欧州で学んだパンを、新潟で味わう。
とことん新潟にこだわる「grains.」
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2026.02.25
今月、西区青山にオープンした「grains.」。ここでは新潟県産の小麦を使い、薪窯で焼かれたパンが楽しめます。このお店をはじめた西方さんはヨーロッパの国々でパンづくりを学び、地元である新潟に戻り、「grains.」を立ち上げました。今回はパンづくりの合間にお邪魔して、西方さんのこれまでのことや、パンのことなど、いろいろお話を聞いてきました。
西方 健
Ken Nishikata(grains.)
1993年新潟市出身。高校卒業後、国際調理専門学校でパンのことを学び、卒業後はパリのパン屋さんで働く。その後、パリで3年、ドイツで1年、イタリアで5年働き、ヨーロッパのパンづくりを学ぶ。2024年に帰国し、今年の2月自身のお店である「grains.」をオープン。趣味は自転車で、新潟から東京まで自転車で行ったことがあるんだとか。
パリ、ベルリン、ミラノ。
それぞれの地で学んだ、パンづくり。
――お店のオープン、おめでとうございます! まず、西方さんがパンづくりをお仕事にしようと思ったきっかけを教えてください。
西方さん: 母が調理師として仕事をしていて、その影響で小さい頃からよく料理をつくるのを手伝っていたんです。その中で、パンづくりも手伝っていたんです。そのときからパンづくりはすごく楽しかったし、自分にとってはいちばん魅力的なことだったんです。それで、調理系の専門学校に進んでパンのことを学ぶことにしました。
――卒業後は、パリで働かれていたそうですが、最初から海外へ行こうと?
西方さん:最初から海外に行きたいと思っていました。でもすぐにというわけではなかったので、進路は国内の企業を探していました。ただ、なかなかうまくいかなくて。この先のことを考えていたときに、専門学校の進路指導の先生が、日本人を探しているパリのパン屋さんを紹介してくれたんです。「これだ」って思ってそのままパリに行くことにしました。
――思いきりましたね。言語や生活で不安はなかったですか?
西方さん:パンといったら、まずはフランスのパンづくりを知りたいって思っていたので、全然不安はなかったです。就職活動のときも国内の企業もフランス系の企業を選んでいましたし、フランス語も、基本の「き」くらいは新潟で習ってから行っていたので、そこまで不安は感じませんでした。
――パリでのお仕事をしてみて、どうでしたか?
西方さん:もちろん大変なことはありましたが、やりたいことができているっていう楽しさや興奮のほうが大きかったですね。パリではあわせて3年間くらいいて、その間にいろいろなお店で経験を積みました。今振り返っても、この3年間はすごく刺激的でしたね。
――その後は、ドイツのパン屋さんで働くことになったんだとか。
西方さん:ドイツは小麦ではなく、ライ麦を使ったパンが主流で、フランスとは異なるパンづくりを学びたくて決めました。その後に移住したイタリアがいちばん長くて、5年間いました。イタリアの「パネットーネ」っていうパンをどうしても学びたくて。移住する前は、旅行がてらパン屋さんに履歴書を配り歩いて、働けるお店を探していたこともあります(笑)
――ヨーロッパのいろんなパンづくりを学びたいという強い思いがあったんですね。
西方さん:同じヨーロッパでも、それぞれ特有のパンの文化を持っていて、すごく面白かったです。イタリアにいたときは、ちょうど感染症が拡大して、雑貨屋さんやお菓子屋さんは営業できなくなったんです。でも、パン屋さんは、スーパーや薬局と同じ扱いなので、営業することができて。それくらいパンは生活に必要な大事なものなんだって、改めて気づくことができましたね。

