10種のお餅が評判の胎内市「くどうもちや」に新メニューが続々登場。
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2024.09.01
胎内市旧中条町の本町商店街にある「くどうもちや」は、胎内産もち米で作られたお餅やおこわ、お赤飯が評判のお店です。3年ほど前から若者向けのメニューをいくつも用意し、イベントにも積極的に参加するようになりました。というのも、娘の熊倉さんが「両親の代でお店を閉めることになってしまってはもったいない」とお手伝いをはじめたからなんです。どういったチャレンジをしているのか、熊倉さんにお話を聞いてきました。

くどうもちや
熊倉 七瀬 Nanase Kumakura
1988年胎内市生まれ。製造業、営業、接客業などを経て、3年ほど前から実家の「くどうもちや」を手伝いはじめる。お祭り好きで、9月上旬に開催される中条まつりを心待ちにしている。

両親の代では終わらせたくない。決断した笹団子の味。
——「くどうもちや」さんは、ずいぶん長く続いているお店だそうですね。
熊倉さん:創業は明治だと聞いています。最初は燃料やお米を扱っていて、後に燃料の配達などを生業にしていたみたいです。戦後、祖父の代から、この辺りの農家さんが育てたもち米を代わりにつくようになりました。それが餅屋の原点です。餅屋としては約80年続いていて、父で2代目です。
——熊倉さんのご実家が「くどうもちや」さんなんですね。
熊倉さん:製造の仕事をしたり、営業をしたり、いろいろな職場で働いてきたんですけど、結婚と出産を経て3年くらい前から実家の手伝いをはじめました。両親ともに現役ですし、私にはまだ技量もないので「実家を継ぐ」っていうより「手伝っている」方がしっくりきます。
——地域の商売を続けるって立派な決断ですよね。
熊倉さん:会社員をしていたくらいですし、実家に入るつもりはなかったんですけどね。両親もこうなるとは想像していなかったと思います。でもうちで作っている笹団子が「美味しい」「また注文したい」って、嬉しい評判をたくさんいただいていると知りまして。「親の代で『くどうもちや』がなくなっちゃうなんてもったいない」って思ったのがいちばんの決め手です。昔からのお客さまもいらっしゃいますし、地域に根付いてきたお店ですからね。私は私で若い方向けの商品を考えたり、新しいことをはじめてみたかったんですよ。

——間近でご両親の仕事っぷりを見て、どうでした?
熊倉さん:お餅、赤飯、おこわ、それから催事用に作る商品もあって、「こんなにやることがたくさんあるの」って驚いてばかりでした。
——ご両親は熊倉さんがいてくれて助かっているのでは。
熊倉さん:どうなんでしょう(笑)。3人それぞれ言い分があるし、喧嘩ばっかりしていますよ。いつも一緒で、遠慮なく物事を言いやすいっていうのは家族経営の辛いところかもしれませんね。でも私にはこの町から出る理由がないし、ここが好きなんですよ。一生懸命働いて、「くどうもちや」を続けていけたらいいなって思えたんですよね。ひとりでは覚えきれないことも、主人に手伝ってもらわなくちゃいけないこともたくさんあるので、なかなか難しいですし、親が急にいなくなっちゃったらどうしようっていつも不安です。それでもこの数年で、若い方にもお越しいただけるようになりました。イベントに顔を出したり楽しくやれているので、これはこれで十分だよねと思っています。

イベント出店に手軽に買えるカップ団子。客層がググッと若く。
——改めて、「くどうもちや」さんの商品についてを教えてください。
熊倉さん:パックのお餅が主力商品です。食べ切りやすいので、のし餅よりもパックのお餅の方が需要があるんです。
——たくさんの種類があるみたいですね。
熊倉さん:白もち、青豆、ごま、よもぎ、変わったところだと醤油、富山県で主流だという昆布など10種類です。お子さんには、砂糖入りの甘い紅もちが好評ですね。関東の方には栃もちが人気があります。母が「あれもいいね、これもいいね」とこれだけの種類を製造販売するようになったんです。
——お餅以外もあるんですね。
熊倉さん:笹団子もありますし、ちまき、お祭りやお祝いごとがあるときはお赤飯、お葬式ではおこわなども作っています。でも若い方にはあまり馴染みがないですよね。この商店街って地元の方じゃないと入ってきにくいですし。もっと気軽に、若い方にもお買い求めいただけるものがあったらいいなと思って、カップのお団子の販売をはじめたんです。お土産にもいいかなと思いまして。

——カップ団子かぁ。いいですね。
熊倉さん:ずんだ、ごま、みたらし、きなこ、こしあんと笹団子をリメイクした草団子の6種類と季節限定の味がありますよ。手にとっていただきやすい商品がひとつ増えたかなと思っています。今までは両親ふたりで営業していたので、イベントにはなかなか参加できなかったんですけど、私が手伝うようになってからちょくちょくいろいろな場所で販売しているんです。そのせいか、客層がグッと若返りました。若い方、お子さんがお店にも来てくださるようになりましたし、ほんとうにありがたいですね。
——地元のお米を材料に使っているそうですね。
熊倉さん:胎内産のもち米を契約農家産から仕入れています。

大好きな町、大好きな商店街にある餅屋を自分の代まで。
——お店で製造もされているんですよね。
熊倉さん:お餅を作る過程で雑菌が入っては大変なので、両親はものすごく気を配っています。「この時間は部屋に入らないでね」と徹底していますし、人の出入りがない朝方や夜中に作業をすることもあります。そういったところも含めて丁寧に作っているものだから「美味しい」って言っていただけるんでしょうね。作り方のコツも長年の経験があるからわかるんだろうなってことがたくさんあります。蒸気の様子で蒸篭を乗せるタイミングをはかっていたりとか。
——まさに熟練の技ですね。
熊倉さん:おこわ類は一升以上のご注文をお願いしているので、常に店頭に並んでいるわけではないんです。イベントに参加するときは、ちっちゃいパックに山菜おこわ、お赤飯なんかを持って行くんですけど、すごく好まれるんですよ。若い方もお子さんもおこわが好きなんだなって実感します。
——じゃあ、熊倉さんがイベントに出るとなるとお家が忙しくなるのでは。
熊倉さん:そうなんです。「またかよ」なんて言われます(笑)

——新しい取り組みをさまざまはじめられていますが、他に何かやろうと思っていることはあるんですか?
熊倉さん:「もっと気軽に」と思って、飲食店営業を取得して、6月からドリンク販売をはじめました。お餅は夏場には不向きなので、暑い時期にも味わっていただけるものがあったらいいなと思って。この夏にかき氷の販売もしたかったんですけど、ちょっと出遅れちゃっいました。でもまだまだ残暑が続くでしょうから、9月からでも試験的にやってみたいと思っています。今ってふわふわのかき氷が人気ですけど、息子はまだ小さくて昔ながらのガリガリ氷が好きなんですよ。なので、そういう食感のかき氷にチャレンジしてみようかなと計画中です。そこにうちの白玉団子や自家製のあんこを乗せてみようって思っています。
——ぜひ楽しみながら、「くどうもちや」さんを守り続けてくださいね。
熊倉さん:これからもずっと「くどうもちや」を残したいとか、歴史があるからとかっていう心づもりではなくて、両親で終わりだったものを私の代までちょっと伸ばせたらいいなと思っているんです。この町も、この商店街も好きなので、もうちょっと続けていたいですね。

くどうもちや
胎内市本町3-28
0254-43-2252
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