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昔ながらの食堂が和食メインにリニューアル。旧水原町の「ますや食堂」。

阿賀野市水原の商店街にある「ますや食堂」が、昨年リニューアルオープンしました。おじいさんの代からはじまり、ご両親が約50年営業した食堂を受け継いだのは、和食料理人として経験を積んだ渡辺さん。悩んだ末に家業を継いだ理由や新メニュー「二重カツ丼」についてなど、いろいろとお話を聞いてきました。

 

ますや食堂

渡辺 敏広 Toshihiro Watanabe

1976年阿賀野市生まれ。高校を卒業後、新潟市の料亭で経験を積み、「株式会社キタカタ」に20年間勤務。「越後茶屋」など和食部門を担当。2023年、代々続く家業「ますや食堂」をリニューアルオープン。趣味は筋トレと音楽。

 

100年続く商売を引き継ぐ、迷いと覚悟。

——渡辺さんのご実家が「ますや食堂」さんなんですか?

渡辺さん:そうなんです。創業100年くらいになるみたいですね。子どもの頃から「お前が跡継だ」って言われていました。正直、嫌でしたね(笑)。私で6代目か7代目だそうです。

 

——お継ぎになった理由はなんでしょう?

渡辺さん:若い頃、親に迷惑をかけましたし、長らく続いている家業だから「やっぱりこの先も店の名前を残したい」と思いまして。ただ「ますや食堂」を継ぐまでずっと新潟市で料理人をしていたので、地元に戻って商売をはじめるのには迷いがありました。水原の商店街は今は閉めているお店が多いですし、ちょっと寂しい地域なので。でもずっと会社員でいてもしょうがないですから、ここで一発リニューアルして水原に旋風を巻き起こしてやろうって意気込みでいます。

 

 

——以前はどんなお店だったんですか?

渡辺さん:私のひい爺ちゃんが割烹食堂をはじめて、両親の代は、昔ながらのレトロな食堂でした。両親が50年くらい営業していましたかね。

 

——水原の町に昔からある食堂だったんですね。

渡辺さん:そう、まさにそんな感じです。50年も60年も営業していたので、さすがに店はボロボロですし、そのまま代替わりしてもお客さまにお越しいただけないだろうと思って、場所は変えずに全面的に店舗を改装しました。厨房の位置も変えたので、だいぶ雰囲気が変わったと思います。1階は白と黒、2階は座敷をテーブルに変えて銀と金をイメージカラーにしています。

 

名物「カツ丼」にひと工夫。他では味わえない「二重カツ丼」。

——渡辺さんは、ずっと和食の料理人さんだったんですよね。

渡辺さん:高校を卒業しても職が決まらず「どうしようかな」って思っていたら、親に面接に連れて行かれまして。それが新潟市の「生粋」さんという料亭でした。4年くらい修業させてもらって、北区の「奧次郎」さんにも少しの間お世話になりました。それから「株式会社キタカタ」さんで20年ほど勤めました。和食の職人でしたから、「越後茶屋」に携わらせていただくことが多かったですね。

 

——やっぱり「ますや食堂」さんでも和食のご経験を生かされているんでしょうか?

渡辺さん:ここをリニューアルする前に、周辺調査といいますか、皆さんに「ますや食堂」のどんなところを好きでいてもらっているのか調べたんです。やっぱり昔ながらの「ますやの味」が好きなお客さまがいらっしゃるので、ラーメンとカツ丼は残そうという結論になりました。天ぷらが得意なので、天丼だとかも新しくご用意しています。プラス、夜は和食を楽しんでいただけるメニューにしようと思ったんです。旬の和食が味わえる居酒屋みたいな感じですね。

 

——メニューにある「二重カツ丼」というのは?

渡辺さん:リニューアルするにあたって、メインの新商品を作りたいなと思っていて。それで、うちの定番である卵でとじるカツ丼に、新潟市名物のタレカツを入れたのが「二重カツ丼」です。ご飯の上にタレカツ風の煮豚をドンと置いて、そこにさらにご飯、最後に卵でとじたカツを乗せたボリューム満点のメニューです。

 

 

——夜営業はどんなふうに変わったんでしょう?

渡辺さん:一品料理、サラダ、お刺身など、お酒に合う和食メニューをご用意しています。昼と夜はメニューが違うので「昼ますや」「夜ますや」って、区別しています。

 

——評判はどうですか?

渡辺さん:おかげさまで評判は上々です。この前、「二重カツ丼」目当てにテレビの取材にも来ていただきました。でも代替わりして、どうしたって味が変わりますからね。「昔のラーメンがよかった」と言われるときもあるんです。常連のお客さまにとっては「まったく別のお店になっちゃった」って印象かもしれません。同じ材料で同じ作り方をしても「同じ味」っていうのはなかなか難しいものですね。カツ丼のタレも以前の感じにはしていても「やっぱり違う」って言われちゃいます。

 

——常連さんにとっては「変わらない味」が大事なんですね。

渡辺さん:昔から来てくださる方は「両親のお客さま」なので、やっぱり大切ですよね。新潟市みたいに一見さんが大勢来てくれればいいんですけど、ここは田舎ですから、馴染みのお客さまを大切にしないといけないと思っています。

 

新店は明るいニュース。阿賀野市がもっと盛り上がれば最高!

——ご両親は今も現役ですか?

渡辺さん:私がメインで、両親にもサポートしてもらっています。幼い頃に家の手伝いをしてはいましたけど、本格的に一緒に働くのははじめてですから「こんなにやりにくいものか」と思いました(笑)。両親には昔ながらのやり方がありますからね。それを「今はこうするんだよ」とは言えないところがあって。

 

——でもご両親は、渡辺さんが後を継いでくれて頼もしく思われたでしょうね。

渡辺さん:そう思ってもらえていたら嬉しいですよね。「ますや食堂」がしっかり存続する。それを叶えられたことは大きいと思っています。「水原で勝負できるのかな」ってすごく悩みましたけど、皆さんの支えがあって営業させてもらっていると感じています。

 

 

——リニューアルされて、お客さんの層は変わりました?

渡辺さん:遠方からいらっしゃる方も増えてきたので駐車場を新しく用意しました。水原は観光する場所もありますし、新潟市からのアクセスもいいのでね。近くに村杉温泉もあるし、「やすだ瓦ロード」や「ヤスダヨーグルト」さんにお越しの方もいらっしゃいます。阿賀野市全体で盛り上がるという意味では、昔ながらの食堂ももちろんいいんですけど、新しく水原にお店ができたっていうのが明るいニュースになったらいいなと思いますね。

 

——そう思います。力強いお言葉を聞けました。

渡辺さん:水原の商店街の皆さんからは「活気づいてよかった」「はじめてくれてありがとう」って応援してもらっています。

 

——それを踏まえて、ご自身のお気持ちはいかがですか?

渡辺さん:しっかり、一生懸命やらないといけないなって気が引き締まりますよね。相乗効果でこの商店街がもっと活気づいてくれるといいですよね。

 

 

 

ますや食堂

阿賀野市中央町1-1-35

tel/ 0250-62-2019

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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