惹かれたのはコーヒーじゃなく空間。
見附市にオープンした喫茶店「原型」
カフェ
2026.06.07
見附市内の川沿いの道を進んだ先にある「原型(げんけい)」。穏やかな景色のなかにあり、特に新緑が映えるこの季節は周囲の草木まできらきら光って見えるようでした。店内は白を基調とした明るい雰囲気のお店。ただ実のところ店主の松井さんは、もっと渋くて、照明が暗めの純喫茶のようなお店にしたかったのだそうな……。
松井 貴之
Takayuki Matsui(原型)
1986年燕市出身。県内の短大を卒業後、印刷会社やコーヒースタンド、製造業などで働く。数年前から「原型」として自家焙煎コーヒーの販売を開始し、2026年見附市に実店舗をオープン。小難しいことを考えずに気軽に見られるYouTubeチャンネルが好き。
店主はコーヒーが嫌い。
だって、黒くて苦いんですもの。
――この度は、実店舗オープンおめでとうございます。松井さんは、このお店を持つ前までどんなふうに営業されていたんですか?
松井さん:会社員をしながら、イベントなどに出店してコーヒーを販売していました。3年前からより積極的にイベントに顔を出すようになって。あとは、自家焙煎したコーヒー豆のオンライン販売ですね。
――コーヒーの活動とは別に、お勤めもされていたんですね。
松井さん:ひとつ前の仕事では、三条の会社でコーヒーグッズなどを製造していました。
――いただいたお名刺には「手廻し珈琲焙煎」と書いてありますね。
松井さん:手廻しの機械を使って自宅兼焙煎所で作業しています。それほど大きい機械ではないんですけれど。
――昔からコーヒーが好きで焙煎に関心があったとか?
松井さん:それがまったく(笑)。ブラックコーヒーなんて「もう無理、無理」という感じでした。興味を持ったのは、コーヒーそのものではなく「コーヒーのある空間」です。「サードウェーブ」って言葉が流行りだした頃に、県内外のコーヒースタンドや喫茶店を巡るようになって。そこで出されていたのがお茶だったら、もしかしたら今はコーヒーを扱っていなかったかもしれません。
――焙煎をはじめるようになったのは、どうしてですか?
松井さん:自分でコーヒーを淹れてみて「おもしろい」と思ったんですよね。コーヒーを淹れるという、その行為自体を。それで見附市内のコーヒースタンドで働くようになって、「自分で焙煎したらどんなコーヒーになるんだろう」と思ったのが、焙煎をはじめたいちばんのきっかけです。
――もしかして、松井さんがお仕事でものづくりをされていたから、焙煎作業を「おもしろい」と思ったんですかね?
松井さん:そう言われると、そんな気もしますね。「ああでもない、こうでもない」と分析しながら、いろいろと試すのが好きなんです、たぶん(笑)
――松井さんが焙煎したコーヒーは、どんな味がするんですか?
松井さん:自分の認識として、コーヒーは「黒くて苦い飲み物」。それなのにこれほどの愛好家がいて、日常に溶け込んでいるんですもんね。普通は黒くて苦いものなんて、人は飲まないんじゃないかって思うんですけど、不思議です(笑)。そう思っているから、僕はコーヒーを「なるべく万人が飲みやすいように仕上げたい」と思っています。「うちのコーヒーは美味しいです」と言い切るつもりはないけれど、「美味しくなるように」焙煎しています。

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10年探し続けてたどり着いた、
しっくりくる場所。
――お店を持ちたいって気持ちは、以前からあったんですか?
松井さん:高校生くらいの頃からアパレルのセレクトショップを持ちたくて。それがコーヒーショップになっていた、っていう感じです。コーヒー豆を焙煎できるようになったし、お店を構えるならコーヒー屋かな、と。それで10年ほど前から物件を探していたんです。
――10年も前から!
松井さん:あ、でも、初期の頃はそれほど熱心に動いていたわけじゃないです。本腰を入れたのは、4、5年ほど前から。お店の理想像はあったんですけど、予算とか立地とか、なかなか現実的な条件と合わなかったんです。
――ちなみに、どんなお店をイメージされていたんですか?
松井さん:ざっくり言うと純喫茶。照明が暗めで、落ち着いた雰囲気の。
――でも今の「原型」さんは、自然光が似合うやわらかな空間ですよね。
松井さん:通勤距離や予算面などいろいろ考えて、「ひとまずここでやってみよう」と思いました。作りたかったお店とはだいぶ違うんですけど、「この場所に合わせればいい」と考えが変わったんです。店内には、作家活動をしている妻の作品も置いています。

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ひとりでいられる空間に
救われて。
――お店がオープンして、今はどんなお気持ちですか?
松井さん:「やっとお店を持てた」という気持ちはそこまでないかもしれないです。今はひと息つく間もなく、自分のスタイルをあまり変えずにどうしたら続けていけるかを考えている、というのが正直なところです。「原型」は何か目的がないと立ち寄ってもらえない場所にあるし、どうも見附市には喫茶文化があまり浸透していないようなので、日々頭を悩ましています。
――むしろ、ここが目的地になるようにしてやろう、みたいな意気込みがあるとか。
松井さん:そういう野心より「面白い方との出会いがあるといいな」って期待が大きいです。出会う人数は多くなくていいし、無理につながる必要もないよね、と思っていますけどね。
――松井さんは、この場所をどんな空間にしたいと思っていますか?
松井さん:僕はひとりで喫茶店に行って、本を読んだり、ぼーっとしたりする時間が好きなんです。ただそこにいるだけで落ち着ける場所があるってことが、日常の救いになっていました。それと同じ場所を作りたいんですよね。疲れたときにひとりでふらっと訪れて、気持ちと身体が休まる空間を。
――どんなふうに過ごされるお客さんが多いですか?
松井さん:静かに本を読んでいらしたり、コーヒーを注文してからしばらくゆっくり過ごされたり。常連さんでも、特に会話しないことも多いです(笑)。みなさん、よい過ごし方をしてくださっています。
――では最後に、松井さんが思うお店の注目ポイントを教えてください。
松井さん:作家の作品を展示販売していて、そこを基準に自分の感性を織り交ぜながら店作りをしました。なにか少しでも引っかかりを感じていただけたら嬉しいです。

手廻し珈琲焙煎 原型
新潟県見附市熱田695-3
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