いてきた理由なのかもしれないですね。

笠原さん:そうだかもね。麹漬もそうだろも、美味しいもん作っていれば、お客さんの方から「売ってくれ」って言ってもらえるようになると思うんださね。

 

 

——確かにそうですね。お客さんって、どんな人が多いんですか?

笠原さん:メインは若い人……特に学生だね。この辺は子ども達が食べにいくような店が、昔から少ないんだわね。だから地元の子ども達は中学生になると、友達同士でうちの店に食べに来るようになる。大人になった気がして、うれしいんだろうね。

 

——30年近くも地元の学生達から愛されてきたんですねぇ……。

笠原さん:最近クレープを食べにきた学生から「うちのママも学生の頃によく来ていた」って言われたりしてね。ひさしぶりに村松へ里帰りした人が寄ってくれて「何も変わっていない」って懐かしがっていたこともあったわね。テーブルに掘った名前がまだ残ってるなんて喜んでいたりしてね。

 

 

——その話だけでも、学生達に愛されてきたことがわかりますね。

笠原さん:でも最近は子どもの数が減っているっけねぇ……。この町内にも小学生がいる家は20軒中たったの1軒しかないすけね。おまけにコロナ禍の自粛で外食を禁止されたりして、めっきりお客さんが少なくなったのが切ないわね。

 

——街から子どもが減っているっていう話は、いろんなところで耳にしますね。でもお店は続けていくんですよね?

笠原さん:地元の子ども達が立ち寄れる場所を守っていきたいっけ、できるだけ続けていきたいと思っているけどね。

 

——ずっと気になっていたんですけど、かき氷って一年中やっているんですか?

笠原さん:そうそう。でも、かき氷はもっと美味しくなるように、リニューアルしようと思って開発中なんさね。地元で栽培されている苺や桃でシロップを作って、菅名岳の名水で氷を作ったかき氷をやってみようかと思ってるんだて。今年の7月には間に合わせたいと思っているんさ。

 

 

「トリコロール」のクレープは素朴でほっとする味わいで、笠原さんの飾らない人柄そのものに感じました。そんなところが長年親しまれてきた理由なのかもしれませんね。現在開発中のかき氷はどんな味になるのか、今から夏が待ち遠しいです。

 

 

トリコロール

五泉市村松乙631

0250-58-6386

12:00-19:00(土日祝日は11:00-18:00)

水曜休

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