各地で雪が降りはじめ、ずいぶんと寒くなってきました。この時期は鍋メニューが恋しくなります。今回は、冬に食べたくなるしゃぶしゃぶ肉も買える直売所「キッチンガーデンとみおか」さんをご紹介します。過去にもご登場いただきましたが(記事はこちら)、そのときよりもギフトや加工品メニューの取り揃えが充実したのだそうです。運営会社の社長を務める川上さんに、いろいろとお話を聞いてきました。
キッチンガーデンとみおか
川上 克 Masaru Kawakami
1970年新潟市生まれ。東京農業大学を卒業後、群馬県の養豚場で2年間経験を積み、家業に入る。2013年に「川作ファーム株式会社」、2018年に「よつばフード株式会社」の代表取締役に就任。いちばん好きな豚料理は、妻お手製トンカツ。
――川上さんのお父さんが養豚業をはじめたそうですね。そして川上さんは農業大学を卒業後、すぐに養豚業に就かれました。
川上さん:はい、そういうふうに育てられましたから(笑)。西蒲区だけでも5、6軒は豚を飼育されているところがあります。私が小さい頃から比べると数は少なくなりましたけれども。
――川上さんのところでは、どれくらいの頭数を飼育されているんですか?
川上さん:豚はだいたい1万頭くらいです。
――えぇ? そんなに多いなんて。
川上さん:皆さんそう驚かれるんですけど、それほど大した規模じゃないですよ。県の平均頭数よりは多いですが、もっと大きな養豚場さんが県内に2軒ほどあります。そちらは、うちの倍は飼育されているんじゃないかな。
――以前に取材させてもらったときもお聞きしましたが、改めて、直売所「キッチンガーデンとみおか」「川作ファーム株式会社」「よつばフード株式会社」は、どういった位置付けなのか教えてください。
川上さん:では、それぞれの成り立ちをご説明しますね。戦後しばらくは養豚業がとても潤っていたようで、父はそれを忘れられなかったんでしょう、養豚生産業「川作ファーム」を立ち上げました。次に誕生したのが「よつばフード」。当初は新潟市内でトンカツ専門店をしていましたが、原料の値上がりなどいろいろあって、2010年からは米の販売を主なサービスにしています。
――「循環型農業」をキーワードに掲げていらっしゃいますよね。
川上さん:お米に付加価値をつけて販売するため、「豚ぷん堆肥」を田んぼに撒き、米を作ろうと父と仲間たちは考えたんですね。豚ぷん堆肥はとても優秀で、稲作に使うととても美味しいお米ができるんです。この方法に賛同してくれる親しい農家さんにお米を生産してもらい、「よつばフード」が販売を担っています。
――その堆肥はもちろん「川作ファーム」さんで飼育している豚のフンなどを原料にしているってことですね。
川上さん:そうです。豚に限らず、鳥、牛を飼育しているとけっこうな量の排泄物が出ます。今から20年ほど前は、それらを原料にした堆肥を使おうという流れはほとんどありませんでした。どちらかというと化学肥料が推進されていた時期でしたから。
――現代っぽい取り組みに思いますが、ちょっと早すぎたのかな。
川上さん:その頃、野焼きができなくなったんですよ。ほら、ひと昔前まで大量の籾殻なんかを田んぼで燃やしていたけど、その行為が禁止されたじゃないですか。稲藁も籾殻もぜんぶ、田んぼにすき込まなくちゃいけなくなって。それがあまりに難儀な作業だというので、誰もやりたがりませんでした。一方で、豚ぷんと農業残渣を混ぜて栄養価の高い飼料にしてしまえば、面倒なひと手間が不要になるメリットがあったんですよ。
――ほぉ。よくわかりました。
川上さん:あとは「キッチンガーデンとみおか」の紹介ですね。少し前にこの辺りを圃場整備した際、ここが余剰地となったんです。企業に売る案も出たんですけど、工場ができて騒音騒ぎになったら困るという地域の意見もあって。それであれば、「地元のものや自社の生産品を販売できる直売所にしてはどうだろうか」という話になりました。主力商品は、豚肉と豚肉の加工品です。その次は、お米かな。今の時期は、西蒲区の柿も置いています。美味しいですよ。ちなみに、「とみおか」はこの地域の名称です。
――前回「キッチンガーデンとみおか」さんに取材させてもらったのは、2019年でした。
川上さん:あれからいくつか新しい取り組みをはじめました。週末は店内調理のお弁当販売をしています。それから焼くだけ、もしくは温めるだけで、豚肉の生姜焼き、厚切りロース肉の味噌漬け、カツなどを調理できるおかずメニューもずいぶん充実させました。ギフト商品にも力を入れています。しゃぶしゃぶセットとすき焼きセットは、これからの時期にぴったりですよ。豚肉の甘みをぜひ楽しんでください。
――扱っているのは、すべて「越後もちぶた」なんですよね。
川上さん:「越後もちぶた」は甘みがあって、さっぱりいただけますよね。脂身が格別に美味しくて、私は他の豚肉に手が出せなくなっちゃいました。
――美味しい豚を飼育するための特別な取り組みはありますか?
川上さん:父親の代からずっと守ってきた独自の血統があります。所属している養豚グループでは、その血統の豚を飼育しています。それが脂身に甘みのある、美味しい豚肉の秘密です。
――それを聞くと、ますます「キッチンガーデンとみおか」さんの豚肉を美味しくいただけそうです。
川上さん:豚の生産者が営業しているところが、この直売所の強みですよね。美味しい食べ方を知っている人間が運営しているわけですから。毎日食べているけど、それでも飽きない豚肉を生産している自負があります。
――川上さんが好きな豚肉の食べ方は?
川上さん:あまりきれいな食べ方じゃないかもしれないけど……。白米の上にしゃぶしゃぶ肉を乗っけて、お肉でお米を巻いて食べる。個人的には、今の時期恋しくなる味です(笑)
――せっかくなので、美味しく豚肉をいただける調理法を読者の方にお伝えしたいのですが。
川上さん:そうですねぇ。「越後もちぶた」は脂が醍醐味なので、脂を生かす食べ方がおすすめです。トンカツであれば、ロースの方が持ち味が伝わるかな。角煮もいいですね。すっきりとした旨味を楽しんでいただけると思います。
キッチンガーデンとみおか
住所/新潟市西蒲区富岡1194
Tel/0256-82-5428
営業時間/9:30-18:00
火曜定休