新潟市の西堀通に「PULP FICTION(パルプフィクション)」という聞き覚えのある名前のレストランバーがあります。外観もお洒落でかっこよく、あの映画を意識していることは間違いない……とずっと気になっていたお店でした。カウンターでシェイカーを振る笑顔の男性が、オーナーの松尾さん。今回は松尾さんに、お酒や料理、接客に至るまで、お店のこだわりを聞いてきました。
PULP FICTION
松尾 飛鳥 Asuka Matsuo
1994年新潟市中央区生まれ。高校卒業後、新潟市内の一流バーでバーテンダーとして修行を積む。2019年から「PULP FUCTION」で働き始め、現在はオーナーとして経営している。趣味はロードバイク、登山、スノボ、キャンプ。アウトドアで過ごすことが多い。
——「飛鳥」ってかっこいい名前ですね。
松尾さん:父親が「チャゲ&飛鳥」の大ファンだったんです。
——おお、そうだったんですね(笑)。松尾さんはいつからバーテンダーをしているんですか?
松尾さん:高校を出てすぐバーテンダーとして働きました。もともとファッションに興味があって、トラッドなファッションのバーテンダーに憧れていたんです。父の知り合いにバーテンダーがいて、その方から新潟で一流のバーを紹介していただいたので、そのお店でバーテンダーとしての修行をしてきました。
——バーテンダーの修行っていうのは、どういうものだったんですか?
松尾さん:フォーマルな店だったので接客については厳しく教えられましたね。お酒の種類もたくさんあって覚えることが多かったので、高校生のときより勉強しました(笑)。バーテンダーの大会に出場するために練習にも励みました。
——練習って、どんな練習をするんですか? ……振る?
松尾さん:シェイカーの振り方は毎日練習していました。姿見鏡の前で服装チェックをしてから、鏡に向かってお米を入れたシェイカーを振るんです。5杯分のシェイカーに1kgのお米を入れて練習していました。
——スポ根物みたいな特訓をしていたんですね。シェイクって難しいんですか?
松尾さん:そうですね。大事なのは急速に冷やすことと、マイクロバブルの細かい泡を入れてあげることなんです。それによって口当たりが良くて飲みやすいお酒になります。シェイクが長過ぎると水ぽくなってしまうし、短過ぎると氷が溶けずに泡も立ちませんから、迅速丁寧で正確に振ることが重要なんですよ。
——そちらのバーではどのくらい修行されたんですか?
松尾さん:6年間修行させていただきました。その後、前オーナーから誘っていただいて「PULP FICTION」で働くことになったんです。「PULP FICTION」っていうのは1994年に公開されたクェンティン・タランティーノ監督の映画からつけた店名なんですけど、公開された年が僕の生まれた年と同じだったから縁を感じましたね(笑)
——「PULP FICTION」で力を入れているお酒って何ですか?
松尾さん:ジントニックですね。バーの顔ともいえるお酒で、ジントニックを飲めばそのバーの考え方がわかるんです。修行してきたバーのジントニックに少しでも迫れるものをとずっと考えてきて、数種類のスパイスを加えて作ったオリジナルのジンを使うことで、自分なりのジントニックを生み出すことができました。
——ジントニックって寿司職人でいうコハダみたいなお酒なんですね。では料理のおすすめも教えてください。
松尾さん:肉料理に力を入れています。中でもビーフシチューはスタッフが見極めたいい牛肉を使って、オリジナルソースでじっくり煮込んで作っていますので柔らかくて美味しいですよ。最近はピザにも力を入れています。種類が多くて大変なんですけど、すべて手作りしているんです。
——それじゃあ料理に対してのこだわりは?
松尾さん:「PULP FICTION」という名前の店ですから、アメリカンな料理をメインに提供していますけど、受け入れてもらいやすいように日本人の口に合うようアレンジしています。あと、できるだけ手作りするようにこだわっていますね。メニューはスタッフみんなで意見を出し合って作っています。
——お店をやっていて大変なことってありますか?
松尾さん:うーん……これといって大変なことってないんですよね。問題はちょくちょく起こりますけど、常に相談できる仲間たちがそばにいますから、どうにもならないっていうことはないのでとても助かっています。強いて挙げるとすれば新型コロナでしょうか。でもお店を応援してくれるお客様も多いので、とても励みになっています。そんなお客様たちのためにも、いつも美味しいものを提供できるよう努力していきたいですね。
——タランティーノの映画のタイトルをつけるだけあって、お店の外観とかもカッコいいですよね。
松尾さん:この店に来ていただくことで、お客様の人生に少しでも何かのエッセンスを与えられたらいいなって思っています。そのためには日常を忘れられるような非日常空間でありたいんですよ。スタッフも楽しんで仕事をすることで、そういう雰囲気がお客様にも伝わると思うんです。常に満足してもらうために自分たちには何ができるのか考えています。
——ちなみにお店にはどんなお客さんが来られるんですか?
松尾さん:いろんな人が来てくれますね。特別な日に、例えば大切な方の命日に来られる方もいたりしますし。その日を自分が覚えていたときには、カクテルをもうひとつお作りしてそっと隣の席に置かせていただいたりもします。あと結婚の報告に来てくださるお客様も多いですね。
——そういうお話を聞くと、一杯のお酒を飲むことにもいろんな意味があるんだなって改めて気づかされます。
松尾さん:お酒って人生の節目節目にあることも多いですからね。高い地位にいるお客様が、初心を忘れないように、若い頃飲んでいたお酒を飲んでいかれることもあります。そういうのを見ると、お酒を飲むっていうのは思い出を飲むことでもあるんだなって思ったりしますね。だから常にお客様の心に寄り添っていけたらいいなと思っています。
——なるほど。心に染みるお話ですね。今後はどんなふうに営業していこうと思っていますか?
松尾さん:これからも変わらずに、美味しいものや居心地のいい空間を提供できるよう精進していきたいです。4月22日からはランチ営業も始めさせていただきますので、ぜひお近くの方はお立ち寄りください。あ、宣伝しちゃってすみません(笑)
高校を出てすぐにバーテンダーとして経験を積んできた松尾さんから、お酒や料理に対するこだわりや、接客に対する考えをお聞きしました。皆さんもちょっとお酒を飲みたい気持ちになったら、「PULP FICTION」を訪れてみてください。美味しい肉料理やお酒はもちろん、松尾さんの笑顔で心も満たされると思いますよ。
PULP FICTION
新潟県新潟市中央区西堀通7-1545-2 蔵ビル1F
025-378-0677
17:00-2:00(金土曜3:00まで/日曜24:00まで)
火曜休