寺泊の国道沿いにある魚の市場通りは「魚のアメ横」として人気の観光スポットで、いつ訪れても新鮮な魚介を買い求める観光客で賑わっています。その通りから一本奥に入った路地に佇む、隠れ家のようなお店が今回紹介する「田舎茶屋ゆきちゃん」です。可愛いげな店名とは裏腹に、こだわりの海鮮料理を提供して魚好きのお客さんたちを唸らせています。店主の山田さんにお会いして、魚に対するこだわりを聞いてきました。
田舎茶屋ゆきちゃん
山田 Yamada
1973年長岡市(旧寺泊町)生まれ。調理師専門学校卒業後は、父親の経営する「田舎茶屋ゆきちゃん」の他様々な飲食店で経験を積み、1994年より本格的に「田舎茶屋ゆきちゃん」で働きはじめる。趣味はドライブ。
——山田さんって、陽に焼けていて見た目は漁師さんみたいですね。
山田さん:たまに言われます(笑)。首にかけたタオルが、自分にとってのネクタイなんですよ(笑)
——山田さんにとっては仕事着ですもんね。このお店はいつから営業されているんですか?
山田さん:私が中学1年生のときに親父がはじめたんですよ。最初は肉屋をやっていたんだけど、1980年くらいからは民宿をやっていました。だから私も小学生の頃から民宿の手伝いをしていたんです。でも道路拡張に引っ掛かったので民宿をたたんで、「田舎茶屋ゆきちゃん」をはじめました。
——最初から海鮮料理をメインにしていたんですよね。
山田さん:ところがそうではなくて、最初は夜営業の食堂で、ラーメンとかハンバーグとか何でもやっていたんですよ。
——そうだったんですか。じゃあ、海鮮料理がメインになったのはいつからなんでしょう?
山田さん:海水浴で遊びにきていたお客様から「昼も営業してほしい」という声があったので、夜から昼に営業時間を変えることにしたんです。その際にメニューを海鮮料理に絞ることにしました。
——肉料理じゃなくて海鮮料理に絞ったのはどうしてなんですか?
山田さん:お客様の9割は県外から遊びに来ていたから、どこでも食べられる料理よりも寺泊らしく海鮮料理を食べてもらおうということになったんですよ。
——なるほど。山田さんはずっとお店を手伝ってきたんでしょうか?
山田さん:海水浴客で賑わう夏の忙しい時期は手伝っていましたけど、他の飲食店でもいろいろと経験を積みました。本格的に腰を落ち着けたのは21歳の頃だったかな。
——表にあったトラックで魚の仕入れに行くんですね。
山田さん:とにかく鮮度をいちばんに考えているので、冷凍車のトラックで運んでいます。魚を冷やす氷も、自家製のクラッシュアイスに入れ替えてから車に乗せているんです。
——氷にまでこだわるとは。どこで仕入れをしているんですか?
山田さん:前は「ピアBandai」の場所にあった魚市場へ通っていましたが、今は新潟市江南区にある「中央卸売市場」で仕入れています。以前は地元の魚屋さんでまかなっていたんですけど、より多くの魚を求めて市場へ足を運ぶようになったんです。
——市場には各地からいろいろな魚が集まりますもんね。
山田さん:そうなんです。ただ最初は紹介もなく行ったので、誰からも相手にしてもらえませんでした。ですから、とにかく顔を覚えてもらおうと毎日通って挨拶を続けたんです。そのうち魚屋の女将さんが顔を覚えてくれて、他の仲買さんたちに紹介してくれたことでようやく魚を売ってもらえるようになったんですよ。今でも本当に感謝しています。
——毎日通って挨拶をした努力が報われましたね。それにしても、なかなか厳しい業界なんですね。
山田さん:今はそうでもないんだけど、当時は厳しかったですね。とにかく会話をさせてもらうために、真冬でもサンダルを履いて市場に通っていたんです。発泡スチロールの箱を洗っているそばを通るとサンダル履きの足に水がかかるので、それを会話のきっかけにしていました(笑)
——そこまでして会話のきっかけをつくっていたとは(笑)
山田さん:知り合いにならないと、まともに魚を売ってもらえなかったんですよ。マグロの値段にしても、常連には1kg5,000円と言っていたのに私には20,000円と言ってきたりして……。仕入れができずに困っていたら声を掛けてくれた人がいて、それがたまたまマグロを扱っている会社の人だったんです。
——ほうほう。
山田さん:相談したらマグロを売ってくれたんですけど、一尾丸ごと買うとは想像していなかったみたいで驚いていました。すぐに使い切ったので、すぐにまたお願いしたら「もう使っちゃったんですか?」ってさらに驚いていましたね(笑)。それ以来、マグロはそちらの会社にお願いしています。仲買さんたちには、今までいろいろとお世話になってきたので、少しでも恩返しができたらと思っています。人付き合いを大切にするよう心掛けてきたことで、探している魚があるとすぐに提供してもらえるんです。
——おすすめメニューを見ると「マグロのカマトロ丼」とか「サメのバター焼き」とか、他ではあまり目にしないものがありますね。
山田さん:なるべく人がつくらないような料理を提供するようにしています。マグロの頭や中落ちを使った料理も、市場の人に相談されて私が最初にはじめたんです。
——そうだったんですね。それって、よっぽど魚の知識がなければ考えつきませんよね。
山田さん:いろいろな魚を試しながら食べてきましたからね。珍しいところではゲンギョやアンコウの刺身まで食べました。
——素材へのこだわりは充分わかりましたが、調理をする上でこだわっていることがあったら教えてください。
山田さん:注文を受けてから、ひとつひとつを丁寧に調理するようにしています。時間がかかってお待たせすることにはなるんですけど、ご注文いただいたお客様のために魚を切ったり、焼いたりしたいし、その方が喜んでもらえると思うんです。あと、父の代から、自分たちが食べるものと同じ魚をお客様に提供するように心掛けてきました。その魚が食べたくて、常連のお客様が店に来てくれていると思っています。
——常連のお客さんもたくさんいるんでしょうね。
山田さん:県外から毎週のように通ってくださるお客様もいます。本当にありがたいですね。コロナ禍では大変な思いをしましたが、頑張って営業を続けていることをお客様に伝えたくてインスタグラムも頑張っています(笑)
——県外のお客さんにとって、SNSで情報を知ることができるのはありがたいですね。
山田さん:以前は取材も受けないようにしていたんですよ。でもインターネットで間違った情報を載せられることもあったので、正しい情報をお伝えするためにインスタグラムをはじめたんです。それを見て足を運んでくれるお客様も増えました。でも、入りにくそうにウロウロして帰っていっちゃう方もいます(笑)。ぜひ気軽に立ち寄っていただきたいですね。
田舎茶屋ゆきちゃん
長岡市寺泊荒町7592-19
0258-75-2615
11:00-14:30(土日曜は15:00まで)
不定休