全国的に活躍するイラストレーター「神田亜美」の素敵な作品たち。
ものづくり
2020.03.05
書籍から日本酒のラベルまで、様々なシーンに合う神田さんのかわいいイラスト。
ゆるいタッチのイラストで、新潟だけではなく全国的に活躍しているイラストレーターが新潟市にいます。神田亜美さん。書籍やウェブ、TVCMのアニメーションや日本酒のラベルに至るまで様々な場面で神田さんのイラストが使われています。東京で活躍していた神田さんがなぜ新潟に帰ってきたのか、今までどんなイラストを描いてきたのか、いろいろとお話を聞きました。


神田 亜美 Ami Kanda
1983年新潟市西蒲区生まれ。東京の短大に通いながら「セツ・モードセミナー」で絵画を学ぶ。雑誌「イラストレーション」の「ザ・チョイス」入選を機に「こどもちゃれんじ」のイラストを手がける。2012年新潟に帰ってからも、木村カエラのオフィシャルグッズ、すき家のTVCM、「上善如水」のラベルやパッケージに関わるなど幅広く活動。気持ちがリセットされるので家事をするのが好き。5月に出産を控えているため、4月から少し仕事をお休みする予定。
イラスト専門誌の誌上コンペがきっかけで大仕事が?
——今日はよろしくお願いします。昔からイラストを描くことは好きだったんですか?
神田さん:そうですね。小さい頃から描いたり作ったりすることが好きで、チラシの裏に絵を描いたりして遊んでました。中学生や高校生の頃は絵を描くことから離れていたものの、でも将来、会社員にはならないんだろうな…って薄々思っていました。
——大人になって再び絵を描き始めるたのは?
神田さん:上京して短大に通っていたときに「セツ・モードセミナー」っていう絵画スクールに通い始めたんです。それまでちゃんと絵を学んだことがなかったので、基礎からしっかり教わりたかったんです。でも、そのスクールでは「絵の描き方」を教わるっていう感じじゃなくて、先生と一緒に水彩画やクロッキーを自由に描いたりしてました。それをきっかけに、またイラストを描くようになったんです。
——じゃあ短大卒業後はイラスト関係の会社に就職したんでしょうか?
神田さん:いえ。アルバイトをしながらイラストを描いてはコンペとかに応募してました。その中に「イラストレーション」っていうイラスト専門誌の「ザ・チョイス」っていう誌上コンペがあったんです。新人イラストレーターの登竜門みたいなイラストコンペで、審査員もそうそうたる先生方でした。それに入選することができたんです。
——おお、すごいですね!入選したことで変化はありましたか?
神田さん:審査員の中にグラフィックデザイナーの佐野研二郎さんがいて、私の作品を気に入ってくださったんです。それで、佐野さんが関わっていたベネッセコーポレーションの通信教育講座教材「こどもちゃれんじ」にある、おはなしページのイラストを頼まれたんです。とにかく初めてのことだらけで、どんな形で入稿したらいいのかすらわからない有様でしたね。

