新潟ユニゾンプラザの近くにある「中華飯店 金三(ちゅうかはんてん きんさん)」は、塩ラーメンとバリエーション豊富な中華料理を楽しむことができる人気のお店です。看板メニューの塩ラーメンに使われているのは、佐渡産の焼きあご。オーナーご夫婦が自ら漁に出て獲ってきたトビウオを丁寧に処理し、焼きアゴに仕上げているんだそうです。今回はオーナーの斉藤さんに、お店のこだわりなどいろいろとお話を聞いてきました。
中華飯店 金三
斉藤 政春 Masaharu Saito
1982年新潟市生まれ。夜間の定時制高校に通いながら、古町通3番町の「楼蘭飯店」でアルバイトとして働きはじめ、その後15年間調理の経験を積む。ラーメン店や餃子専門店などを経て、2019年に「中華飯店 金三」をオープン。
——斉藤さんが中華料理と出会ったのはいつ頃ですか?
斉藤さん:若いとき、夜間の定時制高校に通いながら、昼間はアルバイトをしていたんです。古町通3番町に今もある老舗の中華料理店「楼蘭飯店」で。最初は、中華料理に興味があるとか飲食の仕事をしたいとか、まったく思っていなかったんですけどね。なんとなくアルバイトをはじめてから、高校を卒業してからも働いていたんで、約15年間、楼蘭飯店さんのお世話になりました。
——高校生のときから15年間って長いですね。
斉藤さん:楼蘭飯店の皆さんには、家族のように接してもらいましたよ。最初の2年間は出前を担当していました。教えてもらうことには順番があって、2年経ったら鍋の扱い方を。それから具材の切り方、調理の仕方、いろいろなことを「楼蘭飯店」で教えてもらいました。
——こんなことを聞いては失礼かもしれませんが、ずっと同じお店で働いていると途中で嫌になりませんでしたか?
斉藤さん:まったく嫌にならなかったです。社長の教え方がよかったんだと思います。厳しい面もありましたけど、温かく支えてくれる部分もあって。アメとムチの使い方が上手な人だったんでしょうね(笑)。仕事中も一緒だし、店が終わってからは飲みに連れて行ってもらいました。社長のクルーザーに乗って、朝早くから釣りに行ったこともあったなぁ。
——なんだか年の離れた遊び仲間みたいですね。
斉藤さん:遊び仲間というより、家族同然の付き合いだったんですね。僕はいつの間にか社長の色に染まっていました(笑)。今の自分の「軸」みたいなものは、社長に教わったことにあるんですよ。
——自分のお店を持ちたい、と思ったきっかけはあるんですか?
斉藤さん:「楼蘭飯店」にいた最後の1年、僕が店の切り盛りをさせてもらっていたんです。というのも、僕にいろんなことを教えてくれた社長が亡くなってしまったんですよ。「自分の店を持ってみたいな」と思うようになったのは、社長が亡くなってからですね。お世話になった社長に「何か恩返ししなくちゃいけない」という気持ちがあったんです。
——「楼蘭飯店」を離れるときは、どんな思いでしたか?
斉藤さん:同じことをしていては進歩がないから「次のステップへ進まないといけない」と思っていました。「止まっていてはいけない」と。それで、ラーメン店の立ち上げメンバーに加わったり、餃子専門店や居酒屋で働いたりして。「楼蘭飯店」で得たことをベースに、自分がもっと知りたいと思えることを経験しました。
——ご自身のお店をはじめたのは?
斉藤さん:2019年ですね。40歳という節目が近づいた頃です。結婚して、一緒にお店を切り盛りできるパートナーもできたし、いよいよ自分の店を持とうと思いました。
——そのとき、どんなお店にしようと考えましたか?
斉藤さん:「お客さんの笑顔が見たい」という一心ですね。これまでたくさんのお客さんを見てきました。いろいろなお客さんがいたけど、「また来るよ」って笑顔でお店を出て行くお客さんの姿が一番好なんです。たった1杯のラーメンで、人が笑顔になるってすごいことですもんね。
——そのために心がけていることってありますか?
