発酵と循環を表現する、
長岡の「WILLOW HOUSE」
食べる
2026.03.08
長岡市宮内地区。酒蔵や味噌蔵が並ぶ発酵のまちに、築150年の古民家をリノベーションしたベーカリーレストラン「WILLOW HOUSE」があります。掲げているテーマは「発酵と循環」。その言葉通り、コンポストや規格外農作物を活用して、さまざまな取り組みを行なっています。子育てのしやすさを求めて長岡市にやってきた、店長の谷さんにお話を聞いてきました。
谷 陽平
Yohei Tani(WILLOW HOUSE)
1988年東京都生まれ、茨城県育ち。服飾系の専門学校を卒業後、アパレルの販売に携わる。その後、飲食店でのアルバイトに面白さを感じ、飲食業へ転身。2022年に妻の実家がある長岡市に転居。2025年に「WILLOW HOUSE」などを展開する「SUZU GROUP」へ入社。「WILLOW HOUSE」では店長を務める。
アパレルから飲食へ。
人と向き合う仕事を選ぶ。
――谷さんは、最初は服飾関係を学ばれていたんですね。
谷さん:アパレルの販売職に興味があったんですよ。専門学校を卒業してからは、友達が洋服をデザインして、私はそれを置いてもらうお店を探したり、取引先と商談したりしていました。
――オリジナルブランドを展開しようとしていた、ということですか。
谷さん:そう言葉にするとかっこいいですね(笑)。でも実際はバンドでいうところのインディーズ以下というか、自分たちで手売りするのも精一杯という感じで。当然アルバイトをしないと生活できずに、居酒屋でアルバイトをしていたんですが、だんだん「こっちの方が楽しいな」「自分に向いているかも」と思うようになりました。
――どんなところに魅力を感じたんですか?
谷さん:お酒が進むと、お客さまとの距離感がグッと近づくんですよね。仲良くなった人がまた来てくれて、喜んでくれる。そこにやりがいと楽しさがあるんですよ。あの距離感の接客は、飲食業ならではだと思うんですよね。踏み込んだ接客というか、他の接客業にはないスタイルだと思っています。
――東京で飲食業を経験されてから、新潟に移って来られます。
谷さん:まだ子どもが生まれる前に、接客業をしている妻と将来について話し合いました。「お互い今の仕事を続けながらふたりだけで子育てするのは、しんどいのでは」という不安があって。そこで、妻の実家がある長岡市に引っ越すことに決めたんです。
――何か変化はありました?
谷さん:自分で働き方を選んでいることもあって、仕事にかける時間はずいぶん短くなりました。それと新潟の皆さんって、地域のもの、地元のものを大切にしていますよね。その場所にあるいいもの、いい人材にちゃんと光を当てている、というか。そういうところを素敵だな、と思うようにもなりました。
――いろいろなお店で働いてこられたと思いますが、「SUZU GROUP」さんを選ばれたのはなぜでしょう?
谷さん:長岡市に3、4年暮らしているのに、「長岡について知っていることってほとんどないじゃない」と思ったんですよ。普段暮らしている場所の半径数百メートルくらいのことしか知らないかも、と感じていて。それで、もっと自分が住んでいる地域を深掘りしてみたくなって。そういう気持ちで転職活動をしていたので、自然と「SUZU GROUP」に辿りつきました。地域に根ざした会社であること、地域の生産者とさまざまな取り組みをしているところに惹かれたんです。

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「内側のサイクル」で
小さな規模でも循環させる。
――谷さんが店長を務める「WILLOW HOUSE」についても教えてください。
谷さん:「発酵と循環を表現するベーカリーレストラン」です。発酵は当社がとても力を入れている分野。それに「WILLOW HOUSE」がある宮内・摂田屋エリアは、酒蔵や味噌、醤油蔵の多い醸造のまちとして知られています。循環も当社が掲げる大きなテーマのひとつです。持続可能な社会のために、「内側のサイクル」を回して、再生可能な資源を循環させる取り組みをしています。
――「内側のサイクル」というのは、地産地消みたいなことですか?
谷さん:地産地消もそうですし、お店単位でも小さな循環に取り組んでいます。たとえばお店で出た生ゴミをコンポストで処理して土に還す、その土でハーブを育てて食材として利用する、パンを焼く薪窯の火おこしには古紙類を使う。会社全体では、流通には乗せられない規格外品の2次加工もしています。
――店舗は、築150年の家屋を再活用しているそうですね。
谷さん:とても大きなお屋敷ですよね。以前の家主さんは商いはされていなくて、ご自宅として住まわれていたようです。摂田屋・宮内地区を語ることができるほど歴史のある建物なので、当時の趣を残したかたちでリノベーションをしていただきました。床の間の掛け軸などの調度品も、残されていたものを引き続き使わせてもらっています。
――ベーカリーレストランということですが、パンのテイクアウトもできるんですか?
谷さん:テイクアウトはもちろん可能です。パンだけでもイートインで召し上がっていただくこともできますよ。
――特に評判のパンはなんでしょう?
谷さん:カンパーニュのようなプレーンなパンをぜひ食卓に並べていただきたいですね。パンは通常イースト菌を加えて発酵を促すんですが、「WILLOW HOUSE」では、規格外の野菜や果物を発酵させたものをイースト菌の代わりに使っています。発酵に時間を要する分、旨みを引き出す時間が長くなり、しっかりとした味わいのパンに仕上がります。天然酵母由来の優しくて、独特な酸味も感じてもらえると思いますよ。それと薪窯で焼き上げているから、火の入り方がちょっと違うんですね。遠赤外線の熱がしっかり中心まで届いて、ふっくらしたパンになるんです。窯特有の香ばしい香りがなんともいえません。
――レストランのメニューには、長岡の食材などが使われているんでしょうか?
谷さん:食材はできる限り「地のもの」を使うようにしています。そこに発酵という要素を加えてメニューを考えています。


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古民家がつなぐ、
ご近所とのあたたかな関係。
――転職するとき「地元のことを深く知りたい」と思っていた谷さん。その願望は叶いましたか?
谷さん:はい(笑)。生産者さんやお取引先など、地域の皆さんとの結びつきはとても強くなりました。会社の研修で生産者さんと直接お話しする機会があって、自然と地元のものに目がいくようになりました。それに「WILLOW HOUSE」がテナント店舗ではないからか、この近所に昔から住んでいらっしゃる70代、80代の方がお客さんとしてよく来てくださるんですよ。このお家のことをもともと知っている方が、です(笑)。「このソファ、私がプレゼントしたのよ」というおばあちゃんもいて、びっくりしました。
――よいご近所付き合いをされているみたいですね。
谷さん:常連さんに「この辺りで金木犀が咲いているところはないですか?」と尋ねたところ、「あそこのお家に咲いているから今度持ってくるね」というやりとりが生まれたこともありました。灰を雪に撒くと雪解けが早くなるそうで、薪窯の灰をもらいにくる方もいて。密なお付き合いができていると思っています(笑)

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