東京から新潟へUターン後も続く大活躍。
——新潟に帰って来たのには理由があるんですか?
神田さん:帰って来る数年前から都会暮らしに疲れていたこともあって、地方でゆったりと心に余裕を持った暮らしをしたくなったんです。2011年に起こった東日本大震災の影響もあったかもしれないですね。あの頃から「地方発信」ということが見直されていったじゃないですか。私も地方から発信できるんじゃないかって思うようになって、2012年の9月に新潟に帰って来たんです。
——新潟に帰ってからはどんな仕事をしてきたんですか?
神田さん:帰ってすぐくらいのタイミングで、東京にいる友達のイラストレーターからイラストの仕事を紹介されました。シンガーでファッションモデルもやっている木村カエラさんが出版する「COLOR」っていうエッセイ集に使うイラストの仕事でした。友達が木村カエラさん担当のグラフィックデザイナーと知り合いだったので、最初は友達にオファーがいったんですが、イラストのタッチがイメージに合わないことから私を勧めてくれたんです。
——すごい。他にはどんな仕事をやりましたか?
神田さん:牛丼チェーンすき家のTVCMで使ったアニメーション原画をやらせていただきました。これも知り合いのアートディレクターから推薦してもらったんですが、ほかに何人も候補者がいた中から、一番イメージに合うタッチということで選ばれたんです。アニメーションの原画なんてやったこともなかった上に、スケジュールも1ヶ月ないくらいでタイトだったので苦労しました。
——アニメーションの原画ってどんなふうに作るんですか?
神田さん:まず私がイラストを作って、それを基にアニメーターさんが動きをつけた絵を作るんです。それをまた私がトレースして動きのポーズに沿ったイラストを作ります。全部で100コマ近く作ったから大変でしたけど、アニメーターさんがとても優秀な方だったので、動きも可愛くて素晴らしい仕上がりになりました。
——東京の仕事が多いようですが、地元新潟の仕事もやってるんですか?
神田さん:いろいろやらせていただいてます。最近では湯沢町にある白瀧酒造の日本酒ラベルでしょうか。一人暮らしの女性をターゲットにした、自分の時間をリラックスして過ごしてほしいっていうテーマの「my time(マイタイム)」っていう日本酒なんです。女性をターゲットにしていることとか、リラックスシーンにマッチすることで、脱力したイメージのゆるいイラストが合うんじゃないかってことになって、私のところにオファーがきたようです。今までは本の仕事が多かったので、こういうプロダクト製品の仕事は新鮮で楽しかったですね。それと日本酒に使うイラストっていうことも面白かったです。おかげさまで白瀧酒造の社長にも気に入っていただいて、昨年の年末に発売された湯沢限定の「上善如水」のロゴやイラストも作らせてもらいました。


イラストは作者の知らないところで一人歩きをはじめる?
——神田さんのイラストにはコンセプトのようなものってあるんですか?
神田さん:コンセプトですか…うーん、特にないですね(笑)。気負わずに意識しないように描いてるっていう感じなので、それがコンセプトでしょうかね(笑)イラストの仕事ではクライアントとの打ち合わせでイメージを作ってます。ポートフォリオの中から何パターンかタッチを見て選んでいただくこともありますし、私からタッチの提案をさせていただくこともあります。
——イラストはタッチが大事ですから、イメージの打ち合わせは欠かせないですよね。仕事をしていて大変なことってありますか?
神田さん:大変ってことじゃないんですけど…。フリーランスでイラストレーターをやってますから、営業や経理も全部自分でやらなければならないんですよね。そんな中で見積を提出するときに、イラスト制作料の金額設定で悩むことは多いんです。イラスト制作料って時間、サイズ、難易度を考えて算出するんですけど、きっちり計算で出せるものじゃないので難しいところがありますね。
——決まった基準がないから難しいんでしょうね。ではイラストレーターをやっていて面白いのはどんなときですか?
神田さん:以前、ユニクロが主催する世界的なTシャツコンペ「UT GRAND PRIX08」のファイナリストに選ばれたことがあって、その作品がユニクロのTシャツとして商品化されたんです。あるとき、知り合いが私のイラストのTシャツを着ていて驚いたことがありました。着ていた相手も私のイラストだと知って驚いてましたね(笑)。そんな風にイラストが、作者も知らないところで一人歩きしているのが面白いなぁって思います。
——イラストの作者が前に出ることはあまりないですもんね。では今後どんなふうに作家として活動していきたいですか?
神田さん:私、今年の5月に出産予定なんです。子どもが生まれたら育児、家事、仕事をバランスよくやっていきたいですね。あと、出産を機に自分の描きたいものが変わっていったり影響があるのか、不安な反面、楽しみだったりもしています。4月から少しの間、仕事はお休みをいただきますが、復帰したらまた気軽にイラストの相談をいただきたいですね。

雑誌「イラストレーション」の誌上コンペをきっかけに、イラストレーターとして活躍を続けてきた神田さん。新潟に戻ってきてからもその活躍は衰えることを知りません。今年の5月にはお子さんが生まれる予定。今後どんなイラストを描いてくれるのか楽しみです。
神田亜美
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