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今まで学んできたことを、
新潟の食材を使って表現したい。
――長くヨーロッパでお仕事されてきた西方さんが、どうして日本に帰ってくることに?
西方さん:ビザの更新が切れたタイミングで帰ってきました。本当は「次はどこに行こうかな」って考えていたくらいです。でも、新潟県内をあちこち旅している中で考えが変わって。今まで勉強してきたことを、新潟の素材でやってみようって思ったんです。
――西方さんの考えを変えた、何か出会いがあったんですか?
西方さん:地元だったから、美味しい新潟の食材がたくさんあることは分かっていたんですけど、改めて食材が豊富だなと思って。野菜や果物はもちろん、ビールや日本酒、ワインも美味しいですし。新潟に帰ってきてから一週間くらいで、自分のお店をつくることを決めました。
――お店をはじめるまで、食材にまつわるいろんな準備をしたんだとか。
西方さん:ヨーロッパにいる頃から、食材をつくるっていうことにすごく意識が向いていて、あっちにいるときはブドウの収穫をしたこともありました。新潟に帰ってきてからは、ますますその意識が強くなって、お米の収穫をさせてもらったり、新潟で小麦を栽培している農家さんに会いに行ったりしたんです。
――新潟って、小麦の栽培がされているんですね。恥ずかしながら、はじめて知りました。
西方さん:どうしても新潟の小麦を使ってパンをつくりたくて。海外の小麦と大きく味の差があるかっていわれたら、そこまで変化はないと思います。でも、新潟のものは新潟で食べたほうが美味しいと思うし、新潟のお肉やお魚を、新潟の小麦でつくったパンと一緒に食べてほしいっていうのも、ここを立ち上げようと思った理由のひとつです。
――西方さんの食材への思いは、店名にも表れていますね。
西方さん:「grains.」は直訳すると穀物っていう意味の言葉です。自分がヨーロッパで働いてきたお店は、ライ麦やとうもろこし、栗、あわを使ってパンをつくっていました。小麦以外の食材もパンにして、そこからその食材の魅力を知ってもらいたいっていう思いを込めて、この店名にしました。


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パンを食べるだけじゃない、
パンづくりを見て、話せるお店。
――新潟の食材にこだわったパン、どんなものがあるのか教えてください。
西方さん:10〜15種類のパンをご用意しています。他のパン屋さんよりは種類が少ないですが、絶対美味しいものを数種類に絞ってずっとつくっていきたいんです。メインでつくっている「グレインズブレッド」は、新潟県産のコシヒカリの玄米から起こした自然酵母と新潟県産の小麦を100%使っています。
――パンを焼いている薪窯にも、こだわりがあるんだとか。
西方さん:これを入れるのがいちばん大変だったんですけど、どうしても薪窯を使いたかったんです。窯をつくれる職人が日本にはほとんどいなかったので、つくってくれる方を探すのは大変でした。でもヨーロッパで学んできたことを、ここでやるには薪窯が必要だったんです。
――そんな薪窯は、店内からもよく見えます。
西方さん:「こうやってパンがつくられているんだよ」っていうのをお客さまに見てもらいたくて、よく見えすぎるくらい工房を見えるようにしました(笑)。店内の壁には新潟のどこで小麦が栽培されているかを地図で示したり、実際の小麦の粒を飾ったり、パンの博物館みたいに楽しめるようにしました。
――小麦の粒って普段見ないから新鮮です。そういえば、パン屋さんによくあるアレがないですね。
西方さん:あえて、トレーとトングは置いていないんです。お菓子屋さんみたいに、対面で販売するスタイルにしています。パンのことや、美味しい食べ方、保存方法をお客さまに知ってほしくて。そのためにはまず会話を大事にしたいと思って、このかたちにしました。


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自分なりにパンを広めていきたい。
西方さんがやりたい、これからのこと。
――今月オープンしてみて、今の心境はいかがですか?
西方さん:初日から、ありがたいことにたくさんのお客さまに来ていただけて、忙しい日々を過ごさせてもらっています。美味しいって言っていただけるお客さまが、予想よりも多くて嬉しいですし、地元の友だちが来てくれて、「おかえり」って言ってくれるのも嬉しいですね。
――今後、お店でやってみたいことはありますか?
西方さん:これからは、サンドイッチを販売したいんです。「こんな食べ方をすると美味しいよ」ってお客さまに伝えたいものを、サンドイッチにして提案していきたいなと思っていて。意外な組み合わせだったり、ヨーロッパでよく食べられている組み合わせなんかも、お伝えしていきたいですね。あと、学校給食に「grains.」のパンを出したいんです。僕、子どもの頃、給食が大好きだったんです。せっかく給食として出すなら、新潟のものを使ったパンを食べてもらえたらいいなって考えています。
――ご自身のこれからの目標は?
西方さん:昔だったら「世界中の変なパンを食べてみたい」とか言っているんでしょうけど(笑)、今こうしてお店をはじめることができたので、お店を長く続けて、パンを僕なりに広めていきたいなって思っています。食材やパンの味わいを新潟っていう土地にあわせつつ、ヨーロッパで学んだことも自然に伝えられるようなパンをつくっていきたいです。


grains.
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