斉藤さん:背伸びをせずにいることでしょうか。店舗を増やしたり、店を大きくしたりして、自分の目が届かなくなるのが一番嫌なんです。奥さんと協力しながら、気長に今のお店を続けられれば十分だと思っています。
——看板メニューのラーメンについても教えてください。
斉藤さん:一番人気のメニューは、ベーシックな「佐渡産やきあご塩麺」です。他にも「極上のどくろだし塩麺」や「淡麗とりだし塩麺」「白い麻婆麺」があります。僕の店のラーメンは、全部塩味なんですよ。新潟には塩ラーメンのお店が少ないですよね。それだけ、味がボヤけやすくて作るのが難しいんです。だから、塩だけで勝負したくて。塩だけでも流行る店にしようって。
——塩ラーメンへのこだわりが強いんですね。
斉藤さん:理由はいくつかあります。修業中に塩ラーメンを覚えて、もっと美味しい塩ラーメン作りたいと思いました。それから、僕は魚介のラーメンが苦手なんだけど、あごだしのラーメンは好きだったんです。あごだしには、やっぱり塩味が一番合うんじゃないかと思って。
——お店に入ったときから気になっていたんですが、店内に飾られている魚は、もしかしてあごだしに使われているトビウオですか? かなり大きいような……。
斉藤さん:気になりましたか(笑)。そうです、本物のトビウオを飾っています。通常のトビウオの1.5倍くらいの大きさですね。大きく成長した、佐渡で「カクトビ」と呼ばれている年寄りのトビウオなんですよ。
——その「カクトビ」をダシに使っているんですか?
斉藤さん:あまり成長したトビウオだと、いいダシが出ないんです。だから「カクトビ」と普通のトビウオの2種類を使っています。
——ほお。
斉藤さん:1年に1回、海が時化の時期に佐渡に行って、僕と奥さん、奥さんのおじいちゃんの3人で漁に出てトビウオを獲ってくるんです。漁が終わったら、トビウオを捌いて、焼いて、乾燥させて、という作業も自分たちでするんですよ。深夜2時に起きて、終わるのは夕方という生活を1週間くらい。去年、はじめておじいちゃんと一緒に漁に出たら、びっくりするくらい過酷な仕事でした。こんな大変なことを、今まではひとりでしていたんだから、おじいちゃんには頭が上がりませんよね。本当にすごいです。
——一品料理も充実していますよね。
斉藤さん:妻も飲食業の経験者なので、一緒に「金三」の料理を作っているんです。「金三」の一品料理がたくさんあるのは、妻がいろいろ新メニューを作りたがるタイプだからなんです(笑)。餃子、焼売、麻婆豆腐なんて、それぞれ2種類ありますし。常連さんからも「いろいろメニューがありすぎて迷う」と言われます(笑)。「塊肉の黒酢酢豚」は、おつまみにもピッタリですし、注文される方が多いですね。あと、佐渡の蟹直売所「弥吉丸」さんから仕入れた蟹をどっさり使った「こぼれ蟹レタスチャーハン」も人気ですよ。僕は、ラムが好きなので「ラム焼売」がオススメです。
——これだけたくさんのメニューがあるお店を、奥さんと二人で切り盛りされているなんて大変では?
斉藤さん:それはもちろん大変ですけど、お客さんに喜んでもらいたいと思っているんだから、時間も手間も惜しむわけにいきませんよね。そういえば、餃子を包みながら、寝ていたことがありました。頭は寝ていたけど、手は動いていたみたいで、「わ〜寝ちゃった」と気がついたときには、餃子が全部できてました(笑)
——すごい! 身体が勝手に動いたんですね……。さて、最後に今後の意気込みなどを教えてください。
斉藤さん:先月から、1年半ぶりに夜営業を再開したんですよ。火〜木曜日はコース予約のみ、金曜日はいろいろな種類の紹興酒とおつまみが楽しめるバル形式。土曜日はラーメン、点心系などお好きなものを召し上がっていただけます。ずっと夜の営業を縮小していたので、大勢のお客さんの笑顔が見たいと思っています。
中華飯店 金三
新潟市中央区上所2-3-11
TEL: 025-311-0013