スパイスの香りが病みつきになる、
三条市「マーポー亭」の麻婆豆腐
食べる
2026.07.14
ある日三条市に向かうためアプリで地図を見ていると、「泉食堂マーポー亭」という気になる名前のお店を見つけました。調べると、麻婆豆腐がとても美味しいと評判なんだとか。なぜ「マーボー」ではなく「マーポー」なのか、どんな方がやっているお店なのか……。今回は、三条市のお店にお邪魔して、オーナーの大橋さんにご自身のこと、お店のことなどいろいろ聞いてきました。
大橋 泉
Izumi Ohashi(泉食堂マーポー亭)
1981年鹿児島県出身。高校卒業後、大阪の大学に進学。卒業後はワーキングホリデーを使いオーストラリアで働く。帰国後は、通訳や事務の仕事などを経験し、10年ほど前に三条市に移住。「三条スパイス研究所」で働いたのち、「泉食堂マーポー亭」として無店舗で活動し、2024年に三条市内に実店舗をオープンする。アニメを観るのが好き。
鹿児島から三条へ。
大橋さんが、麻婆豆腐を作るまで。
――今日はよろしくお願いします!まず、大橋さんのこれまでのことを教えてください。
大橋さん:鹿児島県で生まれて、高校卒業まで鹿児島で暮らしていました。その後、大阪の大学に進んで英語を学びました。小さいころから映画が好きで、海外の作品も見ていたので、英語の仕事がしたいなと思っていたんです。大学を卒業してから、ワーキングホリデーを使ってオーストラリアに行ったり、日本に戻ってからも、通訳や英語を使った事務の仕事をしていました。
――そんな大橋さんが、どうして三条でお店をだすことに?
大橋さん:東京で夫と出会って、結婚してからも関東に住んでいたんですけど、東日本大震災をきっかけに、旦那さんの地元である燕市に暮らそうかって話になったんです。それで、10年くらい前に燕市に移住してきました。仕事を探しているときに、知り合いから「三条スパイス研究所」を紹介してもらって、そこでアルバイトをはじめることにしたんです。
――「三条スパイス研究所」さんでは、どんなお仕事を?
大橋さん:ホールのサービスから調理まで、全部経験させてもらいました。それまで飲食店で働いたことはあったんですが、接客しか経験がなかったんです。実際働いてみて、料理を作る喜びみたいなものを感じられましたし、材料を組み立ててゼロから作っていくのが、プラモデルみたいで面白かったんです。スパイスの面白さに気づいたのも、このお店がきっかけですね。
――スパイスのどんなところに、面白さを感じたのでしょう。
大橋さん:国やお店、人によってもスパイスの組み合わせ方が違うところですね。世界のいろんな国でスパイスは使われているけど、食材の組み合わせ方や使われ方が全然違いますし、その土地の食文化に結びついた使われ方をしているのが、面白いなって思ったんです。「三条スパイス研究所」をやめた後も、お店を間借りしたり、イベントに出店したりして料理を提供していました。
――個人で活動をはじめたときから、麻婆豆腐を作られていたんですか?
大橋さん:最初は、自分の好きな料理をいろいろつくっていたんですけど、ふと「麻婆豆腐をつくってみよう」って思ったときがあって。もともと麻婆豆腐は好きだったし、スパイスを使う料理でもあったので、自分でイチから作ってみたんです。それから、スパイスの組み合わせや配合をいろいろ試して、1年半くらいかけて今の麻婆豆腐にたどり着きました。
――理想の味を模索している中で、難しかったことは?
大橋さん:いろいろ試行錯誤は繰り返しましたが、どの作業も大変だと思わなかったですね。自分の理想の味を目指して、黙々と手を動かすのが好きなので、向いていたかもしれません。麻婆豆腐の味が決まってから、「泉食堂マーポー亭」という屋号で無店舗で活動をはじめました。中国では「麻婆」を「マーポー」って発音するんです。他と被らなくて、みんなに覚えてもらいやすいかなと思ってこの名前にしました。


