美味しい料理と、あたたかい夫婦。
栃尾最古の「一品料理 一平」
食べる
2026.05.27
「とても素敵なご夫婦がやっているお店があるからぜひ取材してほしい!」とご連絡をいただき、栃尾に向かいました。ご紹介いただいた「一品料理 一平」は、平さんご夫婦が営む、「栃尾最古」ともいわれている小料理屋さんなんだとか。お店に入るとすでに常連さんがお料理とお酒を楽しんでいらっしゃいました。営業中にもかかわらず、あたたかく出迎えてくれたマスターこと進さんと、ママこと千津るさんに、お店のことをいろいろと聞いてきました。
平 千津る
Chizuru Taira
写真左/ 長岡市出身。20歳のときに進さんと結婚し、「一品料理 一平」に立ちはじめる。ピアスとスカーフがとってもおしゃれ。
平 進
Susumu Taira
写真右/ 東京や新潟で調理の経験を積み、58年前に「一品料理 一平」をはじめる。千津るさん曰く「無口な人」なんだとか。笑顔はとてもキュート。
創業58年、
栃尾で長く続く「一平」のこれまで。
――今日はよろしくお願いします。このお店はいつからやっていらっしゃるのでしょう。
千津るさん:マスターが東京で修業をして、新潟に帰ってきた後にこのお店をはじめたから、58年かな。私は結婚してからこのお店に立っているので、52年になりますね。マスターはね、栃尾ではいちばん年上の板前さんなの。「レジェンド」って呼ばれたりしてる(笑)
――58年!
千津るさん:マスターはね、勉強があまり好きじゃなかったみたいで(笑)。親戚が浅草でお店をやっていたから、料理に興味があったんだって。それでそこのお店で修業をしたり、八王子のお店でも修業をしていたんだけど、あるとき新潟に帰ってきて。でもその後どこかに行っちゃったんだって。どこで何をしていたかは、誰もわからないの。
――マスターのみぞ知る、ということですね。その後、こちらのお店をはじめることに?
千津るさん:それまでもいろいろあったみたい。マスターがどこにいるかわからない間、実家とも連絡を取っていなかったの。でも、そのときお世話になっていたお店の親方が、南極観測隊の調理隊員に応募することになって。そのときにマスターも一緒に応募しようと思ったんだけど、住所が分かる書類がないとダメで。それで、やっと実家に連絡したみたい。結局、親方に虫歯があったから南極へは行けなかったみたいだけどね。それをきっかけに、母方の実家の栃尾でお店をはじめることにしたのが、このお店ができるまでの経緯。
――マスターのご出身は三条でしたよね。どうして栃尾でお店をはじめたのでしょう。
千津るさん:栃尾はね、マスターの母方の実家があるところなの。元々キャバレーがあったんだけど、マスターがここを、料理屋に変えたの。37年前に建て替えて、今のお店のかたちになった感じかな。
――ところで、千津るさんはマスターと結婚される前はどんなことをされていたんでしょう。
千津るさん:私はね、機屋さんで働いていたの。当時はすごく景気が良くて。4年間働いていたんだけど、その後は東京に行く予定だったの。でもどういうわけかマスターと付き合っちゃって(笑)。こういう仕事をするなんて思っていなかったけど、もともと人が好きだから、この仕事が性にあったんじゃないかなって思ってるの。


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食材は、いいものを。
季節のものを大切に。
――ホワイトボードには今日のお品書きがびっしり書かれていますね。お肉からお魚まで、何を食べればいいか迷いそうです。
千津るさん:マスターが食材にこだわって選んでいるから、どれも美味しいですよ。いい食材を使っているから、素材そのものの美味しさを味わってもらえるように、あんまり加工はしないの。その日にいいのが入ったか入らないかで、マスターのご機嫌が変わったりするのよ(笑)。入らなければそれで、その日にできることをしっかりやるだけなんだけどね。
――中でも、千津るさんのお気に入りの一品は?
千津るさん: ひとつに絞れないね(笑)。マスターの作る料理は本当に全部美味しいの。だから、私もお客さんに自信を持って「これは美味しいよ」って伝えられているし。季節になるとここでクジラ汁を出すんだけど、マスターが作るのは匂いも気にならなくて、本当に美味しいの。マスターのクジラ汁を食べるまで、私もクジラが苦手だったんだけどね。
――常連さんも、「全部おすすめ」っておっしゃっていました。
千津るさん:お客さんに美味しいって言ってもらえるのは本当に嬉しいよね。長くお店に来てくれるお客さんや、県外から来てくれるお客さん、若いお客さん、本当にありがたいなって思うの。お客さんが「やめないで」って言ってくれているから、ずっと続けられているんだよね。
――それも、千津るさんとマスターの人柄があってこそだと思います。千津るさんがお店に立つ中で大切にしていることはなんですか?
千津るさん:心を大事にしているかな、人を思う心というか。お客さんとの会話の中であんまり出しゃばらないようにしているかな。お客さんが話してくれたら私も話す、みたいな。お客さんが話したいと思えば、聞いてそれに応えるし。それってすごく大事なことなんじゃないかなって思うの。
――その距離感が心地いいのかもしれません。カウンターに座っていると、千津るさんとお話したくなります。
千津るさん:カウンターに座られる方は、結構お話してくださいますよ。それが飲み屋さんの良いところなんじゃないの。こうしてお客さんが可愛がってくれたから、今の私たちがあると思うの。だから本当に、お客さんに感謝しかないなって思うの。


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一日一日を大切に。
今日も、お客さんの笑顔のために。
――千津るさんのお客さんに対する姿勢からも、とてもあたたかいお店なんだと感じることができます。
千津るさん:お客さんに生かされているんだなと思うの。みんなそうだと思う、みんな誰かに生かされているんだと思うよ。うちもお客さんにこうして支えられているから、50年以上続けられているし。本当に、日々感謝しかないね。
――こんなに素敵なお店、ずっと続いてほしいと心から思います。
千津るさん:こういう飲み屋さんはやっぱり大事な場所なのよ。家の周りに何もないって引きこもっちゃうとダメだから、どこか出かけられる場所がないと。今日も82歳の常連さんが運動ついでに歩いてきてくれたの。うちのお客さんは本当にみんな元気なんだよ。
――とても素敵です。千津るさんのこれからの目標はありますか?
千津るさん:とにかく一日一日を大事にしていきたいかな。それこそ「一生懸命」って字があるでしょ。そうじゃなくて、私たちは「一所懸命」、これしかないの。 その一日を懸命に、ただそれだけかな。お店をやってて、お客さんが料理を美味しいって言ってくれて、笑顔になってくれるのがいちばん嬉しいから、そのために今日を頑張ろうと思えているかな。
――(※千津るさん取材後)最後に、マスターにお伺いします。お店に立つ中でいちばん大事にしていることを教えてください。
マスター:今この場にいないから言うけど(笑)、奥さんだね。


一品料理 一平
長岡市谷内1-4-12
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