現代の生活シーンに寄り添う「UCHICO SASHICO」の刺し子作品。
ものづくり
2025.04.01
「刺し子(さしこ)」と呼ばれる手芸をご存知でしょうか。衣服を補強したり保温性を高めたりするために、重ねた布を細かく刺し縫いするものですが、やがてその縫い目そのものが装飾として楽しまれるようになりました。今回ご紹介するのは「UCHICO SASHICO(ウチコサシコ)」の名で活動している刺し子作家の加藤さん。作品にはどんなこだわりがあるのか、お話を聞いてきました。


UCHICO SASHICO
加藤 淳子 Junko Kato
1978年山形県生まれ。地元の和裁所で働いた後、福祉施設で働いているときに刺し子と出会い、趣味を経て刺し子作家として活動をはじめる。2023年にはアークオアシス新潟店で初の個展を開催。バードウォッチングが趣味で、若い頃はかなりのサッカー好きだった。
出店用テントの購入で、作家として歩む決意を固める。
——加藤さんが刺し子に出会ったきっかけを教えてください。
加藤さん:知的障がいを持つ方が利用する福祉施設でヘルパーをやっていたときに、利用者がやっていた刺し子を見て興味を持ちました。もともと裁縫は得意だったので、自分にもできるんじゃないかと思ったんです。
——裁縫はいつ頃からやっていたんでしょうか?
加藤さん:祖父が染め仕事をやっていたこともあって、祖母が針仕事をしているのを見て育ったんです。その影響で私も幼い頃からフェルト手芸を楽しんでいました。高校でも家政科で被服の勉強をしましたし、卒業してからは和裁所で着物を縫っていたんですよ。

——じゃあ、針仕事に関してはベテランなんですね。刺し子は独学で覚えたんですか?
加藤さん:そうです。最初はふきんを縫ってみたんだけど、クオリティは低かったんです。そこで本を買いあさって勉強したり、図案を見ながら刺し順の解読をしたりしていました。それでもわからないときは刺し子のワークショップで教えてもらったんです。
——最初は趣味として楽しんでいたんですね。
加藤さん:その後、お友達と一緒にマルシェで出店をして作品を販売しはじめました。お客様が「これ、いいわね」と言って手に取ってくださるのが嬉しくて、どんどんハマっていったんです。
——本格的に刺し子作家としてやっていこうと思ったきっかけはあったんですか?
加藤さん:夫の転勤で柏崎に住んでいた頃、「柏崎クラフトフェア」に出店したことがきっかけですね。2回目の出店時に7〜8万円する白いテントを購入したことで、作家として続けていく覚悟を決めました。

——そのテントは出店に使うために用意したんですね。
加藤さん:柏崎クラフトフェアに初出店したとき、強風でテントを吹き飛ばされている方が多かったんです。先輩出店者の方々は風に強い自前のテントを用意していて、お客様の安全や商品を風から守っていたんですよ。その姿勢に心を打たれて私も自前のテントを用意しました。
——テントにまで気を使うとは、プロ意識を感じますね。
加藤さん:先輩方には本当にいろいろと教えていただきました。毎年出店している長岡のイベントでは、お客様が少なくても帰り支度をせずに、閉会時間までしっかり営業する心構えを学びました。普段は製造業なんですが、イベントではサービス業にスイッチを切り替えることが大切なんです。

暮らしのなかで使ってもらえる製品をつくりたい。
——刺し子のどんなところに魅力を感じていますか?
加藤さん:使う道具やスペースが少ないので、どこでも作業することができるんです。それから針先に神経を集中していると、気持ちがスッとしてストレスが解消されますね。作業にかかる時間が長いので、完成したときに味わえる達成感は大きいんです。
——なるほど。では、加藤さんはどんなことにこだわって作品をつくっているんでしょう?
加藤さん:暮らしのなかで使っていただける製品をつくるようにしています。昔ながらの刺し子製品は、現代の生活スタイルに合わないことも多いんです。ですから伝統的な技法を使いながらも、布や糸の色を変えることで、現代に合う作品をつくるよう心掛けています。

——確かに現代の生活にも馴染みますね。
加藤さん:あと自分で洗濯ができて、長く使える作品をつくるようにしています。自分のカメラに使っているお気に入りのストラップは、何度も洗濯しながら使い続けているんですよ。「布を大切に使うこと」が刺し子の精神ですからね。
——元々は布を丈夫にするための技術なんですもんね。
加藤さん:はい、最近は亀田縞(かめだじま)の端切れを使って、パッチワークのスカートをつくったりしています。布を捨てるのがもったいないので、3㎠あれば捨てずに使うようにしているんです。今後はパッチワークにもっと力を入れていきたいですね。

——捨てられることが多い端切れが、素敵な作品に生まれ変わるのは素晴らしいことですね。作家としての苦労はありますか?
加藤さん:常連のお客様もいらっしゃるので「いつも同じ作品ばかり」と思われないように気をつけて、新しい作品づくりを心掛けています。はじめた頃からお世話になっている雑貨屋さんがあるんですが、販売する製品のセレクトがとても厳しいんですよ。そのお店に並べていただいて恥ずかしくない作品をつくることが、自分自身の作品基準になっていますね。
——常に新しいものをつくり続けることは、なかなか大変だと思いますが……。
加藤さん:ですので普段の生活でアンテナを張るようにして、美術館で芸術作品を鑑賞したり製品のラベルを眺めたりしながら、作品のヒントを蓄えるようにしています。
——では刺し子作家としての喜びをお聞かせください。
加藤さん:作品を大切に使っていただけると嬉しいですね。6年前に買ったヘアゴムを大切に使い続けてくださって、メンテナンスを依頼してくださるお客様もいるんです。刺し子作家としては、これほど嬉しいことはありませんね。
——加藤さんの作品って、ネットで買うことはできないんですか?
加藤さん:実物と写真ではどうしても色の違いが出るので、対面販売にこだわっているんです。実際に製品をご覧いただいて、納得した上でお買い上げいただきたいんですよ。

UCHICO SASHICO
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