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ただ辛いだけじゃない。
旨みと香りも感じられる麻婆豆腐。
――ズバリ、大橋さんの麻婆豆腐のこだわりは?
大橋さん:ただ辛いだけじゃなくて、旨みや香りも感じてもらえるような麻婆豆腐になっていると思います。せっかく料理を作るんだったら、旨みや香りの複雑さを味わってもらえるものを作りたいなと思っているんです。スパイスを使っている麻婆豆腐は特に、そのバランスを大事にしています。
――卓上には小さなビンが置いてあります。これはいったい何でしょう。
大橋さん:麻婆豆腐に使っている主なスパイスを入れているんです。お店をはじめてから、「何が入っているんですか」って聞かれることが多くなったので、これを置いてみました。これを見て「カレーみたいだね」と言われることもあります(笑)
――私、辛い料理が苦手なのですが、そういう人も食べられる麻婆豆腐はありますか?
大橋さん:もちろんです。辛みを抑えた麻婆豆腐も作れますし、辛みが苦手な方には「ホルモン麻婆豆腐」をおすすめしています。ホルモンが入ると、甘みが出てまろやかになるんですよね。辛いものが苦手な友達が「これなら食べられる」って来るたびにこれを食べてくれています。反対に、花椒(中国の山椒)やラー油を追加して辛みを増やすこともできますよ。
――そもそも、実店舗をオープンされたのには、どんなきっかけが?
大橋さん:イベント出店や間借り営業をしているうちに、「自分のお店があれば、もっといろんな方に来てもらいやすくなるな」って思うようになったんです。それで、いろいろ物件を探していたら、知り合いからここを紹介してもらって。元は焼鳥屋さんだったそうですよ。友達にも協力してもらいながら、カウンターや壁の色を塗ったり、床に板を貼ったりしたんですよ。
――お店ができたことで、お家でも気軽に「マーポー亭」の味が楽しめるようになったのだとか。
大橋さん:お店をはじめてから、テイクアウトもはじめたんですけど、最近はそのかたちが変わりつつあります。というのも、テイクアウト用の容器がすごく高くなっているじゃないですか。それで値段を上げるくらいなら、いっそお家から鍋を持ってきてもらおうって考えたんです。「お鍋にマーポー」と題して、フタのついている容器や鍋に入れてテイクアウトしてもらえるサービスもはじめました。


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自分が楽しいと思うことで、
地域に貢献していきたい。
――こちらはドッグフレンドリーのお店だと聞きました。
大橋さん:うちで保護犬を飼っているんですけど、何かあったらお店に連れてこれるようにしたいと思ったんです。それで、床板の小さい穴を全部手作業で塞いで、ワンちゃんもお店に入れるようにしました。最近はお店でグッズを販売しはじめて、その売り上げの一部を保護犬の団体さんに寄付する予定です。これはずっとやりたいと思っていたことなので、実現できて嬉しいですね。あとは、カウンターの上にある絵も、ちょっとした支援のひとつなんですよ。
――と、いいますと?
大橋さん:ルワンダの子どもたちが、絵を仕事にして生活ができるようにっていう支援をさせてもらったんです。年に数回、ルワンダの子どもたちに絵を教えている友達と一緒に、ちょっとした絵のコンテストを開いたんです。中華をテーマに絵を描いてもらって、その中から「マーポー賞」としてふたつの作品を選びました。選ばれた子には賞金をお支払いして、その絵をうちで飾っているんですよ。
――素敵です。これから「マーポー亭」をどんなお店にしたいと考えているのでしょう。
大橋さん:「なんか楽しそうなことをしているお店だな」って思ってもらいたいですね。それがこのお店だけじゃなくて、この地域に広げていくのが最終的な目標ですね。うちの周りには、面白いお店がたくさんあるんです。そのお店を巡って、音楽や料理を楽しめるようなイベントができたら楽しいなと思います。この地域じゃないお店さんとも、うちの2階を使ってイベントとか、ポップアップも何回か開催しているので、今後も続けていきたいですね。
――最後に、大橋さんご自身の目標も教えてください。
大橋さん:加工食品を増やしていきたいなと思っています。以前、「たつまき堂」さんと一緒に「天恵菇(てんけいこ)」という旨みがたっぷりの椎茸を使った辣油を作ったんです。これは旨み重視のマイルドな辣油だったので、次はホワジャオを効かせた辛みのあるものを作ろうと思っています。これからもスパイスと向き合って新しいメニューや商品を作っていきたいですね。


泉食堂マーポー亭
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